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幽霊サムライ転生~ハラキリから始まる少年冒険譚~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第15話 能力の実験

 カズマは母セイラから赤い色をした果物、リゴーの実を手に、その意図がわからず困惑していた。


「これで実験?」


 カズマは母セイラに聞き返す。


「そう。カズマの能力『霊体化』の可能性を広げる実験」


 セイラは意味ありげに答える。


「可能性……。あ、そういう事か!」


 カズマはようやく母セイラの目的を理解した。


「どういう事?」


 アンは未だ理解出来ずに首を傾げて聞いた。


「僕の『霊体化』の能力は、体の存在を無くし、透明になるものだから、その状態では物が触れないのだけど、じゃあ、このリゴーの実を持ったまま、『霊体化』出来るか試そうって事。──だよね、お母さん?」


「正解!」


 母セイラは察しの良い息子に満足する。


「じゃあ、やるね!」


 カズマは左手にリゴーの実、武器収納から取り出した脇差しを右手にして、躊躇なく脇差しでお腹を刺した。


 その行為にまだ慣れないアンが「きゃっ!」と驚く。


 カズマはそれを『霊体化』した状態で見ていた。


 左手には霊体化したリゴーの実が握られている。


「成功だ!つまり、物を手にした状態で『霊体化』すると、一緒に霊体化するという事でござるか!」


 カズマは成功に興奮してござる口調になった。


 そして、霊体化した状態で喜びのあまり空中で一回転するとアンの背後に回ってから、お腹に刺さっている脇差しを抜いて実体化した。


 そして、


「成功だよ!」


 と、声を上げた。


「きゃっ!──もう、背後に回らないでよ!」


 アンは案の定、カズマのいたずらに驚いて怒るのであった。


「ははは、ごめん」


 カズマは笑って謝ると、母セイラがリゴーの実が満載した袋をカズマに渡そうとした。


 だが六歳のカズマの片手では持てない大きさだったから、目の前の地面に置く。


 カズマはそのリゴーの実の袋を触った状態で、またも『霊体化』した。


 すると、リゴーの実の入った袋は一緒に霊体化しており、カズマの左手に引っ付いた状態で重さは「ゼロ」だ。


「これはもしかして、かなり便利なのでは……?」


 カズマは『霊体化』の無限の可能性を感じた。


 そして、また、実体化して二人に成功を報告するのだが、その際、リゴーの実の入った袋に重さが戻るから、思わず地面に落とす。


「あ!……どうやら、元に戻る時は手にしている物は地面に置いた状態の方が良いみたい」


 カズマは、成功と失敗を同時にやらかして反省するのであった。


「でも、やったじゃない!あの状態で『霊体化』出来るという事は、かなり重いものも挑戦できるんじゃないかしら?」


 母セイラも楽しくなってきたのか目を輝かせてカズマに提案する。


 幼馴染のアンも、


「そこにある丸太に挑戦してみれば?」


 と普通の六歳の子供に持たせるには到底無理と思われる大きさの丸太を指差した。


「挑戦するものが、いきなり大きくなり過ぎな気が……」


 少し呆れるカズマであったが、試しにと丸太に触れると、また『霊体化』してみた。


 すると、重さゼロの大きな丸太が触れていた左手に引っ付いている。


 もちろん動かすのも簡単だ。


 その状態でカズマは浮遊してみたが、問題無い。


 ついでにその丸太を持ったまま、庭から距離を移動して玄関前まで行ってみた。


 移動も簡単だ。


 そこで、丸太を地面に置いてからお腹から刺さった脇差しを抜いて元に戻った。


 母セイラとアンは丸太が玄関前に移動しているのは庭から死角になって一瞬気づかなかったが、よく見ると丸太の端が庭からも見えた。


 そして、玄関の方からカズマがひょっこりと顔を出したので、成功を知ったのであった。


 その後も、実験は続き、家も動かせるかという事で試してみると、駄目であった。


『霊体化』できる重さが限界を超えたのかとも思ったが、触れている柱だけが『霊体化』したところを見ると、家は土台の問題のように思えた。


 リゴーの実のように、袋に入っていると、バラバラにならずに「個」として持てるが、家は「個」という扱いをされなかったのではないか、という事だ。


 カズマはそう考えると、慎重に柱を動かさないよう、『霊体化』を解除するのであった。


 カズマの『霊体化』の実験は続く。


 今度は、移動について試す事にした。


 カズマは『霊体化』している時は基本、浮遊している。


 移動も空を飛んでいる状態だから、それがどのくらいの速度で、どのくらいの距離をどのくらいの高さまで移動が可能なのか実験しておいて損は無いだろう。


 そこで一つ確認すると、ナイツラウンド家はイヒトーダ伯爵領の領都郊外に家がある。


 領都の城門までは馬の往復で一時間程度。


 母セイラはその距離を往復して来てみてと、カズマに提案した。


「うん!行ってくる!」


 カズマは早速、ハラキリで『霊体化』すると、領都の城門を目指すのであった。


 城門まではあっという間であった。


 よく考えると、道に沿って進む必要がなく、見晴らしの良いところまで浮上して、目標まで真っすぐ進めばいいのだ。


 カズマはそうして城門に到着し、律義に『霊体化』した手で、城門をタッチして家まで戻る。


 家では母セイラが戻ってくるまでの間を利用して、アンのスキル『旅芸人』について、引き続き指導していたが、すぐにカズマは戻ってきてしまった。


「カズマ!?もう、戻って来たの!?」


 母セイラは、ショートカットを考えて馬の半分くらいの時間で戻ってくると予想していたから、これには本当に驚いていた。


 アンは素直に、


「凄い、カズマ!馬よりの早いのね!便利じゃない!」


 と感心していた。


 カズマはこの結果に自分も満足するのであったが、少し体に違和感を感じていた。


「お母さん、もしかしたらこの『霊体化』は魔力を消費するのかもしれない」


 そう、カズマは自身の魔力の減少を感じていたのだ。


 カズマは自分の体に起きている事を不思議に感じた。


 そう、カズマは、魔力を消費する事自体が初体験であったのだ。


 というのも、カズマは魔法が使えない。


 それも、誰もが物心ついたら、練習して使えるようになるはずの生活魔法も使えないのだ。


 だからといってカズマに魔力がないわけでもない。


 父ランスロットは人の魔力のオーラが見えるのだが、カズマはその魔力が普通の人よりかなり多いと評価していたから、魔力はあるが、なぜか使えない状態であった。


 そういう理由でカズマは魔法を使用する事で通常感じる魔力の増減を感じられずにいたから、その初体験が楽しいのであった。


「カズマの能力は便利だもの、よく考えたら魔力を消費しないわけがないわね……。これからは、魔力枯渇にも気を付けて、色々と試してみましょう」


 セイラは息子が初体験を楽しそうにしている事を喜んでそう提案するのであった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。


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それでは引き続き、作品をお楽しみ頂けたら幸いです<(*_ _)>

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