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性なる金字塔は聳え立ち

作者: 川底うなぎ

主人公、小宮山ヨウジョは兄の股間より生えたる豪槍に興味を持つ。

それがこれまでの平和な日常を破綻させかねない禁忌の感情だと知りつつも、故に幼き少女は欲望に耽溺していく。

果たしてそれはどれほど大きく、硬く、いかなる薫りを放っているのか。

道徳を、常識を、かつての価値観全てを天秤に掛け、尚ヨウジョは一計を案ずる。

両親不在、兄と二人きりの夜に、少女は金字塔に向かって羽ばたく事を決めた。

 それは極限にまで達した痛みだった。


 呼吸は乱れ、玉のような汗が流れ、心臓は早鐘を打つ。


 あたしはいつまで、この生き地獄を味わえばいいのだろうか。


 生き地獄の名は我慢だ。あたしは今、とある強大な欲望と戦っている。


 欲望と理性、互いが激しくぶつかり合い、殺し合う。一つの戦場。


 「も…ぉ…、もう、我慢…できないよ―」


 だが、その雌雄を決する戦いも、今、この瞬間に終わりを遂げた。


 勝者は欲望。


 己の最も欲する物のために、常識、社会性、世間体、そんな何の意味も持たない物を捨てる覚悟が、今ようやくできたのだ。


 「もう駄目! 我慢できない! お兄ちゃんのおち○ちん触りたいよぉおお!」


 あたしの名前は小宮山ヨウジョ。今はちょっと多感なお年頃の小学生です。


 ターゲットはもちろんお兄ちゃん。今年で18になる、常時発情中の高校三年生だ。

 目の前にこんな美味しそうな、未成熟が故に魅力のある、甘酸っぱい果実があるというのに彼は決してあたしに手を出そうとしない。お兄ちゃんのベッドの下を覗いて分かったことは、彼は金髪巨乳が大好物ということだ。


 「何を腑抜けたことを! このあたしが牛みたいなタレ乳に負けるわけないでしょ!? あんなのが好きなこの国の人間がわけわかんない! 良い国作ろう貧乳幕府!」


 甘酸っぱい青き果実! 低脂肪乳! 猿も木からちっぱい! 解さぬ阿呆に救いはなく、故に愚鈍なる兄に何としてでも思い知らさねばならないのだ!


 ターゲットは現在入浴中だ。ああ、きっとあの中には生まれたままの姿のお兄ちゃん。そしてその体の中心からぶら下がってるおちん○んがあるに違いない。ハァ、フヒィ。


 喉から触手が出てきそうなほどに欲しい代物だが、ストレートに突撃して触ったり頬擦りしたり舐めたりするわけにはいかない。理由は明快にして当然。そんなことしたらまるであたしがどうしようもない変態みたいだからだ。ヨウジョはちょっと多感なだけの純真な女の子なのです。


 そんなわけで、あたしは計画を練った。純真な幼女であるあたしが、おち○ちんを充分に楽しむことのできる超絶スーパーミラクル作戦である。それはまず、入浴中の兄がいる風呂場前の脱衣場に蛇の如く進入するところから始まるのだ。

 

 脱衣場までダンボールの中に潜りながらやってくる。お兄ちゃんのいるお風呂からは戸一枚しか挟まない空間なわけだが、決して見つかるわけにはいかないのだ。愛ゆえに。


 しかしダンボールに潜ってからの移動というものは相当苦労するものだ。小さな穴を開けているとはいえ、視界確保がなかなかうまくいかない。さっきだってうっかりテーブルに激突して、お皿を割ってしまったのだ。あれは片付けておいたけど、お兄ちゃんにバレたら叱られるのかなぁ。お尻ペンペンとか、………ハァハァ。


 おっといけない、目の前の仕事を忘れるところだった。

 ダンボールを僅かに宙に浮かし、下の隙間から手を伸ばして、お兄ちゃんの脱いだ衣類を漁る。がさがさごそごそ。


 そして………見つける。


 「パンツ………きた………これっ!」


 圧倒的トランクス! 汗の香りがへばり付きっ、おち○ちんを直に、ダイレックトに覆うッ、実に、じっつにけしからん布切れ!


 あたしの手に握られているのは正真正銘、お兄ちゃんのパンツだ。脱ぎたてホヤホヤのお兄ちゃんのパンツだ。パンツなのだ。大事なことなので何度でも言ってやる。お兄ちゃんのぱんちゅだ。


 「ん? 鼻息? しかもやたら荒い………」


 ふご、やぶぇ! お兄ちゃんが反応した! 下着泥棒がバレる! いや、その前にこの脱ぎたてパンツを取り返される! なんとか………誤魔化さねば!

 

  「あっはああん。 うっふうううん!」

 

 お兄ちゃんの秘密DVDに出てきた牛の真似をする。悔しいが、今のお兄ちゃんならこれでクラクラになって細かいことは気にならなくなるはずだ。


 「!? …………なんだ、発情期の猫か」


 …………どういう意味なのかはよくわからないが、なんとか誤魔化せたらしい。危ない危ない。ふう。


 お兄ちゃんのパンツを懐に入れる。後で思う存分スーハークンクンするのだ。これで作戦第一号は終了である。ナイスだ、あたし。


 まあこのパンツさえあれば、一週間は切ない夜を過ごさなくて済むわけだが、………哀しいかな、人の欲望はそこまで浅くできていないのである。


 あたしはお兄ちゃんのお○んちんを手に入れる! 何がなんでも! 必ず! 確実に! 誰にも止められない! 止めさせやしない! あたしは加速していく――!

 

 計画がここまで来た以上、ダンボールはもはや不要だった。邪魔な紙の塊を押しのけ、あたしは風呂場の前に立つ。……ヨウジョ、出撃する!


 「お兄ちゃん! 湯加減はどう?」

 

 戸一枚を挟んだ風呂場へあたしは語りかける。やはりコソコソ隠れるのは性じゃない。漢なら堂々と前へ出るべし。ちなみに別にあたしがお風呂の準備をしたわけではない。

 

  「お、ヨウジョか? どうしたんだよ。皿でも割ったか?」


 「びくっ、やだなあ、お兄ちゃん。あたしはそんなにドジじゃないよ」


 ああ、いつも何気なく話してるおにいちゃんが、この戸の向こうだと裸なのだと思うと異様に興奮する。この戸破れないかなぁ。むしろ破ろうかなぁ、むふ、むふぇふぇふぇふぇ。


 「ね、たまには一緒に入ろうよ。背中流してあげる。ついでに筆も下ろすよ?」


 「馬鹿。もうそういう時期は卒業しただろ? 学校でまだ兄貴と風呂入ってるなんて言ってみろ。馬鹿にされるぞ」


 「むう、2回も馬鹿って言った」


 「馬鹿だからな」


 あたしが多感なお年頃になった頃からか、お兄ちゃんは一緒にお風呂に入ってくれなくなった。おち○ちんがなんたるかも知らないほど小さい頃の記憶なんて恥ずかしく思っていたせいか、ファミコンソフトのセーブデータが如く、アッサリサックリと消えてしまったものだが、その中にお兄ちゃんのおちん○ん映像データすら混ざっていたことに気付いたときはさすがにショックだったというものだ。


 「お兄ちゃん。今日、お父さんは接待という名のキャバクラ篭りで、お母さんはBL漫画を買いに行ってるよね。あたし、何か家事手伝おうと思ってね。洗濯やっておいたよ」


 だが、その映像データも、今日復活を果たす。昔とは違う、大きくて、太くて、逞しい。成長したおちんち○の姿に。そのための一手が、………これだ! 

 

 「え? 洗濯してくれたのか? ぉお、すっげぇ助かる! ありがとな、ヨウジョ」


 ああ、戸一枚挟んでいても、屈託無い、少年のような笑顔を浮かべるお兄ちゃんが目に浮かぶ。本当に、よくもここまで素直に礼を言えるものだ。しかもそれが真っ裸だと思うだけで、………た、たまらん。


 「えへへ。ぜーんぶ洗っておいたからね。もう、たくさんあって困っちゃった」


 「はは、そいつはお疲れ様だな。……ん? でもそんなに洗濯物溜まってたっけ?」


 さぁ………行くぞ、小宮山ヨウジョ。勝負のときだ。


 「うん、すっごく溜まってたよ。お兄ちゃんのパンツ」


 「!?」

 

 そう、これがあたしの手だ。親切な妹を装って、お兄ちゃんのパンツを洗濯する。全て洗濯機にかける。タンスの中にあるパンツから、ちょっと用ありで、簡単に洗濯機に放り込めないようなパンツまで。あたしが懐に頂いたパンツを除いて、この家にあるお兄ちゃんのパンツ、その全てが洗濯機の中なのだ。


 「ちょ、ちょっと待てヨウジョ。まさか、タンスの中のまで?」


 「タンスの中のまで」


 お兄ちゃんは現在入浴中。無論、パンツは履いていない。

 さあ、………お兄ちゃん。そのお風呂から出てくるとき、あなたはどんな姿?


 「ど、どうしてそんなことを!」


 「? 溜まってたから?」


 「タンスの中のものは洗濯しないでいいんだよ! 分かるだろ常識的に考えて!」


 「あ、あれ? そうだったの? あ、あははー、やっちゃったZE☆」


 無知な妹を装い、お兄ちゃんを追い詰める。限界まで、最後まで、お兄ちゃんがお○んちんを晒すまで!


 「やっちゃったぜ☆ じゃねえよ! 俺は何を履いて風呂から上がればいいんだ!」


 「え、えーと、それはー………、あ、はははー」


 ああ! 内心笑いが止まらない! 計ッ算ッ通ッり! 完全にお兄ちゃんの詰み! あたしのチェックメイト! これでお兄ちゃんはおち○ちんをぶらつかせながらお風呂から出るしかないのだ! ひぃぃいいいいいいやっふぉおおおおおお!


 「大丈夫だよ! あたしたち、兄弟だもん! 小さい頃はなんてことなかったじゃない。お兄ちゃんの裸なんてなんとも思わないよ!」


 んなわけねぇだろおぉおおおおおおおおおお!? 今時近親相姦ネタなんていっくらでもあるのだっぜぇえええ? 血の繋がらない兄弟が~、だなんて言ってるうちはまだまだ三流! 兄弟ネタの真骨頂は、血の繋がるが故の背徳感にあるんですよ分かりますかマイブラアアアザアアアアアアア!? 


 「ば、馬鹿。そんなわけにもいかんだろ。仕方ない、部屋を探してみるか」


 扉越しに浴槽から上がる音。続いてゴシゴシとタオルで体を拭くような音の後、ガラララ、と戸を開けて下半身のみをバスタオルで包んだお兄ちゃんが現れた。


 「って、………バスタオル、だとおお!?」


 完全なる伏兵だった。憎憎しい分厚い布切れが、あかんべーしながらお兄ちゃんの下半身に巻き付いている。それは局部の出っ張りすら覆い隠してしまっていて、お兄ちゃんのお○んちんの気配を微塵も感じさせない。


 「お、おのれ、おのれバスタオルゥウウウウ!」


 「何言ってるんだお前。いいか? 洗濯のやり方は今度教えるからちゃんと覚えろよ?」


 あたしの傍を通り過ぎて自分の部屋に向かうお兄ちゃん。その剥き出しにされた上半身は、まともに運動をしてない割には中々に筋肉質で、公園のベンチで男キャッチをしているノンケでも構わず食ってしまう男食系男子の人ではなくても、ウホッ、いい男! と言ってしまうような魅力に溢れ………いやそうではなく!


 なんということだ。このままではお兄ちゃんのお○んちんを拝むことができない! パンツを奪えば風呂場から出てくるのはブラブラお兄ちゃんだと思っていたのに! 


 何か文句があるのかといわんばかりに局部をさらけ出した男気溢れるお兄ちゃんが! もしくは恥ずかしそうに前屈みになって局部を押さえて顔を真っ赤にするお兄ちゃんが! それらを想像空想妄想して過ごしたあたしの数ヶ月が! 全て、全て、無に帰していく………!


 ………………………。


 「なんて………言うとでも思った?」


 「え?」


 俯いて何かをボソリと喋ったあたしを気にしたお兄ちゃんが、歩きながら振り返る。すると――。 


 ペタ。


 お兄ちゃんの逞しい上半身に、何かがくっつく。


 「え、何だこれ………うお!?」


 自分の体にくっついたものを見たお兄ちゃんは驚愕したであろう。その正体に。


 「これは…セロハンテープか?」


 透明色の目を凝らさなければ知覚できないセロハンテープが、お兄ちゃんの体にくっついている。それも一本のテープではない。二本、三本、四本…。まるで蜘蛛の巣のように張り巡らされたセロハンテープに、お兄ちゃんは今、引っ掛かったのだ!


 こんなこともありえるのではないかと思っていた。お兄ちゃんがあたしの想定外の行動を取り、計画を破綻させることが。だから、罠を仕掛けた。事故という形でお兄ちゃんのお○んちんを拝むことができないというのなら、実力行使に出るしかない。それだけのことだ。


 「お、おい、ヨウジョ! これは何の悪戯――うを!?」


 お兄ちゃんはもがくが、無駄。あたしのセロハンテープは、あたしの想いは、たとえロケット弾を撃ち込まれようと、傷一つつかないほど強固なのだから。


 ――さて。


 蜘蛛の巣に引っ掛かった蝶がいるならば、そこには当然、蝶を美味しく頂く蜘蛛がいるはずである。そう、それを――、

  

  「小宮山ヨウジョって言うんですよぉおおおおおオオオオェァアアアアッハアアアアアアア!!!」


 一度巣にかかった獲物は決して逃がしはしない! 手持ちのセロハンテープでお兄ちゃんを巻き上げる! 締め上げる! 全身をテープで巻いて巻いてミイラにしてしまう! だが下半身だけはノータッチだ! 淑女の極みだぜぇえええ!?


 「ヨウジョ、お前……、一体何を……」


 簀巻きにされ、仰向けに寝かされるお兄ちゃん。巻かれたテープは口元にまで及び、今でも喋ることすら辛そうだ。


 「うすうす勘付いていたくせに。知ってるんでしょ? あたしがお兄ちゃんのおちんち○を触りたくて仕方ないってこと」


 「は!? え、はい!? ま、待て。お前…何を言ってるんだ?」


 あたしは聞く耳を持たず、お兄ちゃんの下半身を未だに守り続けている健気なバスタオルに手をかける。お兄ちゃんは身をよじって抵抗するが、残念ながら蜘蛛の巣に引っかかった蝶は、お坊さんにでも助けてもらわないとどうしようもないのだ。

 

 「ふ、ふふふふ、やっと、やっとあたしの物。お兄ちゃんの固くて太くて大きいお○んちんが、ついにあたしのものに――」


 蜘蛛が、どのように食事をするか知っているだろうか?


 蜘蛛の巣に引っ掛かった獲物。これに毒を流し、感覚を麻痺させたところで、生きたまま少しずつ咀嚼していくのだ。残酷でありながら、最高に新鮮な肉を食べられる、最高に美味しい食べ方!


 「大事にするからね。お兄ちゃんのおちん○ん。うふふふふふふふ、ふひぇふふふ、ふひゃふぁひゃはひゃひゃあっふぁぇぁああっふぁああああ!」 


 「や、やめろヨウジョ。やめてくれ! う、うをお、うをぉぁあああああ!」


 お兄ちゃんの悲鳴も、今では最高のスパイス。抑えきれない体を震わせつつ、あたしはついに、長い長い我慢の日々を終える。


 「お兄ちゃんのおちんちん! いただきまぁああああああああっすぇえぁあああああああああああああああぁぁぁあああああ!!!!」


 「ひ、ひいぃいい! ひぎいぃいいいいぃい! ら、らめぇええええぇえぇええええ!!」


 邪魔なバスタオルを投げ捨て、今こそ!!


  ……………………………………………。


 

 …………………………………。



 ………………………え?



 「お兄ちゃん………これって……………」



 「み、見ちゃらめ、らめ、らめぇええ!」







 「三センチしか…………ッ!!!」











 欲望に満ち溢れ、欲望に振り回される世の人々。






 あなたの欲しい物に、一体どれだけの価値があるのでしょう?






 彼女が得たものは、多分、恐らく、きっと――。







 

 

 

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