男女共学のバイビー100
俺が借金をチャラにしてやる。そしてホストも辞め、自立してやり直せば良いではないかと、若頭はヒロに言った。
若頭がヒロに尋ねる。
「ヒロ、お前に取っての寂しさとは何だ?」
ヒロが自分に注がれている非難がましい視線を跳ね退けるように答える。
「兄貴、自分に取っては生きるその事が寂しさですよね」
若頭が慎重に言葉を選びつつ言った。
「生きるのが辛いか?」
ヒロが頷き「はい」と言ったのを見て若頭が再度尋ねる。
「元の鞘に戻って生きるのが、お前に取っては寂しくて辛くて仕方ないと言う事か?」
苦渋を湛えてヒロが答える。
「そうですね。監視されていてプライベートなんか一切無いし。仕事は金と嘘と虚飾と裏切り、人間の醜さだけに触れなくてはならず心荒み、真の愛なんか無いし、寂しいだけですよね、兄貴」
瞼を閉じ、何かを思い付いたように眼を見開き若頭が言う。
「それじゃ、違う環境ならば、寂しさとか虚しさを感じないのか?」
ヒロが訝る。
「違う環境と言うのはどんな環境ですか?」
若頭が即答する。
「監視もなく、借金もチャラにしたホストでは無い普通の生活だ?」
ヒロが考える間を置きおもむろに答える。
「それが出来たら理想ですが、現実問題そんなのは無理じゃありませんか、兄貴?」
若頭が穏やかな口調で言う。
「俺が借金はチャラにしてやる。そしてホストを辞めて自立して、やり直しすればいいじゃないか」




