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【振り返り】マッチアップ

「フルリム・ウェリントンの攻撃をしのいだ冒険者はもう二人!」

「都庁エリア、めすがきっさ雑魚杉のリーダー、若良瀬真湘!」

「メスガキステップなる謎の歩法でMGBの焦点をずらして回避、そのままプークスクスと笑いながら離脱……いえ、若良瀬選手も西新宿ルートを選択!」

「夢姫ぽるる、若良瀬真湘の両選手が光学聖女、フルリム・ウェリントンに勝負を仕掛ける構図!」

「ですが、フルリム・ウェリントンの光学結界は健在!」

「いつ二射目が来てもおかしくない状況です」


 そんな実況に割り込むタイミングで都庁エリアの上空に光源魔法アポロの光球と同等のサイズ、同じ数の青い光の球が現れました。

 サイズは同じですが、属性は別。

 熱ではなく、電気エネルギーでできた雷球でした。


「東京都庁上空に超高出力の雷撃魔法が発動!」

「術者は三人目の生存者! アーマード・ウィッチ!」

「六発の雷球を一斉投射!」


 六つの球雷が空をかけ、光源魔法アポロの六つの光球と衝突、閃光、轟音とともに消し飛ばしました。


「光源魔法アポロ全消滅!」

「光学結界を機能停止に追い込む!」

「恐るべしアーマード・ウィッチ!」


<メ神様の光が!>

<やっぱりロボだろあれ>

<都庁の上にホバリングしとらんか>

<本当に中に誰かいるんだろうな>

<いやさすがに人がいないとあの魔力は出ないだろ>


 足からジェット噴射をし、都庁の上に浮くアーマード・ウィッチの姿に、チャット欄は混乱気味です。


「これで三対一でしょうか。アーマード・ウィッチ、若良瀬真湘、夢姫ぽるる。好勝負が期待できそうです」


 皆頃シエルはそう言いましたが、結果から言うとそうはなりませんでした。


 オオオオオン!


 高空に陣取っていた大型フィールドモンスター、陰龍インロン陽龍ヤンロンの二匹が降下を開始、都庁上空の陣取ったアーマード・ウィッチ、新宿三丁目から移動を開始したゴーシュ駒人へ迫って行きます。

 陰龍インロンは脱出側、陽龍ヤンロンはヒーロー側の最大戦力の前に出現し、その行動を妨害する仕様になっているそうです。


 そして私の前の王司池照も動き出します。


「僕らもそろそろはじめようか」


 王司池照の手に、茨のような植物と白い花が巻き付いたレイピアが現れました。


「愛夢剣ラブスローン、この剣の棘には触れたものを眠らせる魔力がある。試合が終わるまで、優しい夢を見ているといい」


 メェ (愛夢剣……)

 メエェ(愛の茨……)

 メメェ(イケメンを名乗る異常者……)


 バロメッツたちから手厳しい評価が下ります。 

 王司池照はマイペースに続けます。


「目が覚めたら、今度は僕が夢を見せてあげる。君の心に永遠に輝く一夜の夢をね。チュッ☆」


 幻影の光のついた投げキッスをされました。

 反応に困る挙動が続いていますが、トップランカーという肩書は間違いではないようです。

 仕掛けるタイミングも、後退するタイミングも掴めません。


<トゥンク♡>

<これでトゥンクできるのすげぇわ>

<これ画面越しだからいいけど眼の前に来たら恐いって>

<怪異の類だわもうこれ>

<都市伝説、世迷いイケメン>

<やだこのイケメン世迷い言しかいってない>

 

星夜せいや、スター☆ステップ」


 王司池照が踏み込んできます。

 星屑のような光の粒子を振りまきながら軽やかに加速。星屑の意味はわかりませんが、無駄のない足さばきと凄まじい加速力で私の視界をすり抜け、背後に回った王司池照は、私の首筋に愛夢剣の柄を当て、意識を刈り取りにかかります。

 初めて経験する速度域。

 念の為に獅子王樹のキャラメルナッツタルトをお腹に入れて、ステータス異常耐性(大)をつけていなければ普通に眠らされていたはずです。


「おやすみ☆」


 効いていないとは思わなかったのでしょう。

 決め台詞を言った王司池照の鳩尾に、逆手に握ったシャークグリフのストックを撃ち込みます。


「……ぐえあ!」


 シャークグリフを反転させて銃剣で突く余裕はなかったので、ストックでの打撃となりましたが、大星石のストレンクス(極大)の効果が乗っているので、通常の打撃の十倍くらいまで威力が増強されています。

 星屑を散らしながら、王司池照は吹っ飛んでゆきます。ですが、さすがというべきでしょうか。滑らかな身体操作で綺麗に姿勢を立て直します。

 ただ、嘔吐感のほうはどうしようもなかったようです。


「ぐ、ぐえっ……い、いけない! いけないプリンセス! こんなところを殴ってもなにも出てこない、出ても配信に乗せちゃいけない……ちょ、ちょっと待って、ストップ! ちょっとタンマッ!」


 口元をおさえた王司池照は建物の影に姿を消しました。

 

「王司池照がストップを要請」

「一旦カメラを止めましょう」

「イケメン的非殺傷(ノンリーサル)武器ウェポンのラブソーンが裏目に出た」

「効かない相手には隙ができるだけですからねアレ」


<星屑吐いたか>

<カウンターえげつなさすぎる>

<推せる>


 構わず追い打ちをかけようかと思いましたが、もしかしたら何かの罠かも知れません。

 わずかに躊躇をすると、


「待つわけがねぇだろうが一般的に考えて!」


 アンモナイオが円柱型ボディから小さなアンモナイト型の飛行ドローンを八基射出、王司池照に追撃をしかけます。

 

 ビビビビビビビビ!


 小さな触手からの魔力ビームの集中砲火を浴びた王司池照は、


「アチッ! アチチッ! コラ! やめろ! 許さないぞこのクソイカ! おぼえてろよーッ!」


 そんな悲鳴をあげながらドローンを破壊し、離脱してゆきました。


「アンモナイトだろうが一般的に考えて!」


 アンモナイオが怒りの声をあげる一方、配信のチャット欄では。


<ふぅ>

<いい池虐だった>

<イケメンアグレッションが満たされるぜ>


 そんなコメントが流れていたそうです。

 王司池照にはなんだかおかしな固定ファンがついているようです。


 メェ (キャラクター性はさておき)

 メエェ(さすがの頑強さというべきか)

 メメェ(極大補正の乗った打撃を受けてあの程度で済むか)


「そうですね」


 デビルオマールやテスタロッサくらいなら仕留められる威力になっていたはずですが、大騒ぎで逃げていく余裕を残していました。

 とはいえ一応、最初の山場は切り抜けたでしょうか。

 無線のスイッチを入れ、

 

「王司池照を後退させました。可能なら状況報告をお願いします」


 夢姫ぽるるとデルタワンに連絡を入れておきます。

 応答が来る前に、


 ズゴゥンッ!


 と轟音が轟き、大型爆弾が炸裂したような暴風と砂埃李、地響きが伝わってきました。

 方角は新宿三丁目から、偽丹にせたんデパートの屋上からビル街の屋上を飛び渡って移動していたゴーシュ駒人の拳が、空中から襲いかかった大型フィールドモンスター陽龍ヤンロンを粉砕、周囲の建物と不運な冒険者二人を巻き込んで消し飛ばした音でした。

 そこから十秒程度の間を置いて、デルタワンから応答がありました。


『こちらデルタワン。現在地は新宿三丁目。今前方でゴーシュ駒人が陽龍ヤンロンを粉砕、そのまま歌舞伎町エリアに入ってミレニアムヒルズの壁を……駆け上って……屋上に到達したでござる……なんともはや……」


 衝撃的光景を直視したせいか、かなり呆けた様子ですが、無事ではあるようです。




 一方、応答のなかった夢姫ぽるるは、西新宿エリアでフルリム・ウェリントンと正対していました。


「夢姫ぽるる、フルリム・ウェリントンと単独マッチアップ!」

「なおここで初回崩落地区が決定しました」

「西新宿エリア! 3分後西新宿エリアが崩落となります!」


 サイレンの音が鳴り、西新宿エリア崩落までの残り時間を表示するカウントダウンステッカーやポスターが、フィールド随所の壁やガードレール、電柱などに浮かび上がります。

 なお、この時点での残存・撃破状況ですが、


1 イーアル排骨

 残存メンバー0(脱落)

2 太陽天隊サンダルフォン

 残存メンバー1

3 レイヤーブロス

 残存メンバー1

4 ED3Z

 残存メンバー1

5 東京冒険者学苑カルタ部

 残存メンバー0(脱落) 

6 パーリーピーポーズ

 残存メンバー3 

7 めすがきっさ雑魚杉

 残存メンバー2

8 PORURU

 残存メンバー3

9 IRK

 残存メンバー3

 

王司池照

 撃破数 0

フルリム・ウェリントン

 撃破数 11

ゴーシュ駒人

 撃破数 2


 となっていました。

 西新宿エリア、都庁エリア、大ガードエリアにいた冒険者はフルリム・ウェリントンの光学結界でほぼ全滅、三丁目エリアにいた二人がゴーシュ駒人と陽龍ヤンロンの戦いに巻き込まれてブラックアウト。

 スコア的にはフルリム・ウェリントンの一人勝ちのペースとなります。


「崩落指定されたけれど、ここで戦うつもり?」


 眼鏡をくいっと動かしたフルリム・ウェリントンは淡々と訊ねます。


「崩落するなら動きながら戦えばいいじゃないですか♡」


 きゃるんとした笑顔とともに、夢姫ぽるるはゴクドーブレードを抜き放ちます。イビルアイは腕に巻き付け、アエロファンテのほうは従魔石に収容しています。


「グッドメガネ。合理的発想。インテリヤクザ風眼鏡をかけるともっと良い」


 そう告げたフルリム・ウェリントンは手にした眼鏡蛇の杖をすっと一振りしました。


 イビッ!


「……ちっ!」


 夢姫ぽるるの従魔イビルアイは人を狂乱状態に陥れる攻撃的な精神干渉能力の他、主人の視界に自身の持つ魔術的な視覚情報を提供する支援的な精神干渉能力を備えています。

 イビルアイの目を通じ、眼鏡蛇の杖の先端から直径一ミリ、長さ百メートルに及ぶ透明なビームが発振されていることに気づいた夢姫ぽるるは大きくジャンプをし、フルリム・ウェリントンの大斬撃をやり過ごします。


「従魔と視界共有、それも素敵なメガネ」


 賛辞を述べ、親指を立てる光学聖女フルリム・ウェリントン。


「メガネメガネうるせぇわクソ……えっ、きゃああああーーーっ!?」


 イビーッ!


 罵声を返そうとした夢姫ぽるるですが、大斬撃で切り崩されたビルが雪崩のように襲いかかり、瓦礫の下敷きにしてしまいました。


「フルリム・ウェリントンの光学大斬撃!」

「夢姫ぽるる、よくかわしましたがそれも計算済みか」

「切り崩された瓦礫の下敷きに!」

「ブラックアウトダメージは受けていないようですが、このままではフォールアウト確実か!」

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