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籠の中の小鳥は籠にいることを望んだ

作者: リード

一組の男女が選んだ選択の物語。


仄暗い。けど、純愛。

真っ直ぐすぎて若干歪んで見える。


では、どうぞ!!

薄暗い室内の中で微かに光が差し込むのは、天井にほど近いガラスの天窓からだけだった。白亜の城から連れ出され、北方の辺境にたどり着いた私から言える事は何もない。

この部屋に入れられる時に、一度だけ見た象牙の塔の全貌。蔦の絡まった優雅な尖塔のある城の、そのまた奥。この城の中で一番に高い塔のこれまた高い頂上に収まった部屋だからか、遮るものなど何もない景色が魔法を介して鮮明に映る。狭くない硝子窓から、何よりも広く、美しい夕闇の空が見える。


私は、それを柔らかく白い寝具に覆われた寝台に腰掛けて眺めていた。

―――それくらいしかすることがないのだ。


それに、空にほど近いこの塔から見る景色(ソラ)はすばらしいの一言に尽きる。ベランダやバルコニーがないからこの象牙の塔の下の風景を見ることは出来なくても、飽きてこないのだから、素晴らしい。そんなことを思いながら、高級そうな生地に包まれたクッションから身を起こし、微かに足を動かすと私の足首にはめられた繊細だが頑丈な作りの銀の枷が、シャランと涼やかな音を立てた。


こんなの(枷なんて)付けなくても逃げないのに………)


そんな事を考えながらも天窓から空を眺めることはやめなかった。

時計がないこの部屋では空や、星。あるいは太陽の照り具合を目安にするしかない。目が悪くなったら絶対に不便になるだろうなぁとかぼんやりと考えたりもするが、そんなことにはならないだろう。というよりも、私がそうなることを、あの男は赦しはしないのだろう。





日が落ちる。


月が昇る。


夜が、来る。





天窓から覗くのが月と星の光だけになった頃。

精霊たちが踊る夜。

部屋の隅にある魔法陣が淡い青い光を発し始めた。


――――――――――彼が、来る。


一瞬、部屋が日中の様に明るくなる。

それに、思わず目をつぶった。

監禁されていることに否はないが、これだけには慣れない。

できれば、もっとどうにかしてほしいとすら思っている。



魔法陣からの、眩いほどの光が消えて、反射的に閉ざした目を開く。



そこには、藍の髪に青銀を瞳に宿し、莫大な魔力を身にまとった彼がいた。



「――――“    (愛しい人)”」


青に銀を散らした優しい眼差しに見つめられる。とても、大切なのだ、と告げられるように優しく名前を囁かれて、痛いくらいに抱きしめられた。

彼が身に纏っている、冷たい雪の様な、スッキリとした香りが私達を包む。


彼は繰り返し、私がここに存在いるのを確認するかのように私の名前を囁き続けた。角ばった指が私の髪を梳き、頬を撫で、唇に触れる。ひんやりとした感触のそれが心地よくて、私から彼にすり寄った。

軽いリップ音と、かさついた感触。啄むような口づけが頬や目蓋、耳、唇に落ちてくる。それに答えながら、痛いくらいに抱きしめてくる彼の腕にそっと指を這わせた。


ぎゅうと、抱き寄せられて骨が軋む。だけど思わず、顔がほころんで笑顔が零れ落ちた。だって、こんなに“      ”が傍にいてくれる。


私だけのあなた。

貴方だけの私。


そうとも、私は貴方だけのものなのだ。

そうつぶやけば、いつも怜悧な美貌が、僅かに緩み淡い微笑を浮かべている。こんな顔、きっと彼の部下だって見たことがないに違いない。





彼は、私を愛してる。

それと同じように私も彼を愛してる。

だから、それ以外の物なんていらない。無用の長物、というやつだ。

そう。だから、彼はこんなにも怒っている。




「“    ”、お前の事を俺から奪い取ろうと各国の中から軍隊が派遣される」



魔王から聖女を奪還するんだとよ、と心底愉快そうに嗤う。

彼がそんな笑みを顔に刷いていても、本当ははらわたが煮えくりそうになっていることだって知っている。分かってる。

だって、幼なじみだから。

なによりも、誰よりも、どんなものよりも、この歪んだ世界よりも大切な、君だから。



「昔から、“    ”は俺のモノなのにな」



そう、私の全ては君のモノなのだ。

君を映す瞳や、君に愛を謳う為の唇は言うまでにあらず。髪の一筋、血の一滴にいたるまで、私は君のモノだ。“君が居なければ、呼吸も出来ない”。そんな、ことまで告げてしまえるような、激情を私は胸に飼っている。


「取り返すも何もない。私はただ、君の傍らにあることを望むだけだ」


そう言うと彼は愉快そうに笑い。

だが、笑った後、不機嫌そうに呟いた。


「――――――予言の通りに、お前に能力ちからがあるからと言い、親からも俺からもお前の意思さえも無視して勝手に奪い取っておきながら、何をぬかすのかと思うだろうが、正義は我にありだとか、馬鹿げたことぬかしやがる。……婚約者の俺がお前を取り戻した。ただ、それだけのことだ。それなのに軍を差し向けるんだと」


そう嗤って、また私を抱きしめた。

硝子細工でできた花を触るように優しく、涙が出そうなほどの愛おしさを込めて。


上から降ってくる愛のつぶてと言葉を受けながら、私も改めて彼の背に腕をまわした。





小鳥(聖女)がいることを望んだのは鳥籠の中(魔王の傍ら)


聖女()人間ひとで、魔王()人間ひとだということ)



いつかは書いてみたいオリジナルな話。

若干歪んでいる主人公達の純愛の話です。


私はなにかヤンデレの意味を間違えているような気がする・・・



誤字脱字などありましたら報告お願いします。

読んでくださってありがとうございます!!

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