その6
「やれテメェら!!!!」
ドカン!と轟音が鳴り響く!
赤黒い爆煙を立ち上らせ、街の北門が爆破する!
ー キャ〜〜!!!!
ー 逃げろぉお!!!
ー 襲撃だ〜!!
街中に溢れる悲鳴
40人を超える盗賊団が波の如く押し寄せる!
「かかれーーー!!!」
倍の数の冒険者と警備兵がその波を押さえてる!
方々の至る所から、火の手が上がる!
戦いの中、揉みくちゃに人々が、ぶつかり合う!
飛び交う弓矢と投擲物の雨の中…悠然とやって来る盗賊頭!
千本首・四つ腕のシシカバ!!!
手にした二振りの半月刀【無骨】と【蛮骨】が怪しく光る
身体強化の魔法が、エンチャントされた半月刀は、
豆腐の様に障害物を切り割き、撫でる様に人を断つ
男が前に進む度、一つ、また一つと無惨な遺体が増えて行く。
顔の返り血をペロリと舐め
「いい夜だ…!」
男は醜悪な笑顔を見せる。
〜 街の西門付近 〜
「ちっ!キリがねぇ!!」
矢を放ちながら後退するのはニック!
「こいつら!」
相手の剣を絡め取り、一刀を浴びせるアルフレッド!
倒れた盗賊の首筋に、剣を突き立て確実に息の根を止める!!
「やりますね…憲兵崩れでしょうか?皆、腕があります」
「だろうな!冒険者達は良いとしても、警備兵の実力じゃ押し切られちまう」
矢を逆手に持ち盗賊の脳天に突き刺すニック
すると、その後ろ!
「ニックさん!!!」
「チッ」っとニックが、身体を左に捻りながら矢を構える!
ービキッ!!!!!!!
鋭い痛みにニックの顔を歪み。左肩からジワリと血が広がる!開いた傷口の激痛、腕に力が入らない!!!
(クソったれ!!こんな所で!)
ー 大地魔法【土の要塞】
瞬間!
ニックの目の前に土の盾が現れる!!
血がバシャっと飛び散り!盗賊の押し潰れた顎が鼻先までめり込んでいる!
振り返り見るニックとアルフレッド!
「間に合ったのであるな!!!」
聞き覚えのある声と見知った顔に、驚く2人の顔!
「ジルガさん!」
「オッサン!!」
驚く2人のその間!!!ビュンと一陣!突風がすり抜ける!!
ーバチャ!!!!!!!
と、水風船が割れた様な打撃音!
飛び掛かろうした盗賊が、空中で絶命している!
突風の正体はオグナだ!!
手した棒っきれが、同時3人の盗賊を仕留めている!
「オグナさんも!どうしてここに?!」
駆け付けた仲間の登場に、
頭の整理が追いつかないアルフレッド達
「アルフレッドさ〜〜ん!!ニックさ〜〜〜ん!!」
手を振って駆け寄って来る、よぼよぼの盗賊!
「何だこいつ」
矢を構えるニック!
「オグナさん下がって!!」
剣を振りかざすアルフレッド
「ストップ!ストップ!ストップーーー!!」
慌てて止めに入ったのはオグナだ!
そのまま飛びつく、よぼよぼの盗賊!!
たまらず、尻もちを着く3人!
「イテテテテ!」
ぶつけた腰や頭に手を当てる一同
「良かった〜無事だったんですね!」
被った皮を脱ぎ捨てて、女性の顔が現れた!
血みどろではあるが、2人にはそれが誰かはっきりと解る!
「コーラ様!!」
2人を強く抱くシスター・コーラ
ジルガも、纏っていた盗賊の服を脱ぎなら
皆の元へ合流する。
「どうやって!ここに?」
「馬もねぇのに!しかも何で海の方から?」
「オグナ殿の機転のおかげですな!」
よく見ると皆服が濡れている!
「川を下って来ました」
「川を?」
「昨日の大雨で水量が増えた川を下りました」
「マジかよ!」
「馬車の荷台を船にして郷の皆様と海まで出たんですよ!」
「成る程それで海から…」
「で、何で嬢ちゃんは、そんな被り物を?」
「川までの道中に奴らに見つかると面倒ですから、変装をしていました。馬より速く全員で移動するには、それしかありませんでしたからね!」
「無茶するぜオメェら」
「無茶の甲斐があったのであるな!」
笑みが溢れる5人
「それはいいけどよ……嬢ちゃん…鼻から何か出てるぜ」
顔を赤くしながら、鼻に塗った軟膏を手で拭うシスター。
「何でもありません!コレは…!!」
ふと、ニックの肩に目を止めるシスター
「【癒しの光】」
ニックの開いた傷口を、コーラの魔法が優しく包む
ホっとするような魔法の輝きが、みるみる傷口を治療する。
「ニックさんも無茶をしてくれたのですね。」
「さぁな!」
ニヒルな笑みがニックに戻る
「さて!全員揃いましたし!」
立ち上がるオグナ達
「いっちょ!ハデにやりますか!」
「ここからが本番ですね!」
「拙僧の斧槍が、千本首に届くかどうか!」
「わ、私も!戦います!」
「回復は、任せたぜぇお嬢ちゃん!」
アルフレッドの激が飛ぶ!!!
「さぁ行きましょう!反撃開始です!!」
〜町の中央広場〜
襲撃開始から、1時間が経過しようしていた。
火は、町の三分の一にまで広がり、戦況は盗賊団に傾いてる。中央広場のど真ん中で、ドカリと座して、酒を煽っているのは盗賊頭の千本首だ。
「ガハハハハ!楽しいなぁ…おい!」
千本首は横には、縛られてたサッシ町長の姿がある
「どうだい?自分の街が燃えるのは?ええ?!ガハハハハ」
高笑いする千本首…すると。
ー うわー!!!
ー とまれ!!
ー ぎゃー!
手下の異変に、ピクリと眉を上げる千本首。
目を向けた先に、捉えたのは眼前の矢尻!!!
逡巡も許さぬ時間の中、迫る豪弓をいとも容易くパンと払う!
「なんだぁ…テメェら?」
炎の中から敵を蹴散らし姿を現わす5人組
「か、頭ぁ…」
「解ってる…テメェら手ェ出すな!コイツらは俺の獲物だ」
立ち上がり、千本首は威丈高に笑う。
「死んどけよ!弓技【痛みの雨】」
ニックの放つ矢は、16本の軌跡を描いて飛翔する
「舐められたもんだ…」
フッと素早く振られる腕!16本の軌跡は、宙で消失する!
あまりの速く振られた腕先は、一瞬消えたかのように見える
「ヌルい!ヌルい!俺に飛び道具なんぞ効かねぇなぁ」
「おいおい!マジかよ…」
「まずは、名を聞こうか?」
「言ったところで、意味ないだろ!?」
オグナの口調に、僅かな怒気が感じらる。
「お!そりゃそうか!」
火花が飛びそう視線を交わし合い、
オグナと千本首の距離が、にわかに近づいていく!
しかし、そこを割るように!
「拙僧は心斬斧槍流のジルガ!!千本首!四つ腕のシシカバ!この斧槍に見覚えはないか!?30年前貴様が殺した我が師匠の斧槍だ!!」
ジルガの斧槍を構える
「知らなねぇなぁ…」
「そうか!ならば……死ねぇい!!!」
飛びかかったジルガ!その渾身の一振り!!
「いい重さだ…!」
コレを難なく止める盗賊頭!
止められてもなお、ガジルの斧槍は、円を描くように追撃を行う!!ぶつかり合う刃物が火花を飛ばす!
「遅せぇ!!」
ー『死』ー
ジルガの脳裏にその言葉がよぎった、瞬間!
ギンッ!!!!っと強烈な金属音
「やるな兄ィちゃん」
オグナの棒が半月刀を止めている!
ジルガの首にツーっと血が垂れる、オグナの助けが無ければと、ゾッと汗が噴き出してくる。
「後は、俺がやります」
「うむ…任せたのであるオグナ殿」
「オメェが本命か?」
「さぁな!」
「ムカつく顔だ!」
ー ボコッ!
と響く鈍い音!
千本首の顔、曲がった鼻から血が滴る
「な!」
焦りの色が浮かぶ千本首!
気付けば自身の体は、10メートルほど殴り飛ばされている。
(硬いな…コイツ……そうかコイツも…)
千本首の、硬さに少し驚くオグナ。
頭の突然の流血に、観ていた手下どもが驚きの声を上げる。
「本気で来いよ。」
「ふふふ!後悔してもしらねぇぞ!」
フッと千本首の雰囲気が変わる。
「テメェら!巻き込まれねぇ様に気いつけろ!」
言うと同時、全身に力を込める
「うぉおおおおおおおおおおおお!!」
ー やっちまえ!!!
ー 本気の頭に勝てるやつなんていねぇ
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
雄叫びと共に千本首の筋肉が盛り上がっていく!
首は太く!胸板は分厚く!腕は木の幹の様だ
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ボコボコと筋肉が膨張し、体高がグググと増えていく!
皆が見上げる肉の壁!まさしくその姿は《バーサーカー》だ!
鼓膜をつん裂く咆哮をあげながら、
猛烈な勢いで突進してくる千本首!!!!
手にした巨大な半月刀は、ナイフの様に小さく見える!
ジルガとの戦いよりも素早く振られて半月刀が、無数の鋭い切れ込みを地面に刻む!刃の残像がベールの様に千本首を包む!
そのあまりに早い腕さばきで、常人には手が四本に見える。
ー 出た!
ー 四つ腕だ!!
ー よ!待ってました!
っと声がかかる!
その斬撃速度は凄まじい!
ズバババと!地面を切り裂きながらオグナへと向かう千本首!
ドカン!と一発、衝撃音
千本首の土手っ腹!!!
グリっと!オグナの拳が!これでもかもと相手にめり込んでいる!するとそのまま腕を突き上げて、浮き上がった千本首を!
今度は地面に目掛け、バーンと!背中から叩きつけた!!!!
千本首を中心に地面にひび割れが走る!!!
「それぐらいの変身に時間かけ過ぎだ!バーカ!」
ピクリもとしない、千本首。
数秒の沈黙の後、
怯えたならず者達の悲鳴が聞こえる!
ー頭が!
ー頭がやられちまった!
ー嘘だ〜!
蜘蛛の子を散らして逃げる残党達!
それを追う警護兵と冒険者達
駆け寄ってくるコーラ 一行!
「やりましたね!」
「さすがはオグナ殿である」
「ワンパンって、バケモンかテメェは」
「でも、私達の勝利です」
山向こうの空が、色付き始める
間も無く夜が、明ける。




