表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
願い  作者: はー
ひとつの世界
15/38

少女

 栄都達を乗せた車を見送り、回答のない自問にも一通り決着をつけ終わった頃、道明は境生を振りかえって言った。 

「でも病院に連れて行ったところで問題は解決しないでしょうね」

「おっ、分かってるじゃねえか」

「栄都さんには悪いですけどね」

「良いんだよ、あいつは。あれはもう依頼人のためとかじゃなくて、たんに自分の興味ってだけだろう。ま、あいつもこれで終わったなんざこれっぽっちも思ってないだろうけどな」

 ふーん、そんなもんですか。境生の栄都に対する正直な評価に、道明は少し好感を持った。また、それは道明の父への信頼回復にも若干の効果を齎したようでもあった。


「ところで先生、気になってたんですけど、さっき女の子がこっち見てませんでした?」

「ん」

「ほら、あそこの影で白い服を着た女の子が」

「いつから」

「僕が外に出た時には居ましたけど」

「珍しい車でも見て追いかけてきたのかな」

「まあ車かもしれませんが、何となく車ではなく、僕らの方をじっと見てた気がするんですよねえ。哉来君が出て来る前からずっと」

「ありゃ、見られたかな」

「あ、それは確実です。彼が家から出てきたのを見て、表情が変わりましたから」

「幾つくらいかな」

「さあ、多分小学生だと思いますけど」

「ふうん、目が良いな、お前ロリコンか」

「違いますよ、失礼な。僕の目は色々と良く見えるんです、色々とね」

 先生のダメなところは特に、と皮肉を続けようとした道明に気付く様子も無く、境生は少女がいたという方向を見つめていた。


「それで視力は?」

「一.0ですけど」

「は? 普通じゃねえか、このロリコン」

「じっとこっちを凝視されてたら気になるでしょう? もう良いですよ」

「嘘、嘘。で、どっち行った」

「三件先の家に入っていったから、そこの子供じゃないですかね」

「よし、戸締りを強化するよう言っておこう」

「先生、いい加減に――」

「冗談だよ、冗談。まあ、哉来君の事を学校で言わないよう、説得でもしてくるよ。案外関係あるかもしれないし」

「聞いてくれると良いですね」

「説得は得意だ、まかせろ。お前は青葉さんに、そうだな、少年の担任の連絡先でも聞いといてくれ」

「了解です」


 少女の家に向ってのんびりと歩き出した境生の背中に視線をおくった道明は、必死に少女を説得する境生の姿を想像し、ちょっと笑った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ