表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ꮚ・ω・Ꮚメー (パンの耳)  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/21

【振り返り】メイドさん対パン屋さん

「ストップやペナルティがかかっていないのでこの試合ではお咎めなしのようです。相手の攻撃を拒否してお料理ができるだけですし、相手はゾディアックウェポン保持者ですので」


<双星棍お咎めなしのボンクラ環境で空間定義変更はチートだから即BANとはならんか>

<攻撃不能の無敵モード>

<旧時代の裏技みてぇな真似を>


 後方にいたアーマード・ウィッチとアンモナイオも戦闘禁止範囲に入っていましたので、広域破壊洗浄には巻き込まれずに済んでいます。

 代わりに周囲のビルや線路などが押し流され、大災害の様相を呈していますが、今は調理を続けます。

 次に出すのは蟹座の大星石。

 食べられるものではありませんが水洗いをし、バットから切り出した一次発酵済みのパン生地の中に入れ、アンパンのように包みます。


<???>

<一体何を作る気だ?>

<食べられる魔石なんかあったか>

<食い物を作ってるわけじゃなさそうだ>


 次に出したのは銃剣を外したままのシャークグリフ。

 マガジンを外し、チャンバーから弾丸を抜いてから銃口にパン生地を巻き付け、試験管をかぶせるような形に成形します。

 試験管型の生地の先端に大星石入りの生地をくっつけ、針金を巻き付けて固定します。

 発酵・熟成用アイテムボックスをワイヤーフレームモードで使って二次発酵。オーブン・石窯召喚スキルでワイヤーフレーム状のフィールドを生成して焼成します。

 食べるものではないので黒く、固く焼き締めました。

 一応これで完成ですが、もともとレジェンダリーアイテムの大星石を使っているせいか、特別な発光などは起こりませんでした。


「完成、したようですが……」

「どんなメルヘンな代物になるかと思いましたが意外とソリッドというか、小麦でできたセラミックのような雰囲気です」

「さすがに食べるのは無理そうですが」

「ライフルグレネードと同じ仕組みの武器のようです。アルフォンスや水風船の威力を増強していた魔石を銃口部に取り付け、空砲のガス圧で射出する仕組みですね」

「東京最強のメイドさんに対するメカニカルネコミミパン屋さんのアンサーのようですが、果たして通用するか!」


<なんか、通じそうに見えるんだが……>

<ゾディアックウェポンばりの雰囲気がある>

<というかあれ、簡易ゾディアックウェポンだろ>

<なんだそれ>

<ゾディアックウェポンの素材になる最上級魔石を直接礫つぶてとかやじりとか石槍とか石斧みたいな武器にしてぶん殴るプリミティブ運用法>

<うわぁ>

<とんだお料理もあったもんだぜ……>

<ちょっとまって>

<あれをうちこむのはずるい>

<ゾディアック持ちに手心なぞ無用!>

<ぶちこめチョッキン!>


 特に名前はつけていませんが、あえて言うならマンドラゴラ弾でしょうか。

 使った酵母は『マンドラゴラの歌』

 手持ちの酵母の中では一番協力的で、通常の酵母や、ぐぜひかりでは不可能な、複雑、繊細な調整に対応してくれます。

 蟹座にまつわる名前にはしないことにしました。


「仕掛けます」


 調理器具と生地の残りをアイテムボックスに収容。シャークグリフのチャンバーに空砲用カートリッジを装填してセーフティエリアから足を踏み出しました。

 実はセーフティエリア作戦には大きな穴があって、チェインバー池照が普通に入ってくることは阻害できず、そうなるとお互い攻撃のできない睨み合い状態になってしまっていたのですが、さすがにそれは不毛と判断したのか、チェインバー池照は距離を取って待ってくれていました。


「メイドさんとパン屋さんが再び向かい合う!」

「ファーストコンタクトはチェインバー池照の優勢でしたが、ここからの展開は読めません!」


 いきなりマンドラゴラ弾を撃ち込んで決着できれば簡単ですが、正面から普通に撃って当てられる相手ではないでしょう。

 地面を蹴り、距離を詰めに行きました。

 チェインバー池照も慎重策に出るつもりはないようです。

 私が踏み込みたい距離より少しだけ手前、二〇メートルほどの距離を選んだチェインバー池照は双星棍からの暴風と水流を叩きつけ、こちらを叩き潰しにかかります。

『注意力』『観察力』『洞察力』で攻撃の狙いと隙間を読み、すり抜けるように回避すると、そのときにはもう、チェインバー池照は私の側面へと滑り込んでいました。

 最初の対決で大振りの隙を突かれたことを警戒したのか、双星棍竜巻はアイテムボックスに収容しています。

 代わりの武器は、メイドらしく銀色のステーキナイフ。

 ですがそこまでは、計算の範囲内でした。

 事前に動かしておいた銃口でチェインバー池照の胸元を捕捉し、撃発。

 空砲のガス圧で射出されたマンドラゴラ弾が硬化したパン生地を吹き飛ばしながら飛翔します。

 しかしチェインバー池照はぎりぎりのところで体をひねり、胴体への直撃を回避しました。

 狙いを外された蟹座の大星石がとらえたのは、双星棍渦巻を手にした左肩。

 

「片腕持っていった!」


 双星棍渦巻ごと左腕をふき飛ばされたチェインバー池照ですが、表情を変えず後方に飛び下がります。

 強引に切りかかってくれれば双方ゾディアック系武器なしの状態です。覚醒効果で仕留められると思ったのですが、そう簡単に冷静さを欠いてくれないようです。


「チェインバー池照、素早く後退。医療ナースメイドスキルで応急処置!」

「メイドさんとパン屋さんの攻防はまずはパン屋さん優勢か」


<マジかよ……>

<チェインバー様が押されてる?>


 チャット欄に呻きのようなコメントが流れてゆきます。

 片腕をもぎ取られたチェインバー池照ですが、東京大迷宮の仕様で生々しいことにはならず、黒い傷口から粒子が吹き出す程度のビジュアルで収まっています。医療ナースメイドのスキルで粒子の流失を止めると、アイテムボックスの双星棍竜巻を引き抜きました。


「大ダメージのチェインバー池照ですが、ブラックアウトは回避」

「対するP選手に手札は残っているでしょうか」

「切り札と思われた魔石弾はチェインバー池照の腕を飛ばして飛び去っています」


<さすがにこれが限度か>

<簡易ゾディアックウェポンに使える魔石をひとりで二つも三つもってのはさすがに>


 そんな実況とコメントが流れる中。


 メェ (よし!)

 メメェ(確保した!)


 マンドラゴラ弾の発射と同時に帽子とエプロンの姿から元の子羊サイズに戻ったホームズとレストレイドが虹色の粒子を散らして高速移動。

 撃ち放たれた蟹座の大星石、それとチェインバー池照の右腕と一緒に吹っ飛んでいた双星棍渦巻をぶら下げて戻ってきます。


<ああ……>

<なるほど……>

<予備がないなら拾ってくればいいじゃない>

<双星棍までパクってねぇかアレ>

<ヤベーパントワネットかよ>


「バロメッツが魔石を回収!」

「さらに双星棍渦巻も確保!」

「バロメッツの手癖が悪い!」


 ホームズとレストレイドの挙動に気付いたチェインバー池照は双星棍竜巻を振るい、暴風で吹き飛ばそうとしますが、


 メェ (生憎だが、今の我々は)

 メメェ(羊界最速のスピードスター)


 二匹は虹色の粒子を残して超加速。暴風を逃れて大星石と双星棍渦巻を届け、帽子とエプロンの姿に戻ります。

 大星石をアイテムボックスへ戻したところで、チェインバー池照はさらに双星棍竜巻を一閃、暴風を叩きつけて来ます。

 こちらも双星棍渦巻を振るい、水流で迎撃。


「双星棍竜巻の暴風と双星棍渦巻の水流がぶつかり合って相殺!」

「ゾディアックウェポンにゾディアックウェポンをぶつけていく!」


 皆頃シスターズの実況が、どんどんヒートアップしていきます。


<ちょっとまって>

<かってにつかうな>

<オーナー登録とかないのかアレ>

<アイテムボックスに戻せんのか>

<敵対的な相手に掴まれてると無理>

<ゾディアックウェポンのNTRとは斬新な……>


 暴風と水流がぶつかり合って相殺。衝撃波についても双星棍同士で打ち合う分にはキャンセルされるようです。

『洞察力』の効果である程度の使い方は理解できていますが、さすがに完全に使いこなすのは難しいようです。例の渦巻バリアは使えず、蟹座の大星石の水属性補正が乗っても有利は取れませんでした。

 

「今更ですが都庁エリア崩落フォールダウン

「誰も気にしていないと思いますが一応お知らせします」


 そんなアナウンスが流れる中、私とチェインバー池照の戦闘は最終局面に入ります。大ガードエリアと新宿駅エリアの間を動き回り、暴風と水流を撒き散らす黄金の箒二本での殴り合い。


<メイドさんとパン屋さんが箒でしばき合っておる>

<言葉でいうとコミカルだが映像はアルマゲドン>


「チェインバー池照渾身の一撃」

「双星棍渦巻を吹き飛ばす!」


 チェインバー池照は最後の一撃で私の右手から双星棍渦巻を吹き飛ばします。

 実況サイドが興奮した声をあげ、チェインバー池照はかすかに笑うように口元を動かしました。

 勝利ではなく、ミスを悟って漏らした苦笑。

 チェインバー池照の打撃に逆らわず、双星棍渦巻を手放した私は、自前の武器である深淵珊瑚の銃剣バヨネットを繰り出し、再びチェインバー池照の喉元を切り裂きました。


「あっ……」

「えっ……」

 

 皆頃シスターズが息を呑み、チャット欄がわずかに静止。

 そして次の瞬間、チェインバー池照の体は二本の双星棍と共に黒い粒子に変わって消滅しました。

 

 Critical Blackout


 配信画面には、そんな表示がされていました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ