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【振り返り】九組のパーティー

「それではいよいよ、脱出側パーティーの紹介とフィールドエントリーの開始です!」

「まずは抽選枠のパーティー六組から!」


 再び画面が切り替わります。ヒーローのほうは紹介だけでしたが、脱出側は紹介後即フィールドエントリーとなるようです。


「パーティーナンバー1! 合計PP6,277! イーアル排骨パイクー!」

「中華料理人兼槍使いの三人組!」


 最初の六組は一般の参加希望者から抽選で選ばれたパーティーです。

 中華料理の調理服を纏い槍を携えた三人組が紹介され、ゲートの向こうに消えてゆきます。六つのエリアのどこかに、三人バラバラに飛んでいったはずですが、具体的にどこに飛んでいったかはわかりませんでした。

 正式な配信ではちゃんとわかりやすく紹介されていたのですが、出場者向けのチャンネルではそのあたりの情報はわからないようになっていたそうです。


「パーティーナンバー2! 合計PP5,792! 太陽天隊サンダルフォン!」

「往年の戦隊もののオマージュとのことです」


 赤、青、黄色のボディスーツにヘルメット姿の三人がエントリー。


「パーティーナンバー3! レイヤーブロス! 合計POW6,666」

「コスプレ系三兄弟。今回は旧時代の8ビットRPGがモチーフだそうです」


 戦士、魔法剣士、魔法使いの三人組がフィールドに。

 魔法使いは女性に見えますが、三人とも男性のようです。


「パーティーナンバー4! 合計PP4,848! ED3Z!」

「江戸三寿司と読むそうです! 兄弟子と弟弟子二人!」


 和食の調理服と帽子に、巨大な両手剣やハンマー、ランスなどを装備した青年たちがエントリーしてゆきます。


「パーティーナンバー5 合計PP6,899 東京冒険者学苑カルタ部!」

「合計PPでは最高値、バンカラ風味の学生チーム!」


 大正時代風というのでしょうか、学生服に帽子、外套に下駄ばきの男性冒険者三人です。


「パーティーナンバー6! 合計PP5,500! パーリーピーポーズ!」

「名前の通りパリピ三人組」


 うぉっしゃ!

 いきまっしょい!

 ウェーイ!


 陽気な掛け声と共に日焼けした金髪、銀髪の三人組がゲートに入り抽選参加の6パーティーが出揃いました。


「続いて優先出場枠の3パーティーのエントリー!」

「パーティーナンバー7! 合計POW6,741 めすがきっさ雑魚杉ざこすぎ! 視聴者投票でのエントリー!」

「秋葉原エリアでメスガキ喫茶店を経営する同名の冒険者団、めすがきっさ雑魚杉ざこすぎの団長、若良瀬わからせ真湘ましょう率いるメスガキ三人組です」

「リーダー若良瀬真湘個人POWは3,393、パーティー参加枠の中ではトップクラス!」

「人気先行の一言では語れない実力を秘めています!」


 金髪にツインテール、黒髪に着物、ふわりとしたロングヘアの少女三人と『めすがきっさ雑魚杉』というパーティー名が表示されました。

 三人とも年齢は10歳から12歳前後くらいのようです。


 金髪の少女が、若良瀬真湘

 黒髪の少女が、芽菅めすがキヨ

 ロングヘアの少女が、姉様あねさまつつむ


 というそうです。


<おお、最高だ……w 10,000PP>

<尊すぎませんかw>

<これが投票一位だと……>

<おめでとうございます 50,000PP>

<努力が実りましたね 1,000PP>

<がんばってw 30,000PP>

<最高の勝利を! 5,000PP>

<組織票だろうな>

<視聴者全員をわからせwましょうw 500PP>

<ここでスパチャしても届かんぞ>

<ざぁこw 100PP>

<イロモノじゃねぇか>

<ざぁこw 100PP>

<ざぁこw 100PP>

<ざぁこw 100PP>

<ざぁこw 100PP>

<こいつらここをスパチャで埋めようとしてるんか>

<雑魚杉w 666PP>

<ざぁこw 100PP>

<おいこら>

<ざぁこw 100PP>

<メスガキどもに脳を焼かれてやがる……>

<アンデッドかよ……>

<わからせの刻きたれり 50,000PP>

<モデレーター仕事しろ>

<チャット欄がわからせられてんじゃねぇか>


 チャット欄がおかしな様子になっています。

 夢姫ぽるるも少しおかしな様子で、


「ちっ、ぽるる様の前に目立ってんじゃねぇぞクソガキが……」


 などと呟き舌打ちしていました。

 敵愾心を刺激されたようです。

 めすがきっさ雑魚杉の三人がフィールドに入ったあとは、私達の順番です。


 撮影係として待機していた小さなドラゴン型ゴーレムがカメラを構えます。今回の実況配信ではゴーレムカメラやドローンカメラがフィールドの全域に配置され、撮影を行うそうです。


「パーティーナンバー8! 合計POW4,463、PORURU! 皆頃シオンの指名パーティーとなります」

「本日結成されたばかりの新パーティーですが、総合POW5,000から6,000台のパーティーを次々に一蹴し五連勝!」

「バトルフロアのシステムでは数値化のおいつかない実力を秘めていると判断し、緊急オファーを出させていただきました!」


 アイドルとしてのスイッチを入れ、「きゃるぴっ♡」と笑う夢姫ぽるる、その左右にプライバシーキャップをかぶった私と、忍者頭巾とデルタワンの姿が映し出されます。


「こんばんは♡ PORURUです♡ 応援よろしくおねがいしますっ♡」


 夢姫ぽるるが日頃の努力を感じさせるアピールとポージングを決めてゆきます。私はどう動いていいかわからなかったので、夢姫ぽるるの斜め後ろでおとなしくしておきました。デルタワンも同じような方針のようです。


<かわいい>

<あざとい>

<強いんか本当に>

<根性はありそう>

<左右の二人のほうも気になる>

<二人とも匿名か>

<でもどっちも結構かわいい感じがする>

<顔が見たい>

<全員女の子だよな>

<バロメッツに帽子……まさか……うっ……>

<知っているのか>

<いや、なんでもない。推測でいい加減な情報をだしてみんなを混乱させたくない>


 バロメッツが映り込んだ結果、うっすら気づかれてしまったようです。

 ともかくゲートを抜けてエントリー。

 ゲートの先は、


 メェ (新宿駅東口)

 メエェ(新宿駅エリアか)

 メメェ(面白い場所に出たな)


 なお、今回の六つのエリアを、


 ABC

 DEF


 と並べた場合。

 Aが西新宿エリア

 Bが大ゲートエリア

 Cが歌舞伎町エリア(ゴール)

 Dが都庁エリア

 Eが新宿駅エリア

 Fが三丁目エリア


 となります。

 時刻は通常空間と同じ夜ですが、アンデッド災害前の繁華街がモチーフなので、ビルや街灯の光量は眩しいくらいでした。

 フィールドのあちこちにある街頭ディスプレイにはバトルフロアの配信が流れていて、最後のパーティーの紹介をしています。


「それでは最後のパーティー!」

「パーティーナンバー9! 合計POW6,801! IRKアイアールケー!」

「今月初め頃から活動を開始した新パーティーですが、30戦30勝、平均試合時間4分33秒!」

「驚異的な戦績を誇る、本年度最優秀新人パーティー候補です!」


 そんなアナウンスを経て映し出されたのは、


<……ロボ?>

<謎>

<たぶん中に人間が入っていると思いたい>

<真ん中以外は入ってても嫌な気がする>

<IRKってなんだ?>

<インターネット老人会。旧時代のネットインフラだとかネット文化の復旧を目指す技術者集団らしい>


 鋼鉄のとんがり帽子をかぶり、全身鎧を身に付けた魔女風のロボットのようなシルエットの怪人と薄緑色と黄色に光る溶液が入った二本の円柱でした。

 円柱の長さはどちらも二メートルほどで、薄緑の溶液の中にはモササウルスと呼ばれる古代の肉食水棲恐竜をデフォルメしたキャラクター、黄色い溶液の中にはアンモナイトのキャラクターのホログラムが浮かんでいます。

 

「重装甲魔術師、アーマード・ウィッチを二人の電子系冒険者、モササウオとアンモナイオの遠隔操作モジュールが支援する特殊編成パーティーとなります」


<遠隔操作?>

<本人はフィールドに入らないってこと?>

<ありなんかそんなん>


 チャット欄に疑問の声があがりますが、それ以上の説明はありませんでした。

 IRK、というパーティー名と、アーマード・ウィッチ、モササウオ、アンモナイオという名前が表示されると、アーマード・ウィッチは、左右にそびえる二本の円柱を一本ずつ掴み、ゲートに向けて投げ込みました。


「もうちょっと優しく投げて欲しいだろ! 一般的に考えて!」


 そんな声と共に、私の前方に開いたゲートから、黄色い円柱が道路におちてきます。

 円柱ですが、自分で動けないわけではないようで、柱のあちこちに設けられたスロットからタコの足に似た光の触手を伸ばし、着地に成功します。

 私の直近の冒険者は、IRKのアンモナイオとなるようです。

 私の存在に気づいたようです。黄色い薬液の中のアンモナイトのキャラクターが「あ、どうも」と言って、光の触手を上げました。


「IRKのアンモナイオと申します。今日はよろしくお願いします」

「PORURUのPです。よろしくお願いします」


 そんなやり取りをしている間に、薄緑色の円柱モササウオもゲートに投げ込まれてエントリー、最後に歩き出したアーマード・ウィッチがゲートを越えてフィールドに入りました。

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