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高校二年編●漆恋●恋人if「君不足」


恋ちゃん視点で黒巣漆くんと恋人if!


君不足の高校二年生編!


忙しさであまり過ごす時間が減った二人の、甘めな話。


20131114



「約束、忘れただろ!」


 校門を潜って昇降口で靴を履いていたら、不機嫌な黒巣くんが詰め寄ってきた。


「……あ」

「あ、じゃねーしっ!!」


 黒巣くんはカンカンだ。

昨日一緒に登校しようと約束したにも関わらず、私は忘れて一人登校してしまった。


「ごめん」

「ごめんで時間は戻ってこねーよ!!」


 怒りが収まらない黒巣くんは乱暴な音を立てて靴を履き替えると、スタスタと先に行ってしまう。

慌てて追い掛ける。

 ここ最近私は部活の練習が忙しく黒巣くんは生徒会長の仕事で忙しくって、二人で過ごす時間がなかったから、昨日は一緒に登下校しようとメールで黒巣くんが提案した。

私は承諾したのに、朝起きた時にはすっかり忘れていた。

 黒巣くんが一緒にいる時間を少しでも増やそうって言ってくれたのに、申し訳なさで一杯だ。


「黒巣くん、ごめんなさい。埋め合わせするから」

「時間がないから、一緒に登校しようってことになったのにどう埋め合わせするって言うんだよ。俺はアンタとの時間が不足しすぎてるからどうにかしたかっていうのに! アンタは寝て忘れたなんて!」

「本当にごめんなさい……」


 呼び止めれば黒巣くんは廊下で振り返り、私に詰め寄った。

 私だって、黒巣くんとの時間が不足しすぎていることは寂しく思う。

でも忘れてしまうほど黒巣くんと朝や夜すれ違う日々が続いてしまったから……。


「放課後は……黒巣くんが終わるまで待つから。そばにいてもいい?」

「……そしたら、宮崎が負担になるだろ」

「疲れて寝ちゃったら、送って」

「……わかった」


 黒巣くんの仕事の方が長引く。部活疲れで私はいつも帰ってたけど、埋め合わせとして黒巣くんのそばにいることを上目使いで約束した。

 私を心配して躊躇するけど、少しでも一緒にいたいと思ってくれている黒巣くんは頷く。

 でもまだ不服なのか、唇を尖らせたしかめっ面だ。


「……足りない」

「…………なにをすれば満たされるの?」


 放課後の約束ではまだ不足。あとはなにをすれば、約束をすっぽかした償いになるのだろうか。

 首を傾げて見上げていたら、閃いたらしく黒巣くんが目を見開いた。


  ドン!


次の瞬間、黒巣くんが私を両腕に挟んで壁に追いやった。

 驚く私の目の前には真剣な眼差し。

間も入れず黒巣くんの唇が、私の唇に押し付けてきた。

 少し強引な口付け。

黒巣くんが昼間の校舎内でしてきたのは、これが初めてだ。

両手で私の顔を押さえて、壁に押しやるように密着しながら深い口付け。

 久しぶりだった。

こんなにも黒巣くんに近くで感じるのも、この感触も、この温もりも、久しぶりで溺れてしまいそうになる。

 でも私が抱き締める前に、黒巣くんの唇が離れた。


「――――これで、満足」


 ぎゅ、と軽く私を抱き締めるとそっとご機嫌な声で囁く。

すう、と私の髪の匂いを嗅いで、離れた。


「じゃあ、放課後な。絶対に忘れるなよ」


 無邪気な笑みで黒巣くんは手を振ったあと、釘をさす。それからスタスタと忙しい生徒会長は先に行ってしまった。

 壁に寄り掛かったままそれを見送る私は、赤くなる頬を押さえる。

 黒巣くんは満足したけど、私は不足してしまった。余計不足を感じている。

まだ足りない。

まだ君が、足りない。


「……添い寝してもらおう」


 いきなり壁に押しやって深い口付けをしたせいで、胸が高鳴っている。

 この仕返しに、部屋に送ってもらったら添い寝をおねだりしよう。

一緒にいたいと思ってくれているなら、添い寝してくれるよね。

 まだ唇に残る感触を逃がさないように指先で押さえた。

 本当に久しぶりに高鳴る鼓動に、黒巣くんへの好きが熱く宿る。

 多分、きっと、この熱さを感じる度に、私は君に恋をするのでしょう。


end

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