就職しよう!
「せぁっ!!」
「うぉりゃ!」
「ほぁたぁ〜!」
森の中に3人の声が響く。
ソロ型である俺、アタッカーであるアンは当然だとしても、マオアーも壁のくせに攻撃は上手かった。さすがに与えるダメージは俺たちに及ばないが、モンスターの攻撃を盾でいなしつつ確実にダメージを与えていく。
「アタタタタタタタタター!」
その隣では奇声を発しながら、アンがモンスターを吹き飛ばしている。
お前どこの世紀末覇者だよ。
ちなみに奇声のスピード感に反して攻撃のペースは遅く、手数より一撃のダメージ、という感じだ。その奇声、むしろやりにくくないか?
一方、俺はアンとは反対で、手数で勝負するタイプ。
猪を一撃のアンに対し、俺は二撃かかるものの、たまに一撃で屠れるし、手数が多いので殲滅速度は俺の方が早い。暗殺者の如く忍び寄り攻撃。反撃をもらう前に二撃目を与えて死にいたらしめる。その姿は暗殺者だ。
猪をあの世へと送り、俺は呟く。
「…お前はもう死んでいる。」
世紀末覇者は俺か。
しばらく討伐を続けると、妙な事に気付いた。
ときたま、マオアーが叫んでるのだ。「はあっ!」や「うぉりゃ!」のような掛け声ではない何かを。
「我が強力の一撃によりて敵を粉砕せよ、ハードヒット!」
ドゴンッ!といつもより派手な音がして、猪に攻撃が当たる。
今のはもしかしてスキルなのだろうか。俺は今まで普通の攻撃しかしていない。ここがネトゲっぽい世界ならスキルの一つくらい使えても良いのだ。ベサルンの魔法を見たときに、今度マオアーに聞こうと思っていたのを忘れていた。
「マオアーさん、さっき叫んでいた『ナンチャラカンチャラ、ハードヒットォォオ!!』ってのは何ですか?」
休憩中、お昼を食べながら聞いてみた。
「え?スキルを知らないのか?」
「いやぁ、その辺り疎くて…」
苦笑いしてると、横からアンがしゃしゃり出てきた。
「プッ…あんたスキルも知らないの?ワロスワロス。」
うるせーぞ貧乳まな板。
「転職すれば、モーブから取得できるのよ。」
ベサルンが教えてくれる。が、
「転職?」
そんなもの知らない。どうするのだろう。ハロワにでも行くのか?
「あー、ひょっとして、レオンまだ無職なのか!じゃあ今から転職に行くか?」
マオアーが提案してくれた。これに乗らない手はない。
「じゃあ転職しに行こうぜ!」
「どこへ?」
「ギルドよ。」
昼食を終えた俺たちは、ギルドへ戻る事になった。
ギルドに戻った俺たちは、受付へ行く。今日の受付嬢は垂れた犬耳の美人さんだった。かわいい。
「どのようなご用件で?」
「転職に来たんですけれど…」
要件を説明すると、別室に通された。ちなみに本人しか入れないらしい。
「頑張れよ!」
などと声をかけてくるマオアー達と別れ、部屋に入った。
部屋の大きさは3畳ほどというところか。めっちゃ狭い。中央にある椅子に座るように指示され、座った俺の頭に何か乗せられた。コードのような物がたくさんついた、ヘルメットのようなものだ。古びた帽子ではないのか。
「では、モーブをお貸しください。」
受付嬢に言われ、モーブを渡す。
彼女がそれを壁に空いていた穴にセットすると、壁の一部が画面になっていたようで光りだした。
「では、しばらくすると就ける素質のある職業が出てきますので、就きたい職業を2回タップして下さい。」
そう言って受付嬢はドアを閉めた。
どうでもいいが、モーブといい、前にギルド受付にあったパソコンのような物といい、今回の機械類といい、この世界の技術水準はよく分からない。こいつら以外は中世レベルの水準なんだけどなぁ。
ぼんやりとそんな事を考えていると、画面に職業が映しだされていた。
戦士、剣士、弓士、闘士、占い師、魔術師、聖術師、奇術師…。
ずらずらと、十数個の職業があった。その最後に、
「侍、忍者だと?」
正直、心惹かれる。俺が中二病だからだけではなく、ゲームにおける侍や忍者は、SAMURAIやNINJAの事が多いのだ。要するに、欧米人の認識における侍や忍者で、スーパー戦士なのである。
俺のスタイル的には忍者なのだろうが、侍のロマンも捨てがたい。
少し悩んだ後、俺は侍を選択した。
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。