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その5

オグナが産まれてから、100年が過ぎた。

成人の儀からさらに20年、シドウの者は独り立ちの時を迎える。


ある者は村の戦士に、

ある者は冒険の旅に、

ある者は更なる己の研鑽に、

《百の時を鍛え、万の戦イクサを駆ける》

この言葉がは、古くから伝わるシドウの教えだ。


オグナもまた、今日この日

伝統にのっとりシドウを旅立つ若者である。


村の門前には、父や母、親類、友人らが

見送りに集まっている。

先に旅にでる幼馴染や、村に残る悪友らと

言葉をかわし、別れの時をおしむ。


オサが良き旅と良き戦いに巡り会う為、最後の祈りを送る

「より猛き戦士となって帰って来なさい」

オグナはオサに深く深く頭を下げる


「立派になって…」

おんおんと泣く母の姿。

優しい母には、散々心配をかけたものだ。

その度に怒られ、その度に優しさに感謝し

ここまで育ててくれた、心優しい肝っ玉母さん。

そんな母も、ほん少し小さくなった。

「お腹は温めて寝るのですよ…」

成人しても母には、いつまでも幼子のように映るものだ。


泣く母の背をさすりながら

「ほれ!持っていけ!」

と言いながら、グイっ!と父のオキナが腕を出す。

その腕には、大きな包みが握られていた。

受け取った包みは、ズシリと重い。

「父上、コレは?」

「御神木から特別に切り出していただいた。」

包みを解く。

中身は、スッと削り出された木の棒だ。

「この世の、どんな鉄よりも重く硬い…大事に使え」

「ありがとうございます。」

「…達者でな」

「はい!」


足取りも軽く、オグナが村の門をくぐる!

エウロン…いや!オグナの冒険はここから始まる!!

期待に胸を膨らませながら、後ろを振り返る!!

さあ!故郷の皆に、大手を振って別れを告げよう!!!!

「行って参り…


オグナの足元がビカッと光った。



ー おお…成功でござい

ー まさか姫さまの魔法が1回で成功するなんて…

ー 失礼ね!


まだ、先ほどの光に若干目がくらむ中、

オグナは複数の声を耳にする。

不意に誰かが、オグナの手を握る。


「あぁ…アナタ様が伝説の英雄…エウロン様ですね?」

久しく呼ばれた、その響き

「私達を、この国を、その偉大な魔力でお救いください!」

オグナの目の前に美しい乙女が立っている

(ん?どこかで……)

オグナの脳裏にかすかに記憶が蘇る


……

…………

『…また、私に会いに来てくださいね…』

『うん、多分…いいえ、必ず……』

……


ー姫さま!エウロン様!!

危険を知らせる老人の大声、ハッと我に帰った直後!


ードカン!!!

目の前で眩い閃光と猛烈な爆発が起こった。

荒れ狂う爆風と轟音!それと焼け付く様な猛烈な熱気!!


だんだん砂埃がおさまると、先ほどまで横手にあった

城の壁は吹き飛ばされ、大きな横穴が開いている。

横穴の断面は、石材が赤く溶けだし黒い煙を上げている!

強烈な熱魔法が使用された形跡は、

城の中庭を超え、外壁の向こう側まで一直線に伸びていた!!


(…この威力だと【火霊(ファイヤエレメント)大矢(アロー)】か)

オグナが思案する中


「姫さま…お…お怪我は…」

弱々しい老人の声が聞こえる

「私はなんとか…平気…爺ぃや ありがとう、それにユッケも助かったわ」

ユッケと呼ばれた神官風の男。

「いえ、玉座の結界のおかげで、なんとか【(エア)障壁(ウォール)】のみ発動できました…しかし、エウロン様は…」

神官風の男がオグナに目を向ける。


オグナは、先ほどの場所から一歩も動いていない。

それ以外の者達は、爆風に煽られて

大穴と反対側の壁辺りまで飛ばされている。


そうこうしていると、

開いた穴の向こうから、ゾロゾロとこちらに向かってくる

甲冑を身に着けた兵隊の姿が見える。

おおよそ40名と言った所か。

その中央に、ニタニタと笑う男が1人、

こいつが舞台を率いている様だ。

いかにも自慢気で、威圧的な態度な歩きの男は、

手に大きな錫杖をもち、黒衣のローブと

痩せこけた顔立ちが、蛇を連想させる。


「な…なんと、あの男は!!」

しわ枯れた老人の目が大きく見開かれた。


「コレは、コレは、イスリールの皆々様!」

錫杖の先に大きな火の玉を作りながら

黒衣の男が近づいてくる


「キコル!!!!貴様ーーー!!!」

神官ユッケは怒りに任せ、怒鳴りつける


「お〜や!豚の糞にも劣る大神官ユッケ殿ではございませんか!!まだ無駄に生きておられましたなんて、息災そうで何よりでごさいますぅ」

嫌味たらしく男は笑う


「この裏切り者!」

少女が涙交じりに叫ぶ


「おやおやおやおや!いけません!いけません!お姫様…王族ともあろうお方が、そのように大声を張り上げてはなりません!」

「黙りなさい!!!」

「また大きな声を…はぁ…なんと野蛮な…流石は…」

一呼吸おいて、さらに嫌味を上乗せして男が続ける

「あの阿婆擦れの娘だ!!!」

「無礼者!お母様に向かって、なんて言葉を!」

少女は、怒りで紅潮する。


「それで…何です?この男は?」

キコルは虫でも見るようにオグナを睨め付ける


「エウロン様!今すぐ!その者を…」

老人が声をあげた瞬間!


「【火衣(クリムゾン)・の蟒蛇(ウロボロス)】」

キコルの錫杖から炎の蛇が飛び出すと、瞬時に老人を飲み込んだ

「うぁーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「爺ぃや!!!!!!!」

「ミト殿ーーー!!」

姫の悲鳴で鼓膜が揺れる、老人の焦げた匂いが鼻をつく

「黙れじじい、しかし…ひどいニオイだ」

言うと、キコルは目付きを更に座らせ、顎でオグナを指す。


「ふっ…これがエウロンだと??ハハハ!?コレがあの?伝説の英雄!エウロン・カーズ?」

「そうよ!私が英雄召喚を行いました!正真正銘の英雄エウロン・カーズ様よ!」

「ブハハハ!!!!!!!これがエウロン!ブハハハ」

高笑いの中、醜い殺意が一気に解放される!

炎の蛇が再び錫杖から鎌首をもたげ、オグナを丸呑みにした。

「嫌ーーーーー!!!!!!!!!!!」

姫の心に絶望が広がる。


「ハッハッハ…なんと、なんと愚かな!エウロンは遥か昔に死んでおります!やはり姫様の魔法は、いつも失敗ばかりですな!ハハハハハ!!肉体の無い死者を…どの様に呼び出すと言うのです?それに見なさい!本物のエウロンならば、これぐらいの魔法など難なく対処出来るはず!どこが英雄なものか! そんなこと、マヌケなバーサーカーでもわかるコトでございますぞ!!」


“バーサーカーで悪かったな"


「え?」

驚いたのも束の間、

キコルの首に目掛けて、炎の中から何かが伸びた!

「ッぐ!」

気管を圧迫されて、言葉を発する事が出来ない。

キコルの首に伸びたのは、人の腕!

万力の様な力が、首をグイと締め上げる!

「バーサーカーで悪かったな」

ググググと、キコルを首を掴んだ腕が、

みるみる大きくなっていく!!

「ぐ…ば…バカな…」

キコルの瞳が悪夢を映す、

炎の中の人影が、小ぶりな山の様に膨れていく!!


肉体が、ビリビリと焼け焦げた服を押し破り、

身体を包む炎が弾け飛ぶ


隆起した筋肉、盛り上がる力こぶ!!!

丘を思わせる発達した胸板!!

大砲の砲身よりも太い首筋!!

ロッククライミングが出来るほどにそびえ立つ、広い背中!!

深い渓谷を思わせる腹筋の割れ目!!

太ももは大地を締め上げる世界樹の根の様だ!


この世の筋肉!

それらを一点に集約した様な猛き姿!

沸騰した血液に!筋肉が喜び勇む!


これぞ!シドウの者の証【益荒雄(マスラオ)】の姿!!


まだ炎がくすぶるオグナの体から、キコルに炎が燃え移る

ギャーーーーーーーーーと、強烈な悲鳴

炎がキコルの体を焼いていく

自ら放った炎によって消し炭となっていくキコル。

「キコル様ー!」

「かっ!かかれー!!!」

ざわめく40人の敵兵が一斉にオグナに襲いかかる!


瞬間!

バチャン!!!


と、音と共に

甲冑を身に着けた敵兵達が、紙切れの様に宙を舞う!!

飛ばされて敵兵が、甲冑ごと燃えていく!!

その、へしゃげた甲冑には、燃えるキコルの遺体が食い込んでいる。オグナが木の枝を軽く振るように。

ぐわんと、燃えるキコルを横に払ったのだ!!!!


「化け物めー!!」

「距離をとれーー!!」


残りの敵兵は後ろに下がる、

その秒瞬!


「えっ!!!!!!」

と、敵兵が驚いた。

眼前に迫る黒い塊!!

投げ付けられるキコルの遺体!!!

避ける間も無く、ぶつかり、ミンチの様に飛び散った兵士

彼が最後に見た光景は、哀れな上司の焦げた顔であった。


「あ…慌てるな!たかが蛮族だ!魔法で一気に畳み掛けろ!!」

数人の兵士が腕を前方に構え、一斉に魔法陣を展開させる

「放て!【魔力(マジック)(アロー)】」


光りの弾幕がオグナを襲う。

大気が震え強烈な閃光と、けたたましい爆発音が辺りを包む。


しかし!しかし!


まるで何事も無いようにオグナが姿を現すと、

猛然と敵兵目掛けて走り出す!!

まるで筋肉の火砕流!迫る壁となって敵兵に向かって行く!


「嘘だーーーーーーー!!!!!!!」

戦意喪失、幾人かは走り出し、

また幾人かは腰を抜かし手足をバタつかせる。

さぁ今から逃げようと、地面を蹴ったその瞬間!


オグナが敵兵の中を走り抜けた。


そう!

単純にただ走り抜けた。

"走り抜ける"ただそれだけであったが、

全速力で走る戦車。その車体がほんの少し擦っただけで、人や建物が粉微塵になる様に、触れた敵兵達は辺りに吹き飛び無残な最後を迎えた。


あまりの出来事に声も出ない、少女と神官。

目の前に、現れた救世主!


朝日に照らされ、そびえ立つ筋肉の巨塔!

炎に焼かれ、焼け落ちてた服が煤へと変わる!!

一糸まとわぬ、雄々しい姿!!


後にイスリールの王女

エレナ・リズ・イスリールは、この時の様子をこう語る


「あの姿は、セクハラでした」と




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