男女共学のバイビー106
加奈さん安っぽい推理小説の読みすぎですよと、ヒロは言った。
ヒロが加奈の言葉を嘲笑い言った。
「加奈さん、安っぽい推理小説の読みすぎですよ。自分はあくまでも加奈さんと心中したい一心でこの集団自殺の入口を開いたのです。だからこそ、自分は加奈さんを一緒に死んでくれと何度も掻き口説いたじゃありませんか?」
加奈がかぶりを振り拒む。
「いえ、私はずっと拒絶していたわ。それもあなたの時間を稼ぐ意味での計算だったのよ。そして例えばこの場でこの五人が死ななくても、治療法が無い自殺願望は音もなく一人づつ殺して行くから、君の集団自殺計画は見事に成功したのよ」
ヒロがうっとりとするような表情を作り、加奈に向けて一人拍手を贈った。
「素晴らしい推理ですね。それじゃ、自分は未必の故意ではなく、計算通りに無差別殺人、大量虐殺のパンドラの箱を開いたと言うのですか。お見事ですね。でも自分が知っているであろうと邪推する自殺願望の治療法を引っくるめて、全て自分の計算通りに事が運んだと言う、確たる証拠を開示して見て下さい。加奈さん、お願いします?」
加奈が不服そうに表情を曇らせ言った。
「サイトとか開いても多分この事項が出ている項目は極めて断片的で、繋ぎ合わせてもパズルの集団自殺は構成惹起しないと思うから、確たる物証は開示出来ません」
加奈が一呼吸置いて瞳を左右に揺らすように動かし続ける。
「ただ私はガイドラインを固めるべく傍証と言うか心証を言っているのです」
ヒロが余裕の笑みを頬に浮かべてから言った。
「それだったら自分の勝ちですね。自分はあくまでも加奈さんと心中したい一心で手続きを踏んだのですから、それは厳然たる事実ですから、疑う余地なんか無いではありませんか、違いますか?」




