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転生騎士団長の歩き方  作者: Akila
2章 王城と私
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36 知らない人

「グロー、今日からよろしくね」


「うっす」


今日も両手にポッケなグロー。ちょっと初日だけど最初が肝心だしね。言っちゃうか。


「まず、その両手を出そうか? 気になってたんだよね。団内では極力言わないようにはするつもりだけど、上官や他の団の騎士の前では、姿勢と態度は改めてね。服装とかは追々でいいから。あと、口調も。普段はタメ口でいいから。今の通りでいいよ。でもね、団長会議ではちゃんとしてね」


「わかりました。すみません」


ちぇ~っと言いそうな感じではあったが、すぐに態度を改めてくれた。よしよし。


「じゃぁ、現状の把握をしたいから、昨日言ってた報告書とここ1年の収支報告書を見たいから持って来て」


「机に用意しておきました。あと、騎士名簿もあります」


お~、仕事が早いな。実は有能?


「ありがとう。あとさぁ、グローは今日は帰っていいよ」


「はぁ?」


「だって目の下のクマがすごいし… 今日まで第2を一人で支えてくれてたんでしょ? 私は今日はこの机から離れられないだろうし。1日しか休みをあげられないけど… お疲れ様」


グローは変なものを見る顔になってフリーズした。


「だ、大丈夫?」


「はっ、え? はい。休んでいいんすか?」


「うん」


「は~~~。マジか~。休みだぜ~」


グローはそのまま団長室のソファーに倒れ込み、グ~っと声を出して秒で寝た。


「え? ここで寝るの? ちょっと、グロー?」


ゆっさゆっさと身体を揺らすが全然起きない。こっちがマジかだよ! 本当に!


「まっ。いっか。害はないし」


私はグローに上着を掛け布団代わりにかけて事務仕事に集中する。


まずは、報告書。


うんうん、言っていた通りの内容だ。



一通り目を通してわかった事がある。城下街警備が疎かになっているから、治安が悪くなっている。苦情が去年に比べて増えているしね。そして、その影に隠れて教会がちょっと目に余る感じかな。この教会の無茶振りが気になるな。最後は、この騎士名簿。多分作成したのは、前副団長で現第7団長のシニアスさんだろう。よく出来ている。騎士の特徴と履歴がよくわかる。


ふ~。


シフトはトロイが来る前に戻せばどうにかなりそうだし。騎士達もあまり異動は無いようだからこの名簿を参考にして、早く側近を決めよう。グローだけじゃちょっと手が回らないだろうしね。あとは、ケリーだよ。親友が居るからちょっと心に余裕が出来るかな。


今まで、ドーンがほとんどやってくれていたような事を、今後は数で分散しないとね。さぁ、がんばりますか!


「グロー、グロー。起きて。もう夕方だよ?」


「へ? はい。すんません。ここで寝ちゃったっすね。え? もしかして全部読んだんすか?」


「あ~、うん」


「これは… あのヘボ貴族と違う? ごほん、で? どうでした?」


「うん。教会が一番の悩みかな?」


「そうなんす。俺らもそこまで手が回らなくって。西の教会で布教活動? って言うんですかね。集会が頻繁に行われて、信者が、それも熱狂な信者が増えてて。あぁ、信者が増えるのは問題ないんすよ。問題なのは、その熱狂信者が揃って『女神様の使徒を王に』と言うんすよ。しかも声に出して。使徒ってなんすかね? 聞いた事あります?」


「ない。使徒か… 何か手がかりがある?」


「ないっす。俺んちあんまり教会へ行かないんで」


「いやいやそう言う事じゃなくて、他の人に聞いたりは?」


「ないっす。忙しかったんで」


グローはあくびをしながらお茶を入れてくれた。まぁ、しょうがないか。


「わかったわ。その件は明日以降、私達で調べましょう。あと、明日だけど、朝礼で挨拶するし。その時に側近も発表するから。その人選はここに書いといた。今見てくれる? グローから見てこいつはやばいとかあったら教えて」


「うっす」


グローはざっと目を通して、目が止まった。


「こいつ… 知らねぇっす」


「は? 知らない? 異動になったとか?」


「どうっすかね。俺が第2に来たのはあのトロイのヘボと一緒だったんで。でも、この名前は知らないな。今の団には居ないと思いますよ」


「でも… 名簿には異動したとか書いてないし…」


ん? どう言う事?


私が第2に最後に居たのは約8ヶ月前。4ヶ月前にトロイが就任したから、この4ヶ月間で来た人? その前の4ヶ月で来た人なら、その時に副団長をしていたシニアスさんに聞けばわかるかな?


「わかった。一応、明日名前を読み上げてみるわ。もし、存在するならグローは黙っててね。今まで居たかのように振る舞って。もしかしたらスパイ? かもしれないし」


「スパイって。ははは、どこの?」


「第5が何らかの思惑で… それこそトロイを見張ってたとかで臨時で居たのかも」


「それなら、明日はもう居ないんじゃないっすか?」


「それもそうだなぁ。う~ん」


「まっ、明日呼んでみて、もし居たら様子見って事で。下手に詰め寄っても逃げられたら困るし」


グローはあっけらかんとしている。ん? 気にならないのかな?


「え~、どうしよう。めっちゃ強い人とか、めっちゃ悪意のある人だったら…」


「団長って… 何かやらかしたんすか? 狙われる理由でもあるんすか?」


いや~。狙われると言うか、睨むと言うか、絡まれてると言うか。


「ちょっとね。王女様に嫌われてる? ほら第4の団長が王女様のお兄さんでしょ? 私、その人と仲がいいから『近づくな』って言われた事があってね」


「な~んだ。ただの嫉妬じゃないすか~王女様とか言うからビビったぁ。大丈夫っすよ~それ。上位のお嬢様でイケメンの兄に近づく、自分より下のハエが気になるんでしょう」


「おい! ハエって… もうちょっと言い方があるでしょ!」


「すんませ~ん。ほら、団長って、女子にしては飾りっ気ないと言うか… 黄色の瞳は魅力的ですが、他は普通じゃないっすか。王族や上位貴族からしたら普通でしょ?」



「本当の事をズバズバと~! もう! わかってるわよそんな事!」


「ならいいんす。って事で、明日、もしそいつがいたら様子見って事でいいんすね? 居たら居たで面白そっすけど」


「全然面白くない! ふ~、じゃぁ明日はよろしく」


「うぃ~」


グローは全身伸びをして身体をボキボキ鳴らしながら帰って行った。


は~。私も帰ろっと。

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