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その5

風雲急を告げるリック・ケイト!


「それは誠か!!」


報を受けたのは、リック・ケイトの町長、サース・サッシ


「すぐさま冒険者組合に使いを送れ!ギルド長をここに!」


サースの顔色が、事の逼迫差を物語っている。

息も絶え絶えのアルフレッドとニックの姿がある


「…それでは私達はこれで…」


一礼し部屋を去ろうとするアルフレッドに


「ま、待たれよ!そんな体でどこに!!」


泥まみれの二人、その体は所々に血が滲んでいる。

見ればニックの左肩には、深々と矢が刺さっており、野盗に発見され攻撃を受けながらも何とか、たどり着いた事が伺える。


「郷に…仲間を残しております、戻らねばなりません。」


「待ちたまえ!!来た道を戻るなど、みすみす死にに行くようなものだ!!!」


「でも!急がねば…いつまた郷が盗賊に襲われるか!!」


「だからこそ待つんだ!!!!まずは、2人とも傷の手当てをしなさい!冒険者組合と街の警備兵から数人集めて、君達と郷へ向かわせる、焦る気持ちは解る…解るが少し待ってくれ!」


言い返そうとするアルフレッドの肩をニックが叩く

「死んじゃ意味がねぇ」


わかったと、頭を下げてるアルフレッド。


(…コーラ様…どうかご無事で)



〜盗賊・虎狐の根城〜


ガシャン!とテーブルが吹っ飛ぶ。

殴られた男の顎は…砕けてしまっているのか、鼻と口からぼたぼたと大量出血している。


「"逃げられました" じゃね!クソボケが!」


大きな器で、ぶどう酒をかっ喰らう男

虎狐の頭領・千本首 四つ腕のシシカバ


虎柄の腰ミノに、白髪まじりのボサボサの頭髪、そして鋭い眼光の厳しい顔付き、伸びた無精髭に、刻まれた古傷、人間というよりもさながら鬼や熊だと言われた方がしっくり来る風体だ


「チッ…こうなりゃ、しょうがねぇ…今から…やるか」


苛立ちを隠そうともせず、男がむくりと立ち上がる。


「テメェら良く聞け!!バカのせいで予定変更だ!街の連中が準備終える前に叩く!今夜!俺達がリック・ケイトを頂く!いいか!!全部奪って!全員殺せ!!!!」


うぉおお!!と下品な歓声があがる


その盛り上がりに水を刺すように男が1人飛び込んでくる


「頭!全滅だ!…全滅させられた!」

「何ぃい?」


たまらず、イラついた返答をする頭領


「はぁ…はぁはぁ…念の為、郷に向かわせた10人…全員やられちまった…!!」


「ちっ!情けぇ!!…………まぁいい!もう郷はほっとけ…先に街ぃ叩くぞ」


酒をグイッと飲み干して


「テメェら、情けねぇ姿ぁ見せてみろ?!そいつみてぇにブッ殺すからな!!!!」


すでに、先程殴られた男は事切れている。

身震いと同時、手下どもの声が「へい!!」と揃う




〜焼けた郷にて〜



「オグナ殿の強さには、驚かされてばかりであるな」

「いえ、ジルガさんがコーラさんや皆さんを守って下さるので、俺が無茶出来るんですよ」


アルフレッドとニックが郷を出てから数刻後、何人かの盗賊が郷へと現れていた。おそらく偵察のつもりだったのだろうが、郷に残っていたオグナとジルガと交戦し、あっと言う間に討ち倒されていた。


「二人は…無事、着けたでしょうか?」

「うむ、あやつらが戻って来た事から、発見されたのはまず間違いないのである。」

「そうなると、いよいよ街が危ないですね。奴らも、街の準備が整う前に決着を付けたいでしょうから」


「私達も向かいましょう…」

声に、オグナ達が目を向ける。


「コーラ殿!」

すかさず走り寄るジルガ!

よろよろと懸命に歩くシスター・コーラの体を優しく支える。

全快など程遠いコーラの額は、びっしょりと汗に濡れている


「いけません!まだ起き上がるには、早すぎるのである!」


「私なら、大丈夫です…私達も街へ…」


その言葉が強がりなのは、誰の目にも明らかだ。


「行きましょう!」

「オグナ殿!何をバカな!!」


オグナの発言が信じられず、怒りがジルガの表情に現れる


「行きましょう!!…もしこのまま2人が戻って来るのを待っても、結局、俺たちの目的地はリック・ケイトです。そうなればアルフレッドさん達は盗賊団のいる道を3度も通る事になってしまいます。それならば、我々が街に向かった方がいい!危険な道を通るのが1度で済みます」


「しかし、それでは入れ違いになる可能性も!」


「だから急ぎましょう!!馬の足ならそろそろ街に着いても良い頃のはずだ、だったら彼らが郷に向けて出発する前に、こちらが街に着けばいいのです」


「無理だ!街道を真っ直ぐ進んだとしても半日以上かかってしまう!空でも飛ばない限り到底間に合いますまい!!それに奴らに見つかれば何をされるか!」


「馬車の荷台を使います!上手く行けば数時間で街に行けます!」


「どうやると!?」


地図を広げて作戦を伝えるオグナ


「上手く行ったとして、郷の皆はどうします?また賊どもが戻って来れば確実に皆殺にされてしまいますぞ」


「連れて行きます!」


「連れて行くですと!途中でからなず見つかりますぞ!!」


「えぇ…なので着替えてもらいます。」


オグナの視線の先にある、盗賊の死体


「……しかし」


「やります!」

コーラの返事は力強い


「コーラ殿!!」

「皆で…行きましょう…それが今出来る最善の一手です…」

「…ぐ…承知を」


渋々首を縦に降るジルガ


「そうだ、コーラさんコレを…」

オグナが懐の包みから何やら木の実を取り出す。


「オグナ様……コレは?」

「シドウの村で獲れたヤシの実を、干したものです…さぁ」


オグナが、コーラの口にヤシの実を運ぶ。


「噛んで……コレで少しは、気がハッキリとします」


ごくりとヤシを飲み込むコーラ

初めての味に、ビクっと体が弾ける。

強烈な炭酸水を飲んだかの様な刺激が食道から頭に走る、甘過ぎる果肉は、通過した喉を焼く!それに加え酸味も鋭く、口の中で唾液の洪水を引き起こす。


「うッ!…効きますねコレ!」

劇薬の如く濃厚な甘味と酸味のダブルパンチに、思わず目を丸くしてしまう。しかし、頭が冴えたせいか、不思議と体が楽になった様に思える。



「郷の皆さんを呼んで来ます。準備が出来たらすぐに出発です。コーラさん次は、鼻にコレを」


「えっとコチラは?」


「傷治しの軟膏です」


「軟膏」


「鼻の穴詰め下さい。」


「えっ?鼻に?」


「はい!血の匂いを少しでも緩和出来るようにです。今から死体の服を着てもらいますので、それにコーラさんは女性なので顔が目立ち過ぎてしまいます、なので顔を隠すため、剥いだ生皮を被って頂く必要があります。」


「なっ!何もそこまで!」

と慌てるジルガを制する様に


「やります!」


と、二つ返事で軟膏を鼻に詰めるシスター・コーラ。

ハッカやミントに似た香草が練られているのか、途端に気管がスウスウとして眼球にもその爽涼を感じる。


「びゅんびべびばびば!《準備出来ました!》」


コーラの目は力強い!


「…いや」


少し言葉を詰ませるオグナ


「ずいぶん…どっさり使いましたね」


と少し困惑した彼の視線


「…」


鼻から軟膏が溢れる自分の"顔" それが、想像出来たのか耳まで

顔が赤くなるシスター・コーラ。


「びゃあ!びゅびばびょう《さぁ!行きましょう》」



〜数時間後・リック・ケイト〜


ー カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!


街中に鳴り響く半鐘!


ー カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!


「クソ!もう来たか!」

治療が終わったばかりのニックに


「郷は大丈夫でしょうか?」

言うと同時、弓を渡すアルフレッド


「オッサン達を信じるしかねぇよ!」

「ですね何とか隙を見て郷に向かいましょう!」


命がけの夜が始まる




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