表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/21

【振り返り】西新宿エリア崩落

<無茶しやがって>

<命がもったいない>


 そんなコメントが流れるなか、


 イビーッ!

 パオーッ!

 

 イビルアイズとアエロファンテが飛んできて、舞い上がった粉塵を拭き散らして夢姫ぽるるの姿を探します。


<かわいいなおい>

<イビルアイがかわいいとは知らなかったぜ>

<しかしもうぽるネキは……>

<せつねぇ>

<いや、従魔がまだいるってことはブラックアウトはしてないはず>


 イビッ!

 パオッ!


 イビルアイの声を受けたアエロファンテが、瓦礫の下から夢姫ぽるるを救い出そうとします。


「夢姫ぽるる、大健闘でしたが惜しくも時間切れ!」

「西新宿エリア、崩落フォールダウン!」


 ブザーの音が高く響いて、夢姫ぽるるとフルリム・ウェリントンを飲み込んだ瓦礫の底が抜けるように崩れ、崩落を開始します。


<メガミ様!>

<ノットメガネ!>

<ぽるネキ!>

<無茶しやがって>

<ファンクラブできたら入会するからな(T_T)>

<真湘様!?>

<巻き込まれていませんか? 心配です 9,393PP>


 西新宿エリアが崩れ落ちて行き、残ったのは諦めきれずに飛び続けるイビルアイとアエロファンテの姿。

 それと、得体のしれない巨大な木の根。

 極道アイドルテイマー、夢姫ぽるるがほぼ裸で引っかかっていました。


「はやく助けてあげないと、フォールアウトになっちゃいますよw」


 イビルアイとアエロファンテにそう言ったのは、やはり木の根の上に乗った金髪ツインテールの少女、若良瀬真湘でした。謎の木の根は西新宿エリアに隣接する大ガードエリアに突然現れた巨木から突き出しています。


 パオ!

 イビ!


 慌てた二匹が夢姫ぽるるを救出して大ガードエリアに避難すると、若良瀬真湘も木の根を渡って移動します。


「夢姫ぽるる生存!」

「この木の根は若良瀬真湘の仕業のようです。彼女のクラス構成は、魔性の女(エンチャントレス)植物使い(プラントマスター)経営者(エグゼクティブ)となっています」


<信者がやたら草生やすと思ったらそういうことかよ>

<そのとおりw>

<夢姫ぽるるがブラックアウトしてないのも真湘様のおかげでしょうw 9,393PP>

<真湘様のがんばれw がんばれwには凄まじい支援効果がありますからなw 9,393PP>

<すげぇのはわかったが草はやめろ>


 若良瀬真湘からの支援効果のおかげで、自爆によるブラックアウトを紙一重で回避できたようです。


「現時刻をもって西新宿エリアは完全崩落」

「現時点の残存戦力は、脱出サイド13名、ヒーローサイド3名となります」


 皆頃シスターズのアナウンスと共に、配信画面に新しいデータが表示されます。


1 イーアル排骨

 残存メンバー0(脱落)

2 太陽天隊サンダルフォン

 残存メンバー0(脱落)

3 レイヤーブロス

 残存メンバー0(脱落)

4 ED3Z

 残存メンバー1

5 東京冒険者学苑カルタ部

 残存メンバー0(脱落) 

6 パーリーピーポーズ

 残存メンバー3 

7 めすがきっさ雑魚杉

 残存メンバー2

8 PORURU

 残存メンバー3

9 IRK

 残存メンバー3

 

王司池照

 撃破数 2

フルリム・ウェリントン

 撃破数 11

ゴーシュ駒人

 撃破数 2


<ヒーローサイド3名?>

<脱落表示なし……>

<メ神様……健在?>

<メガネ!>

<YEAH! MEGANE!>

<眼鏡の栄光ここにあり!>

<讃えよ眼鏡>

<イエスメガネ! ゴッドメガネ!>

<メガネフォーエバー!>

<マジか……>

<まぁ、そうだよなぁ……>

<フルリム・ウェリントンがヤクザの腹マイトで沈むかってぇと、さすがに……>


 そしてフルリム・ウェリントンが再び姿を現します。眼鏡蛇の杖に横座りして飛んできた光学聖女が、夢姫ぽるるを乗せたアエロファンテの前に降りたちます。目に見える範囲では、大きなダメージを受けた様子はありません。


 パオッ!

 イビッ!


 威嚇の声をあげるアエロファンテとイビルアイズですが、フルリム・ウェリントンのほうに攻撃の意思はなかったようです。


「心配しないで、今日はもう降りる」


 そう言ったフルリム・ウェリントンはアイテムボックスからメタルフレームの眼鏡を取り出し、イビルアイとアエロファンテの前に差し出しました。


「眼鏡を渡したいだけ、じす眼鏡いずぷれぜんとふぉーゆあますたー、おけー?」


<インテリ系不思議キャラと見せて静かにアホの子なのか>

<浅はかなことを言うな>

<興味関心のすべてが眼鏡に偏っているだけだ>


「自動回復の効果がある健康眼鏡、今のあなた達の主人にぴったり」

「通じてないですよ、全然w」


 アエロファンテににじりよるものの、じりじりと後退されていくフルリム・ウェリントンに若良瀬真湘が呆れた様子で言いました。


「渡してくださいw」


 フルリム・ウェリントンからメガネを受け取った若良瀬真湘はプラントマスターのスキルで操った木の根を足場に高度をあげ、アエロファンテの背中の夢姫ぽるるの顔にかけさせました。

 フルリム・ウェリントンの言葉通り自動回復効果が発動し、ブラックアウト寸前の状態で気絶している夢姫ぽるるのバイタルを回復させはじめました。


「調整が必要」

「近づいちゃだめでーすw 怖がられてるって自覚くらいできないんですかw 信者に全肯定されすぎて社会性雑魚なんですかw」

「そんなひどいことはじめて言われた」

「怒っちゃいましたかw」


 挑発的に笑う若良瀬真湘。試合後のインタビューによると、一応喧嘩を売るつもりだったそうですが、フルリム・ウェリントンには通用しなかったようです。


「わからない。少しどきどきした。興味深い、もう少し」


<えええええええ……>

<それ以上いけない>

<ここで目覚めか>

<メ神様が変な性癖に落ちた>

<リムぽる、若ぽると見せてここでリム若の可能性がキマシタワー定礎>

<定礎すな>

<新しい雑魚友の誕生を祝福して 49,393PP>


「ここから先の罵倒は有料でーす。続きがほしかったらお店のほうへw」

「わかった」


 淡々とした口調でいったフルリム・ウェリントンは「じゃあ、そろそろサレンダーするけれどいい?」と確認しました。


「戦いたいなら相手をするけど」

「もう降りちゃうんですかw」

「今の対戦でインスピレーションが湧いた。オシャレなインテリヤクザ眼鏡。イメージが薄れる前に作業に入りたい」

「そうですか、お好きにどうぞw」

「戦わなくていい?」

「そんなに戦いたいんですかw」

「どちらでもいいけれど、そっちは戦いたそうに見える」


 淡々というフルリム・ウェリントンに、若良瀬真湘は皮肉っぽい表情で「そうですねw」と応じました。


「本音を言うとそうなんですけど、まだひとりチームメイトが残っていますから、 ここで無理に戦ってひとりにするわけにも行きませんw」


<真湘様は慈愛に満ちた大天使w 9,393PP>

<芽菅キヨさんをMGBで消し飛ばされたことが腹に据え兼ねたのでしょうw 10,093P>

<芽菅キヨさんを守れなかった自分自身のこともw 49,393PP>

<しかしまだ、姉様つつむさんもいますからね、ご自分を抑えているのでしょうw 29,393PP>


 若良瀬真湘自身は具体的な内心のようなものを語ることはありませんでしたが、『有識者の解釈』によるとそういうことのようです。

 解釈は解釈に過ぎませんので、真実がどこにあったのかはわかりませんが。


「わかった、グッバイメガネ。サレンダー」


 フルリム・ウェリントンはあっさりと試合放棄サレンダーを宣言し、フィールドを去ってゆきました。


<バイバイメガネ!>

<グッドメガネ!>

<敗因、メ神様のムラッ気>

<それが平常運転>

<あのムラッ気がなきゃ普通にPOW5,000台行きそうなんだが>

<しかしあのムラッ気こそが魅力である>

<メガネフォーエバー!>

<メガネ! メガネ! メガネ!>

<メガネ信者うるせぇなぁ>


「フルリム・ウェリントンがサレンダーを宣言!」

「もともとサレンダー率の高い選手ですが、今回は夢姫ぽるるの奮戦の賜物と評価したいと思います」

「ナイスヤクザ」


 そんなコメントと実況の中。夢姫ぽるるが目を覚まします。謎の眼鏡に気づいて「……なんじゃこりゃ」と呟きました。


「外しちゃダメですよ、自動回復効果があるそうですw」

「……フルリム・ウェリントン?」

「はい、インスピレーションが湧いたとか言ってサレンダーしていきましたけどw」

「……勝ち逃げかよクソが」


 舌打ちをしつつ、身を起こした夢姫ぽるるは、アエロファンテの鼻とイビルアイの頭を撫でました。


「お姉さんがざこなんだからしょうがないじゃないですかw」

「あぁ? もっぺん言って……いや、今回はいいわ」

「いいんですかw」

「フルリム・ウェリントンとやってるとき、あんた後ろからバフとか牽制入れてたでしょ、アレなかったらもっと前の眼鏡砲で普通に落ちてたわ」

「ちょうどいいところに鉄砲玉が飛んでたからバフ盛ってみただけですw」

「煽らねぇと死ぬ魚かなんかかよ」


 夢姫ぽるるは溜息をつきました。


<これが若ぽる>

<続けたまえ>

<雑魚友的にいいのかこれ>

<要審議w 19,393PP>

<これもまたよしw 39,393PP>

<幸せならばOKですw 9,393PP>

<とりあえずキマシタワー定礎しておくか>

<せんでいい>


 その後、若良瀬真湘に『自爆の結果ほぼ全裸(眼鏡)』だと指摘された夢姫ぽるるが、バトルフロア支給の『小豆色のジャージ』を装備するという出来事があったのですが、今回は割愛させていただきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ