例え水に食われても
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
例え物語であっても、弄ばれると憤慨する様になったのは、何時からでしょうね。
多重に重なるコーラスが神秘的で美しくて、惹き込まれる。でも時々、打ち消される様に主旋律が霞んで無くなってしまうのは、水中に呑み込まれたからなのかも知れない。
でも、でも、でも、終わりに向かうに連れて、打ち消されないように、抗う様に、はっきりと聞こえるのだ。そして最後のサビでは転調を迎える。波に抗って、帰ってきたのだと、光を掴んだのだと知った。
基本的に彼女は生者を嫌う。でもそれ以外には比較的寛大だった。物に対しても、動植物に対しても、人外に対しても、死者に対しても。
そんな彼女は今日も私の膝上に頭を乗せて、ぽろぽろと涙を零す。
「この場所で、死に纏わる話をする事をお許し下さい。
死者を貶すことは万死に値します。口も聞けない、動けない、全てを奪われたから、だから弔う事が大事なのです」
膝からとろとろと流れ込むのは、遺体を弄ばれた者たち。物のように粗雑に扱われる者たち。惨い扱いに思わず気持ちが沈む。けれどもその者達を慰める様に、弔う様に、鎮魂歌が延々と流れている。
「頭の中で反芻する事で、弔っているのだね」
「そうする事しか出来ないから。見ず知らずの人だから。関わりのない人だから。そうする事しか、出来ないのです」
そんな彼女の気持ちを和らげる様に、そっと髪に触れる。すると、か細い、今にも消え入りそうな声で、囁くのだ。
「私が亡くなっても、こうして覚えていて下さいますか? 忘れてないで下さいますか?」
万物は海から生まれ、体の大部分は水で構成される。それでも、水に意志はない。意思は無いから、遺体は海中に食われて戻って来なかった。でも、私がこうして墓参りをして、何時までも弔い続けたら、戻って来ると思っている。
「この歌の様に、最後にはこの場所に戻ってくると思ってるよ。戻ってくるまで、私は此処を守り続けるよ」
物語でキャラが死ぬのは当たり前。
精神で物を読むので、過度に悲しんだり、怒ったりしないんですよ。
でも死者を弄ぶ真似にはブチ切れます。
弄んだ者を憎悪するくらいには。
ほんな話はおいといて。
元ネタは、とある鎮魂歌。
歌詞もメロディーも、とても素晴らしいんですが、よくよく聞いてみると、細かいところにも趣向が凝らされてるんですよ。
時折主旋律が聞こえ難いところとか、転調して上がるところとか。
飲み込まれても、希望は捨ててないのだと思います。
弔い続けたら死者にも届く。今いる空に戻って来る。
だから生きている限り、守り続けるよ。
という墓守の話でした。