プロローグ
とあるの山奥にある小さな村。
そこにはある神社が建っていた。
「狗神神社」
この村に古くからある神社である。数年前までは毎年村人全員で行事や祭典を行っていたりと、村では馴染み深い場所であった。
少し前までは神社を管理する神主がいたが、高齢で身寄りや家族もいなかったために年々弱ってゆき、やがて亡くなった。それから神主が亡くなってからは神社を継ぐ者も、神社に集まる者も居なくなり、やがて廃れていった。
神社の境内の前にある、賽銭箱。もう数年も放置されていたためか、中に土やゴミが溜まっており、箱の周りには草が生えていた。
神社の中、神社の神を祀る祭壇。そこにはかつて祀られていたこの神社の神がいた。
「狗神様」
この地を守っていた神の名である。かつてはこの村全体が信仰していた神様だったが、時がたつにつれ信仰者が減ってゆき、最後の信仰者であった神主が亡くなった時に消えてしまった。今や何も宿る事のない寂しい祭壇である。
そして、境内と賽銭箱の間に参拝者を見下ろすように佇む像。この神社の狛犬の像である。この像には本物の狛犬が宿っていた。かつてこの神社の神、狗神に使えていた狛犬である。昔は狗神の信仰の力で自身の力も強かったが今はその力も無く、かろうじて像に宿るだけになってしまった。
?「ああ…もうすぐ私は消えてしまうのだろうか…。狗神様…。」
誰にも聞こえぬ最後の言葉を残し、一匹の狛犬が幻想に消えた。




