非科学
「ふむ、興味深いな。確かに白が好きだったとは言えないようだ」
「おいおい、お前何聞いていたんだよ。この淡くて甘ーい初恋のだな」
「ちょ、ちょっと、おじさん!」
雅が慌てて境生を止める。
「まったく、君こそ何を聞いていたんだい。本当に馬鹿だな、君は」
「なんだと、こら」
「まあまあ」
随分と境生に馴れ馴れしくなった男が境生をなだめていると、雅の家の玄関が開き少女の母親が姿を現した。
「あの、そろそろ。もう遅くなりましたし」
「栄都様」
「うむ、構わない」
そう聞くと、黒服の男は母親の元に行き、ニ、三、言葉を交わした後、彼女に深々とお辞儀をした。
「雅ちゃん、こっちにいらっしゃい」
母の呼ぶ声に少女は頷き「それじゃ、さようなら」と、境生と男に小さく挨拶をして家の中へと足早に帰っていった。
かわいかったな、と境生が男に水を向けると、男も「ええ、そうですね」と同意した。
「もうちょっと話していたかったぜ」
「ふん、これ以上君と一緒にいると馬鹿がうつる危険があったから、このくらいで丁度良い」
「ああ、んだと。非科学的な事は嫌いじゃなかったのかよ」
「君に限っては、これは非科学的ではない。現実だよ。百パーセントうつる」
「てめえ、今すぐここに来やがれ、ぶっ飛ばしてやる」
「ふ、どちらも非現実的だな」
「はっ、怖いなら怖いって言えよ」
「なんだと!」
「なんだよ?」
男が仲裁を諦めている頃、道明は青葉に哉来の担任の連絡先について聞いていた。