ヴィンス/恋人if/恋ちゃん視点/「浴衣姿」
このまま眠ろうかと思いましたが、ヴィンス先生の恋人ifを思い出したので更新!
夏祭りネタのはずが、夏祭りにいかなかった不思議な短編になりました。
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ヴィンス先生と恋人設定!
高校二年生の恋ちゃん視点!
2013年 08月20日(火) 22時12分
「これで、終わりです」
仕上げに私の髪に髪飾りを差すと、ヴィンス先生は微笑んだ。
ヴィンス先生の家で夏祭りに行く前に浴衣に着替えた。
羽織ったあとにヴィンス先生が着付け。和服は不馴れだからネットから情報を得て、ヴィンス先生は丁寧にしてくれた。
「自信がないです」と言ってヴィンス先生は全身鏡に私を映して確認を求める。
相も変わらず、完璧です。
漆黒の浴衣には一つの大きな深紅の薔薇がラメつきで描かれている。帯も薔薇をモチーフにした華やかなもの。
ヴィンス先生の贈り物だ。
正直人込みの酷い夏祭りは苦手だけど、浴衣を着る口実には相応しい場所なので夏祭りデートを承諾した。
ま、ヴィンス先生は承諾させるために、こんな高そうな浴衣を贈ってきたのでしょうが。
「さて、気温も下がる頃ですし、行きましょうか」
「………………」
行ってもいいのでしょうか。
ヴィンス先生に返答できず、着付け中目が放せなかったそれを見つめる。
ヴィンス先生も浴衣だ。
深海のような黒に近い青色。これまた高級感を纏うものだった。
「おや。やはり似合いませんか? 初めて着るものですが、私には合いませんね」
「いえ、お似合いですよ」
私の視線に気付いて首を傾げるから、間入れず伝える。
外国人容姿のヴィンス先生でも和服は似合っていらっしゃる。青色系が似合う方だ。流れるような白金髪もストレートにしていて、ピッタリ。
とても似合っていらっしゃる。
似合っていらっしゃるのですが、似合っていらっしゃるけれども、果たしてこの姿のヴィンス先生を外に出してもいいのか。
躊躇してしまう。
浴衣はなんとなく色気が出るものだ。
元々あるヴィンス先生の色気が合わさって、もう外を歩いてはいけないのではないかと思うくらいの色気がただ漏れ。
非常に外出を許可できないのですが。
首元のせいでしょうか。
逞しい男らしい首に、くっきりした鎖骨、見えそうで見えない胸板。
そのせいでしょうか。
「では……なんですか?」
私の返事を待つ間、ヴィンス先生は全身鏡にまた移すと確認をした。
髪飾りの位置、襟元の位置を整えると、私の首筋に口付けを落とす。
「美しいです。妖艶で」
「貴方もですよ、ヴィンス先生」
鏡越しに私を見つめて微笑むとヴィンス先生は私の右手の甲に唇を押し付けた。
そっくりそのまま返すと、面白そうに笑い声を漏らす。
その息が首にかかる。
「私が艶かしい?」
「はい」
「だから外出をしてほしくないと? 嫉妬してしまうからですか? 嬉しいですね」
「……そう言ったら、着替えますか?」
「ふむ……どうしましょうか?」
ヴィンス先生は私と夏祭りデートが目的だから、ヴィンス先生は私服に着替えてくれれば、私は快く出掛けられます。
嫉妬しないデートでお願い致します。
「貴女と夏祭りに行きたい、それが私の望みだと思いでしょう?」
……違うのですか。
「貴女の浴衣姿を見たかったのです。この、艶かしい姿をね」
目的は、浴衣。私の浴衣姿。
ヴィンス先生は艶かしく私の耳に囁いた。
なんだか妙な方向に展開が進んでしまっている。
私の左腕をなぞるようにヴィンス先生の右手が動く。帯に手がかけられた。
「……ヴィンス先生。デートに行きましょうか。そのままでもいいのですから」
「音恋さん。後回しにすると夏祭りに集中できません。ちゃんと着替えてデートを楽しみましょうか」
これからの予定が狂わされた。決定的なのですか。
足掻こうと策を考えた。
「ほ、ほら、着付けをしたばかりじゃないですかっ」
「音恋さん」
甘く私の耳に囁いて、唇を押し付けるヴィンス先生は鏡の中で微笑んだ。
この仕草は合図。このあとの展開は決定事項なのですね。
「また――――…して、差し上げますよ」
艶かしく区切ってヴィンス先生は、真っ赤になって俯く私の帯をほどきはじめました。