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怪談集

怪談:ドッペルゲンガー

作者: 下降現状

 ドッペルゲンガーというものを知っているだろうか。

 自分にそっくりなもう一人の自分の事であり、それに出会うと死んでしまうと言われている。

 パラレルワールドの自分だとか、身体から抜け出してきた幽体の自分であるとか、いろんな話があるが、真相は誰も知らない。

 そんなドッペルゲンガーが、私にも居るらしい。居るらしいというのは、私はそれを見ていないからだ。見たら死んでしまうのだから、これは当たり前の話だけれども。

 私がそいつの存在に気付いたのは、凡そ半年ほど前の事だった。

 私はその日、友人と会う約束をしていた。しかし、どうにも体調が悪い。風邪でひいたのか、熱があるし、頭がクラクラする。友人に断りの電話をかけようとして、布団にばたりと倒れこんでしまった。

 目が覚めると翌朝だった。これは友人に悪い事をしたと思い、直ぐ様掛け布団を剥がして、友人に電話をかけた。

 電話に出た友人は、私の謝罪の意味が分からないようだった。

「なんで謝ってるの? あんた、昨日普通に時間通りに来たじゃない?」

 私はそんな筈はないと言ったが、友人は取り合わなかった。終いには――

「昨日はまるで別人みたいに明るかったのに、どうしたの?」

 等と心配される始末。しかし、これもまたおかしい。私は生来根暗な性分である。好いてそういう人格という訳ではないが、矯正するようなものでもないと思っている。そんな私が明るかったと友人に言われるのは、余程のことだ。

 それから私は、友人や家族から見に覚えのない目撃証言を多数受けるようになった。何故そんな話をよく振られるのかというと、私のドッペルゲンガーは、妙に明るくて暴力的だからだ。トラブルを起こせば連絡も来るし、様子が普段と余りにも違えば家族や友人は不審に思ってそのことを話題にする。

 ドッペルゲンガーの目撃証言は段々と増えていき、私はそれが怖くなってきた。ドッペルゲンガーの目撃が増えているということは、それに蜂合わせる確率も上がっているという事だからだ。私は引き篭もりがちになった。いや、違う。一人暮らしをしていた部屋に、完全に引き篭もるようになったのだ。

 引き篭もるようになったのに、友人は私に電話をかけて会う約束をする。断って、実際その日も家から出ないで一日布団で寝ていても、友人は私としっかり会っているらしい。家から出ていないのに、コンビニで払うようにしている公共料金はちゃんと支払われている。

 私は今度こそ恐ろしくなり、家族に相談をした。相談した結果として、私は別の部屋に移る事になった。

 この部屋に移ってから、私は大分気が楽になった。両親も、相談に来てくれる人も、私とドッペルゲンガーが会うことはないし、ドッペルゲンガーの事を気にすることは無いと言ってくれている。実際そうなのだろう。

 つい先日、私は引き篭もりを止めて、外に出ることにした。

 外に出る直前、相談に来てくれた人が私に言った。

「退院おめでとう」

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