笹川先生視点●47話おまけ
2012年 12月 02日 (日) 14:44
47話のあとがきに書いたおまけのエピソードが、意外にもウケたので(笑)
笹川先生視点でちょこっと書いてみました。
音恋ちゃんが保健室に来たから、また怪我でもしたのかと思ったが違った。
「中間試験一位をとれました。褒めてください」
俺をつぶらな瞳で見上げて言った言葉に心底驚いた。
おいおい! 音恋ちゃんがデレたぞ!
勉強する場所を提供した俺に報告したついでに冗談で言っているのかもしれないが、クールな音恋ちゃんからのおねだりが胸にズキュンときた。
気のせいかもしれないが、音恋ちゃんの声が弾んでいるように聴こえた。
熱心に黙々と勉強していたからな、一位がとれてすげぇ嬉しいんだな。
ヴィンセントが音恋ちゃんを愛でる理由がよくわかった。本当に可愛いな、この子。
自然と口元がだらしなく緩んだ。
「おう、よく頑張ったな……!?」
音恋ちゃんの頭に手を置いて撫でようとした瞬間、バシッとその手を叩き落とされた。
「煙草吸いましたね」
「っ!」
まるでチワワみたいに可愛く見上げてきた黒い瞳が、スッと細められる。音恋ちゃんの声は氷柱のように冷たく俺の胸に突き刺さった。
しまった! 朝吸った時の臭いがついちまったのか!
音恋ちゃんが保健室に訪れなくなった直後に、耐えきれずまた煙草を吸ってしまった。それに瞬時に気付く音恋ちゃんは目敏い。
それから俺は音恋ちゃんに冷たい眼差しを向けられながら、罪悪感が膨らむ説教をされた。
見上げられているはずなのに、音恋ちゃんの目は俺を蔑むような見下しているように見えてしまう。
もう胸が痛い。俺は今度こそ禁煙を誓い、音恋ちゃんに謝罪した。