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願い  作者: はー
絡みつく世界
28/38

世界

 栄都は扉から顔を覗かせ辺りを見渡すと僕に向って言った。

「思ったより遅かったねぇ。それであのアホは?」

「ああ、ちょっと遅れるそうです」

「ん、何が可笑しい?」

「いえ、仲が良いなと思いまして」

「フン、馬鹿馬鹿しい」

 寄り道などしていないし、時間的には決して遅くないはずだ。それでも思ったより遅いということは、それだけうちの先生のことを買っているんだな。素早く踵を返した栄都に従い、僕もついて行く事にした。


「ま、良い。君に証人になってもらうとしよう」

「検査結果出たのですか?」

「ああ」

「どうでした?」

 境生に止めるよう言われていたが、既に諦めていた僕は、自ら話を先にすすめた。

「今から説明するよ」

 そういうと栄都はリビングに居た青葉を招き寄せ、間仕切りの扉へと僕らを促した。

「あの、あそこで説明するのですか?」

「何か問題でも」

「いえ」

 いずれは行かなくてはいけないと解っていたのだけど、それでも自分の意思で、自分のタイミングで選択したかった。境生がここに居ない事が、今はなんとなく寂しかった。


 いけない、弱気になってどうする。僕がやらなくてはいけないのだ。

 栄都は目的地に到着するなり扉を開いた。そして白の世界の中へ。

 青葉が続いて境界線を越えた。そして虚ろの世界の中へ。

 以前来た時とは比べ物にならない重圧を感じながら、僕はこの世界へと足を踏み入れた。

 途端に立ち眩みがした。二人に悟られないように堪えながら、ゆっくりと階上を見あげると――居た。

 異形だ。

 何だあれは?

 一体どうしてあんな姿に……

「大丈夫か?」

 栄都が肩を支えた。

 触るな――触るな――触るな――

「大丈夫です」

 落ちつけ、これは父が僕に課したテストなんだ。

「ありがとうございました」

「フム、それでは説明するよ」

「よろしくお願いします」青葉が丁寧にお辞儀をしながら答えた。

「はい」イエスより短くてよい、なぜならその時の僕には、これが精一杯の発声だったのだから。

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