●黒巣漆視点●誕生日if●6月6日誕生日!
もしも、恋ちゃんが有言実行をして
6月6日に漆くんに手作りプリンを渡していたら。
誕生日ifです。
六月六日は、俺の誕生日。
夜は先輩達が祝ってくれるらしいから、午前は勉強をした。息抜きで中庭のベンチに座って背伸びをする。
雨が降りそうな空だ。
誕生日なのに、いいことなさそうに感じる。
ま、誕生日なんて、別に特別なもんじゃねーし、期待なんてしてないけど。
「はい、誕生日おめでとう」
曇った空を背伸びしながら眺めていたら――――そこに彼女が来た。
白いフリルのカーディガンとワンピース姿の宮崎音恋は、プリンを差し出してくる。
本当に――――…俺の誕生日プレゼントに、プリンを作ったらしい。
「あー……うん」
俺はそれしか言えなかった。あまりにも素っ気ないけど、他にない。
宮崎はそれを気にした様子もなく、ベンチに座って俺にプリンを手渡した。
「もし気に入ったら、まだあるから言ってね」
「……うん」
透明のカップの中にある手作りプリンを見る。透明のスプーンまで持ってきてくれた。
これは今、食べて感想を言うべきだよな。休憩してる俺を見付けてわざわざ持ってきてくれたんだろうし。
でも手にした手作りプリンを見て、俺は戸惑っていた。
なんだか、こう、食べるのがもったいない。
「……」
宮崎音恋が神様のお気に入りで、乙女ゲームの攻略対象者と恋愛して幸せになることが決まっている。
それを知らされた時、俺は――…諦めようと決めた。
宮崎音恋を好きになることは、初めから決まっていたことだと知り、反発したくなった。この気持ちを、否定したくなったんだ。
どんどんと攻略対象者が彼女に惹かれ始めて、中学から密かに競っていた試験の順位も差が開きすぎた。
でも。それでも。
苦しいくらい――――…俺が想い続けていた宮崎のままだった。
「黒巣くん、食べないの?」
「あ……えっと」
優しい声が耳に染みる。
想い続けていた宮崎が、今はこんなにも近い。すぐ隣にいて、俺にプレゼントをくれた。
初めて――――好きな子から貰った誕生日プレゼント。
その事実が、嬉しさとして胸の奥底で広がっていく。
涙が溢れて、手に落ちてきた。
「……黒巣くん、泣いてるの?」
情けないことに見られた。宮崎が、俺を見てる。
すぐ隣で。俺をずっと見ている。
宮崎は俺にハンカチを差し出してきた。
「泣いてないから」と俺は突っぱねて、そっぽを向いてプリンを食べる。
……うわ、美味い。
余計に涙が溢れてきた。
「……ありがと……宮崎」
俺はそう言うのが精一杯だった。
どうしようもなく好きな子から、プレゼントを貰った。
特別な誕生日。
もしも恋ちゃんがこうして漆くんに手作りプリンを渡せたなら、
もっと早く漆くんは素直になれていたかもしれませんね。
漆くん、誕生日おめでとう!!
20140606




