暗殺者たち
更新遅くて済みません。
「オーダーです、凍りの薔薇よ」
レオノーラの言葉に、今までたゆたっていた柔らかな空気が凍り付いた。
五人の刺客達の目が、刃物の輝きを帯びる。
──我が君、エリアル殿下。あなたは私を憎み嫌ってもよいのです。ただ私はあなたの味方であり、どんな事をしてもあなたを守ります。あなたの知らぬ所で、我等は血に汚れましょう。
一瞬の間の後、レオノーラは続けた。
「我が君、エリアル殿下を毒殺しようとした者を暴き、報復します」
凍りの薔薇達は一人一人頷く。
「いかなる敵も、我等凍りの薔薇の手で葬るのです……例え、それがどんな大貴族でも!」
レオノーラの瞳は、闇の中にきらめく。
「我が君の敵は、全て血に染まり滅びるでしょう、その為に、力を貸してください」
「レディ・ローズの御心のままに」
一斉に五人が答え、片膝を付いて頭を垂れた。
「ありがとう、我等はこれより地獄に堕ちましょう」
レオノーラはここでようやく、やや口辺を緩める。
「……さて、では意見を聞かせてください。誰が、エリアル殿下に毒を盛ったか、まずそれからです」
最初に顔を上げたのは、無邪気なシリルだ。
「案外それは分かるかもしれないよ。ここでは貝毒は珍しいからね、集めるのが大変だ」
王都クレリアは内陸にある。海に面しているのは東の果てだ。
確かに、ここで使用する毒にしては珍しすぎる。
それだけ手をかけたのだろうが、物事は複雑すぎると逆に綻ぶ。
「誰かが、誰かに頼まないと手に入らない、か」
ヨアキムは独り言のように呟く。
「毒物などは確かに簡単に手に入る者でもないですしね、ましてや強力で珍しいとなると、経路は意外に絞られますね」
アーデルベルトの眼鏡が月の光で輝き、ウルリヒは深く首肯する。
「毒物の経路はわたしなら追える。貧民街にはツテもある」
「で、そいつを見つけたらどうする? 脅すか?」
クリスティアンの直情過ぎる提案に、アーデルベルトの端正な口元が笑い変わる。
「貴族の命を受けた者は簡単に口を割らないでしょう……私が体に聞きましょう」
「やれやれ」ウルリヒに苦笑が閃く。
「君達はほんっとうに恐ろしいねぇ」
「それで、犯人が分かったらどうする?」
ウルリヒに構わずヨアキムが、くぐもった声で疑問を呈する。
「抹殺します。それについては議論は不要です」
レオノーラはきっぱりと言い切った。
「意外な大物が釣れるかもしれませんぜ?」
ウルリヒは多少困惑した風に、周りを伺う。
「それならば考えようがある」
クリスティアンは、腰に吊してある大剣に触れた。
彼は表向きは宮殿の衛士であり、服装からも武器を持っている件について、咎められないだろう。
「斬りまくるだけだ」
はあ、と呆れた様子でシリルはため息をつく。
「どれだけの手勢がいるか分からないのに? そんな手より……みーんな何か食べるんだ、僕の毒なら一網打尽だけれどね」
だがレオノーラはシリルに首を振った。
「いえ、今夜の件は多分、先走り功を焦った愚か者によるものでしょう。大した戦力はいないはずです」
「どうしてそうお考えなのですか?」
アーデルベルトの眼鏡の下の切れ長の目に、レオノーラは微笑する。
「現状の王宮です……先程のパーティではっきり分かりました。残念ながら、今はアルバータ夫人が完全に実権を掌握しています。正確に言うと、アルバータ夫人の背後にいる、ボールドウィン公爵です」
レオノーラが思い出すのは、壁の前で取り残されるエリアルの姿だ。
次期王に対して、貴族達はあまりにも関心を持っていない。
特に今、この国の王たるランドルフは病に伏せっている。
反応がないのであまり続ける気になれませんでした。やはり宮廷は中華しかダメなのでしょうか?
感想、いいね、評価、ブクマ。
頂けたらモチベになります。特にこうなら良いな、とご指摘してくだされば考えます。よろしくお願いいたします。
ちなみに私は喫煙者なのですが、この物語が好評ならば完結させるために禁煙します!