表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
願い  作者: はー
ひとつの世界
13/38

合意

「いいよ、行っても」

 その声は唐突に降ってきたように道明は感じた。人、確かに人の声だったのだが、道明には階段の影に在るモノが人だとはっきり認識できていなかった。いや、無意識に思考の枠から人という可能性を除外していた。もしこれが獣のうめき声だったらきっと道明は戸惑いはしなかっただろう。人……。だから道明は狼狽した。

「ふむ、交渉成立だ」


 哉来にとって、自分を病院などに行かせようという行為は愚劣以外のなにものでもなかったが、自分の世界を手に入れられるという条件には、大きな魅力を感じていた。渇望していた。

 哉来は知っていた。いまのような小さな世界では駄目だと言う事を。

 哉来は気付いていた。白が足りない事を。


 栄都は素早く携帯を取り出し、通話ボタンを押すとほぼ同時に喋り出した。

「ああ、僕だ。至急第三病院とスタッフ全員を白色に塗ってくれたまえ。あと、そうだな、青葉さん、この家にはヘリポートありますか」

「い、いえ、ありません」

「そうですか。しょうがない、車を一台、こちらも白に。ん、そうではない、全てを、とにかく完全に、だ。言葉通りにすれば良い。終わり次第ここに」


 それからの数十分は、その場にいる誰もが殆ど発言しなかった。

 時が迷い、重苦しさが堆積する。それでも道明は次第に自分を取り戻しつつあった。自分が一番確りしなくては。それだけを道明は念じながら、車の到着を待っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ