男女共学のバイビー104
本当ですと、ヒロが言った。
会話に改めて加奈が加わる。
「私はヒロさんの思い通りにはさせません。私はこの自殺願望を治し元通りやり直ししたいのです。ここにはヒロさんの身内のような人ばかり集まり、まあそれは仕方ない事なのかもしれませんが、話しをさっきから聞いていると、ヒロさんのこれからのやり直す身の振り方ばかりを論じ合っていて、肝心の集団自殺の伝染病増殖を阻止する話し、私達の病気を如何に治すかの話からはどんどん遠ざかっているわけです。最前お兄さんも言っていましたが、ヒロさんは手続きを踏み、私達に病気を罹患させた事の責任はどうなるのかの、論じ合いが主客転倒していると私は思うのですが、違いますか?」
若頭がしきりに頷き言った。
「そうだな、ヒロ。お前は集団自殺への入口手続きしか知らないと言っていたが、それは本当なのか?」
ヒロが相槌を打ち答える。
「本当です。これは加奈さんにも再三言った事なのですが、自分は入口の手続きしか知りません。例えばパズルの組み換えが混乱を来たし、集団自殺のコマが無差別殺人や大量虐殺に結び付いていても、自分にその自殺願望を変える知識は無いのですから、知らないものは知らないと言うしかありません。すいません」
若頭が念を押す。
「もしお前が知っていて、知らぬ振りをしていたら、ここにいる全員が自殺する事になるのだぞ。それは分かっているのか?」
ヒロが明瞭に答える。
「分かっています。でも知らない事は知らないのです。すいません」
若頭がヒロを睨み据え言った。
「本当だな?」
ヒロが恭しく頷き答えた。
「本当です」




