桃塚星司視点/恋人if/夏祭り/「わたあめ」
やっと星くんとの恋人ifを書き上げました!
本当は新年のネタを書くはずだったのですがね。
まぁ夏祭りでいいんじゃないですか!←
本編では恋ちゃんが漆くんにラブーなんで、ちょっと楽しめないかもしれませんね。
私も漆くんの顔が浮かんできてしまいました←
漆くんを一時忘れて(酷い)
お楽しみください!
設定は、星くんと恋人同士。
恋ちゃんは二年生!
2013年 08月14日(水) 21時18分
実家の夏祭りの話をしたら、恋ちゃんは行きたいと漏らした。だから僕は行こうと誘った。
夏休みだもん。
恋ちゃんと少しでもいたい。
もう新年に両親達に紹介は済ませてあるから、快く出迎えられた。
恋ちゃんは忙しい新年の神社の仕事まで手伝ってくれた。巫女さん姿の恋ちゃん、本当に可愛かったな。
浴衣姿も本当に可愛い。
母に着付けしてもらった恋ちゃんは、紺色の浴衣を着た。揚羽蝶が描かれていて、裾はグラデーションがある。
恋ちゃんの黒い髪は、結ってあって母が浴衣を着るときにつけていた髪飾りがつけられていた。
母が恋ちゃんを受け入れている証に、胸がじーんとする。
やっぱり恋ちゃんは和服が似合う。
桃色寄りの口紅を着けた恋ちゃんは可憐で凛々しい。
ついつい見惚れた。
「星くんは甚平なんですね。似合ってます」
「あ、ありがとう! 恋ちゃんもとっても可愛いよ!」
「いつもよりですか?」
「いつもより!」
「ふーん、いつもの私は劣っていると?」
「え!? ちがっ」
「冗談ですよ」
恋ちゃんが先に僕の甚平を褒めてきたから、慌てて褒め返す。
相変わらず恋ちゃんの冗談に振り回されるけど、最近はこの手が多い。
「私のこと可愛いですか?」という質問が多い。
本当に"可愛い"の一言では足りないほど可愛いから、僕も返答に困っちゃう。
僕はどんな恋ちゃんでもいいんだ。僕のために可愛くしてくれると、嬉しいけど。
夏祭りは賑わってて人込みがすごかった。恋ちゃんとはぐれないように手を握り、ピッタリと寄り添って屋台巡りをした。
「わたあめ」
「ん?」
「わたあめ、一緒に食べましょ」
すっかり日が暮れて夜になった頃。花火があるからそれまでなにかを食べようって話になったら、恋ちゃんがわたあめを求めた。
一緒に食べる、はちょっと嬉しい。
「星くんとおんなじ髪色ですね」
人込みから外れた路地で向き合って購入したわたあめを食べる。
一摘まみした恋ちゃんは言う。
一瞬わからなかったけれど、僕の髪色を差していることに気付く。
普段はベージュだけど、妖狐の姿は桃色だ。
僕が持つのは、桃色を帯びたわたあめ。
「時々、食べたくなります」
「……へ、返答に困っちゃうなぁ」
「冗談ですよ?」
どきまぎしてしまう。
恋ちゃんがクスリと笑うと更にドキドキしてしまう。
その時背中に誰かがぶつかってきた。慌てた様子で走り去った人は、僕に謝りもしなかった。もう。
「わ!? 恋ちゃんごめん!」
「…………」
前に顔を戻したら、恋ちゃんの顔にわたあめを押し付けていた。押されたせいだ。
鼻の下から顎までべったりついてしまったせいで、恋ちゃんは顔を歪ませてる。
慌てて拭うけど恋ちゃんは嫌がった。僕の手もべたべただ。
「あ、あれ、ハンカチない。ごめんね、恋ちゃん」
べたべたしたそれを恋ちゃんの肌を傷付けないように拭う。公園で洗ってから恋ちゃんのポーチからハンカチを出して綺麗にしなきゃ。
ある程度終えたと思ったのに、恋ちゃんはまだと言った。
「唇」
「あ、う、うん」
「……」
「……」
鼻と顎は拭ったけれど、唇がまだ。僕は指で拭おうとしたけれど、恋ちゃんは拒むように僕の手首を握る。
つまりは手以外で拭ってほしいってこと。
じっと黒い瞳で見上げてくる恋ちゃんから、こういう要求は初めてだった。
ドキドキしながら、顔を近付ける。
恋ちゃんは長い睫毛を揺らして瞼を閉じた。僕も目を閉じる。
ドカーン!
空に破裂音が響いて震え上がる。花火だ。花火が始まってしまった。
「始まっちゃいましたね」
「そう……だね」
恋ちゃんはわたあめを摘まんで食べながら、打ち上げられる花火を眺める。
この位置からでもよく見えたから、僕も立ち尽くして眺めた。
花火が終わってからにしようか。