男女共学のバイビー108
ヒロの意見に対する反論はと、若頭が加奈を促した。
銘々正午過ぎに眼を覚まし、ヒロ、若頭、加奈と各自用を済ませ、軽食を摂ったり、シャワーを浴びたりしたのだが、雅はシャワーを浴びる為に設備の整ったホテルに松田と共に戻り、別荘には三人が残る形となり、再度討論会形式の会話が再開された。
コンタクトレンズを外し眼鏡を掛け、ラフなジャージ姿に着替えた若頭が口火を切った。
「雅会長と兄貴はいないが、話を進めるとしよう。まず話を整理すると一番の重要課題は我々に巣くった自殺願望を如何に消去するかが肝心となるが、ヒロ、お前に改めて尋ねる。お前は確信犯ではないのだな?」
やはりジャージ姿のヒロが誓いを立てるように顔の横に挙手してから答える。
「天地神明に誓って自分はそんな不届きな真似はしていません。もし自分がそのような真似をしているならば、兄貴達が寝ている間に自分は完全犯罪、計画成功を喜びながら、自殺しているではありませんか。自分はあくまでも加奈さんが自殺した後を追いたくて、今もここにこうしているのですから、それにて身の潔白は証明されている筈です。違いますか、兄貴?」
加奈が洗いたての髪の毛を手櫛ですくような動作をしてから言った。
「ヒロさんは自分の寂しさに託けて、自分の知り合いが心中してくれれば、誰であろうと良いのですよ。だからこそ、この四人の中で誰か一人が死ぬのを確認してから自殺するつもりであり、身の潔白を証明する為に生き延びているわけではないと私は思います」
ヒロが若頭に許しを乞うように言う。
「兄貴、自分が確信犯で無差別殺人、大量虐殺など犯したとしても何の得があるのですか。損得勘定で量ってみても、何の得も無いではありませんか。違いますか、兄貴?」
若頭が覚めた言い回しで加奈を促す。
「それに対する反論は?」
加奈が指を二本立てて言った。
「二点、あります」
頭が頷き再度促す。
「言ってみてくれ」




