表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生騎士団長の歩き方  作者: Akila
1章 ようこそ第7騎士団へ
3/100

03 いきなり騎士団長って!?

退院した私は寮に戻るや否や、休む間もなくメガネ副隊長に御前でのマナーを叩き込まれた。


何とか形になったのは前日だった。それもめっちゃ詰め込み気味だけど。とほほ。


「緊張してるな。ガチガチじゃないか」


只今、王城へ向かう馬車の中。私は団長と副団長の向かいに座って居る。


「だって… 陛下ですよ? これが緊張しないでどうするんです。団長こそ余裕ですね」


「そりゃ~お前、団長だからな。会議や何やらでお会いする事は多々あるし… 言ってなかったかも知れんが、俺と陛下は学校の同級生だし。知らん仲じゃないんだよ」


「え~! 何その自慢出来る同級生。いいな~。じゃない! 団長って何気にスペック高かったんですね」


「すぺっく?」


「あぁ… 能力? というか仕様? です」


「ラモン、緊張しすぎて言動が少々おかしくなっているぞ。いつもの冷静さはどこへ行った? 少し落ち着け」


副団長はメガネをクッと上げて私を諌める。


「すみません。これが私の素です。いつもは猫をかぶっていました。ははは」


「ん? そうなのか? こっちの方がいいんじゃないか? 気安くて」


「そうですか? じゃぁ、これからは素で行こうかな。団長、階級とか気になさらない様ですし」


「あぁ。好きにしろ」


と、団長は大きな手でまたもや頭をグリグリしてくる。


「ちょっと、団長。せっかくの髪が… 止めて下さい」


「ははははは。緊張がほぐれて来たか?」


「団長もラモンもその辺で… もう直ぐ着きますよ」


副団長の一声で各々姿勢を正す。さぁ、いよいよだ。



まず、功労賞の授与式は外交とかに使う大きな広間で行われる。今日、授与されるのは20名程だと聞いている。後は参列者。領主達と大臣達、各部隊の騎士団長と副団長達、関係者の親族などだ。私の所は、家を代表してお兄様が来る事になっている。


私は授与予定者なので広間の外で待機だ。


「よぉ! ラモン。お前、今回お手柄だったな!」


大きな声で手を振りながら近寄って来たのは、第3騎士団のミゲル様。新人時代の先輩だ。


「ちょっ! ミゲル先輩、し~し~」


慌ててミゲル先輩の口を押さえる。


「ん? 何だ? 恥ずかしがってるのか?」


「そうですよ。こんな大舞台で… 目立ちたくないんです。ただでさえ、中位騎士は私だけの様ですし。もぉお願いしますよ」


「ははは、いつもクールなお前でも取り乱したりするんだな。てか、ちょっと性格変わったか?」


「新人の頃から何年経ってると思ってるんですか! こっちも色々あるんです。それより先輩も授与されるんですか? 確か先月上位騎士に昇格されたばかりですよね?」


「ん? 授与というか、何かあるみたいでさぁ、異動かなぁ? 俺は第3だから元々城内警備だし。今回、各騎士団の編成もガラッと変えるらしいぜ。昇進だったりして~。へへへ」


「編成を変えるか。何だろう… 私今の第2騎士団、結構好きなんですよ。やっと仕事が充実して来たのに移りたくないなぁ」


「ははは。こればっかりはしょうがないよ。まぁ、がんばれ。じゃぁ、また後でな。慰労会、参加するんだろ?」


「はい。では、後程」


先輩と別れて、場内外のガヤガヤも落ち着いた頃、広間のドアが一旦閉められた。


「これより、騎士並びに魔法士、その他の功労者への称誉、授与式を執り行います。入場」


騎士と魔法士は階級が上の者から並び順に入って行く。その他の人は貴族階級順に入場して行った。もちろん私は最後の最後。


ドキドキドキ。


ふっかふかの絨毯を歩く度に転けそうになるのを何とかバランスを取りながら歩く。前の人に習い、御前まで進むと脚を折り頭を下げる。


「皆の者、大義であった。今回の戦地での活躍、聞き及んでいる。ここに居る者もそうだが、それ以外の者達もよく国の為に戦ってくれた。礼を言う。少なからず我が国も尊い犠牲を出したが、早急な停戦、そして終戦まで出来た事、皆の努力と功労による。よく使命を果たしてくれた。では、これより特に戦果を挙げた者達に恩賞を与える事にする」


陛下のお言葉で授与式が始まる。


「第2騎士団 ラモン・バーン。前へ」


は? 1番最初? 聞いてないんですけど~。


そっと、団長と副団長へ目線を向けるが、ニヤニヤ顔とお澄ましメガネ。



「ラモン・バーン、前へ」


「はっ!」


再度呼ばれてしまった私は、立ち上がり恐る恐る前へ進む。再び脚を折り頭を垂れる。


「ラモン・バーン。この度、終戦へ導いたそなたの功績が大きい。実に見事である。これにより国に平和と多大な利益をもたらした。よって、2階級昇進の第4等騎士、上位騎士へ昇格する事とする。並びに、第7騎士団長に任命する。褒賞は金一封を授与する」


昇格!!!


一瞬ポカ~ンとなったが気を取り直して精一杯声を出した。


「はっ。あ、ありがたき幸せ。つ、謹んで拝命致します」


おいおい! おまけに団長とか、何でそうなる!


宰相様に勲章をつけてもらい、騎士団長の証である腕章を受け取る。


もうね、手がね、ブルブル震えて、目が涙目だ。


震える足取りで元の位置に戻る私。頭が真っ白だ。


第7って確か…


とか思っていたら、他の人達の受賞がいつの間にか終わっていた。


どんだけ動揺してたんだろう私。周りが見えてなかった。しまった。


「最後に、今回の終戦で騎士団の編成を大幅に変更する運びとなった。団長、並びに副団長の異動はあまりないが、組織を確固たる物にする為、騎士達は今以上に研鑽して欲しい。詳細は後日騎士団で別途行う。では、下がりたまえ」


一堂に立ち上がり、頭を下げたまま胸に手を置く。そして、回れ右で退場だ。


トボトボと皆の後を歩きながらドアの外へ出た。



ドアが閉まると立ち止まって下を向く。もう何も考えられない。


「ラモン?」


「あっ、お兄様。本日はありがとうございます」


ちょっと困惑顔のお兄様が廊下の隅へ私を誘導する。


「どう言う事だい? 団長って… ラモン、大丈夫かい?」


「お、お兄様~! わ~ん」


と、お兄様に抱きつく。いっぱいいっぱいでどうしていいかわからない。


「小さな子みたいになって… 事前に通達されて居なかった様だね。終戦に導いたとか聞いたけど… それならすごい事なんだろうけど、でも、団長とか、本当に大丈夫かい?」


「そ、それね… 私も驚き過ぎて… でもね、実は、今回賜った第7騎士団ってちょっと癖があるって言うか…」


よしよしと頭を撫でてもらていると、ナイスミドルなおじ様が声をかけて来た。


「ラモン殿。今、少しいいですかな?」


「は、はい」


振り向くと、なんと第1騎士団参謀のドーン様だった。


「はっ! ドーン参謀。私に何用でしょうか?」


私はとっさに直立不動で敬礼をする。お兄様は空気を察してか無言で一礼しその場を離れた。


「いやいや、敬礼は必要ない。崩して結構です」


「では、お言葉に甘えます」


と、私は両手を後ろにして直立だ。


「ははは、ラモン殿、先ほどの話を聞いてなかったみたいだね?」


「はっ? は、話とは?」


「先程の謁見で話していた騎士団の編成の事だよ」


ん? と首を傾げる。褒賞云々の他ははっきり言って、頭真っ白だったから聞いてない。


「申し訳ございません。あまりの衝撃で聞いておりませんでした」


「あ~、そうか。びっくりしたか、まぁそうだろうね。それでね、その話の中でちょっと人事の話があったのだけれど覚えていないかな?」


「はっ。申し訳ございません」


「いや、いいんだ。では、改めて私から伝えるね。私、ドーン・イングラッシュはこの度、第7騎士団副団長を拝命されました。今後はラモン団長の下に着きます。よろしくお願いします」


さっきの優しい感じのおじ様が一転、キリッとした顔で私に敬礼し姿勢を正した。


「はっ???」


一瞬で優しい顔に戻るドーン参謀。


「いやね、一応通過儀礼としてね。だから、今後は私には敬礼も敬語も必要ないんだよ。ラモン団長」


「え? いやいや、え? マジで? ドーン参謀が?」


「ドーン副団長だよ。団長殿」


と、ウィンクするおじ様。



開いた口が塞がらないとはこの事だ。


放心状態の私とニコニコ笑顔のドーン副団長。


その後聞いた話によると、会話が聞こえない位置にいたお兄様には異様な光景に見えたそうだ。小娘に敬礼する騎士団の重鎮。そこに居合わせた人達もギョッとして居たそう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ