エピソード7
2025.4.25
プロットの打ち合わせが終わり、イメージの絵を描き始めることにする。
色鉛筆の缶を手元に寄せ、今回のイメージカラーを練る。
手に入る印税は大して多くはない。
けれど、誰かに私の言葉が届くのであれば、数字なんかは関係なく、それはそれでいいと思っている。
休職中に、母のすすめで地域のイラスト教室に通ってみることにした。
毎年教室で参加しているというオリジナル絵本コンクールの時期と重なり、試しに応募してみたらなぜか賞をもらえた。
教室の受講者たちが喜んでくれて、簡単な絵本を自費出版で作ってみることになった。特に売るつもりもなかったので、図書館に寄贈したところ、たまたまそれが口コミで広がり、地元の小さな出版社が声をかけてきてくれた。
最近は1年に1冊くらいのペースで絵本を出している。
どうしてこうなったのか、自分でもよく分からない。
最初に作った絵本は、ただあの人に自分の言葉がうまく伝えられなかった、悲しみや後悔を吐き出すつもりで書いた作品だった。
誰かに向けたものじゃない。
自分のためだけに書いた作品だった。
私はもう諦めている。
私はあの人のようにはなれないと。
あの人のような作品は書けない。
だから、もうあの人の背中を追うことはやめた。
私は、私の器に見合ったものを創るしかない。
所詮私の力では、あの人の作品を世に送り出すことなんか無理だったのだ。
それが私のたどり着いたゴールだった。