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願い  作者: はー
絡みつく世界
36/38

消失

「何故だ……」

 僕は青葉を見る。

「先生! あれは、椿姫は……」

 青葉の心が見たい。考えを知りたい。その奥底にある真実を知りたい。

「どう見ても椿姫なんかじゃありません!」

 肢体と呼ぶべき物はある。そして顔、苦悶に歪む顔。それらがどろどろに溶合い、混り合っている。

 そして、ぼたりと欠片が落ちた。

「無駄なんだよ、哉来君」

 境生の目は僕には向わずに、哉来だけを捉えていた。

「無駄なんかじゃないよ」

 哉来の白い世界に小さな影が出来る。彼は、笑っているのか……


 そして僕はようやく知った。

 椿姫には、白塗りには、宿主が二人居た事を――

 そして僕はようやく気付いた。

 椿姫を、白塗りを、奴を倒す方法を――


 今の僕には父を信じる事が出来る。父が選び出した境生を信じる事が出来る。境生に全てを任せる事が出来る。

「哉来君、君がいくら他人と違うところ、白であってはならないところを白に塗っても、全ては無駄なんだよ」

 境生の言葉に、哉来の影が消える。

「雅ちゃんを家に呼んだとき、君は『よくわからない』と言われたそうだね」

「……そうだよ。彼女は白が好きなんだ。だけど、ただ白いだけじゃダメなのさ」

「人とは違う部分が白くないといけないんだろう?」

「へー、よく知ってるね。そ、白い靴、白い肌、白い部屋……。でも、それじゃ足りなかった」

「ま、まさか、それで目を?」

 哉来の瞳が僕を捉えた、ように感じる。

「そうだよ。僕は知ってたんだ。ただ勇気がなかった」

「契機は栄都か」

「そう! あの人は僕に街を呉れると言った。僕が王様だよ? 完全じゃないとね。これで、これできっと彼女も気に入ってくれる」

「それは誤解だな」

「誤解?」

「ああ、君は知らない様だが、彼女、雅ちゃんは目が悪いんだ」


 そう、なのだ。つまり――

「……何それ?」

「つまり、薄い色は全て白にしか見えない。雅ちゃんはそういう病気なんだ」

 僕は雅を想い、哉来を想った。それはとても悲しい作業だった。

 雅は産まれながらに白の世界に居たのだ。

「……そう……なの。でもだから何?」

「そう、だから白い部屋に白い君がいたら……見えないんだよ。彼女にはね」

「え?」

 そして哉来は白の世界を構築した。だから――

「だから彼女の目には白しか写らない。白しか好きになる事が出来なかったんだ」

 だから、哉来は彼女の世界から消えてしまった。

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