伝説の大聖女は300年後に目覚めた世界で途方にくれている
◇◇◇
「では次の方。こちらの冒険者ギルドは初めてですね。お名前をフルネームでお願いします」
「アニーシャ・ダダンです……」
ロイドは、目の前に座る少女の姿をチラリと確認した。
流れるような銀髪に吸い込まれるような水色の瞳。この王都でも見たことのないような美少女だ。
かつて勇者と共に魔王を倒した『伝説の大聖女アニーシャ』も、銀髪に水色の瞳を持つ美しい少女だったとか。この少女も、髪の色や瞳の色から聖女にちなんだ名前を付けられたのだろう。
「リリシア教会の聖女さまと同じお名前ですね」
何気なく口にした言葉に、少女はパァ~と顔を輝かせた。
「そう、そうなんです!私、聖女なんです!」
「……ああ。はい。そうですね。聖女様と同じ名前ですね」
「あ、いえ、そうではなくて、私がその聖女本人なんですけど……」
ロイドは軽く溜め息を付いた。長くこの仕事をしていると、たまにこういう手合いが現れる。伝説の聖女の生まれ変わりとか、古の勇者の末裔とか。
大方は詐欺師だ。だが、中には自分こそが本物だと信じている者もいる。目の前の少女は明らかに後者に見えた。
本気だかどっかおかしいのかは知らんが、相手をする時間が無駄であることだけは確かだ。何しろこの時期はここ、冒険者ギルドの最盛期。腐る程モンスターが涌き出る時期に、頭のおかしい少女の相手までしてやる暇はない。
「その手のお話でしたら、三番街のドレイク先生が担当です。はい、次の方~」
有名なヤブ医者を紹介してとっととお引き取り願おうとしたロイドだったが、少女は慌ててすがり付いてきた。
「あ、あの!私にお仕事を紹介して下さいっ!お金がなくて目覚めてからもう3日も何も食べてなくて……」
「……はぁ。ギルドカードはお持ちですか」
頭のおかしい少女でも、冒険者として仕事を探しているとしたら無下にはできない。何しろ人手不足。猫の手も借りたいほど忙しいのだ。腐る程必要な薬草を摘んでくるくらいなら、この少女にも勤まるだろう。
――――でなければ、こんな容姿の少女が行き着く先はろくなものではない。
ロイドの言葉に少女はほっとした顔でギルドカードを差し出した。
「あ、あの、かなり古いものなので今でも有効かどうか……」
少女がおずおずと差し出したギルドカードを受けとるが、見た目はそれ程古いものとも思えない。読み取り用の魔法具にかざすと、難なく本人のステータスを読み取ることができた。
「ええっと。アニーシャ・ダダンさん……年齢は……317歳……は?」
ロイドはもう一度目の前の少女を見た。少女は恥ずかしそうに目を伏せる。
「あ、いえ、でもずっと時の概念のない空間にいたので、気分はまだまだ17歳と言うか……」
「職業……聖女……レベルSSSクラス……」
「あ、はい。一応レベルはカンストしてて、聖属性魔法は全て習得済みです」
ロイドは静かに席を立った。
「あ、あの、どこに行かれるんですか?私、お仕事を紹介して貰いたいんですけど……」
慌ててロイドの袖を掴む少女に満面の笑みを向ける。
「大変失礼致しました。大聖女アニーシャ様。すぐにギルドマスターを呼んで参ります。別室をご用意致しますのでこちらに。おいっ!最高級の紅茶を頼む!あ、紅茶はお好きですか?ジュースのほうがよろしいですか?」
「あ、え、いえ、紅茶は大好きです」
「そうですかそうですか。すぐにご用意致しますからね。あ、我がギルド自慢の食事をぜひ召し上がって下さい。頭の禿げた親父が作ってますが味は保証します。何か食べたいものはありますか?嫌いなものは?」
「えっ?良いんですか!実はお腹がペコペコで……」
「おいこらっ!今すぐ食堂の全メニュー持ってこいっ!急げよっ!」
ロイドは見習いに檄を飛ばすと、すぐにカウンターを出てアニーシャを応接室までエスコートする。
突然受付を閉めたことで後ろに並んでいた冒険者たちが大声で文句を垂れているが知ったことではない。何しろこのギルドにおける最重要人物だ。きっと連日のオーバーワークに、ロイドを哀れに思った神が遣わした天使に違いない。
◇◇◇
「おいひぃれふぅ~こんなにおいひぃお料理ひさしぶりでふぅ」
目に涙を浮かべながらはふはふと夢中で目の前の料理を頬ぼるアニーシャ。ロイドはその様子を満面の笑みで見つめていた。
「まだまだたくさんありますからね。存分に召し上がってください」
「はい!うう。すきっ腹に染みわたりますぅ」
余程腹が減っていたのだろう。アニーシャは出された料理をどれもおいしそうに平らげている。
「おい、本当にこの嬢ちゃんが伝説の大聖女様なのか?」
隣に座ったギルドマスターのトムがこそこそと耳打ちしてくる。確かにいきなり大聖女が現れたと言っても信じられないだろう。ましてこのような小娘だ。実際ギルドカードでステータスを確認するまで、ロイドは微塵も信じていなかった。
「間違いなく大聖女、アニーシャ・ダダン様です」
きっぱりと言い切ったロイドに、トムはそわそわしだす。
「お、おい、だとしたら大事じゃねえか。すぐに城に報告に行かないと。いや、待てよ。大聖女様だから報告先は教会になるのか?」
トムの言葉をロイドは鼻で笑った。
「何言ってるんですか。どこにも報告なんてしませんよ」
「は、はぁ!?おまっ、大聖女様なんだろ!?」
「ええ。大聖女様ですが?」
「報告しなきゃまずいだろ!」
「なぜ?大聖女様は自らこの冒険者ギルドにいらしたのです。そして、ここで働きたいとおっしゃった。確固とした大聖女様のご意思です。その尊い自己犠牲の精神を踏みにじるような真似、俺には到底できません」
「お前!大聖女様をギルドの戦力としてこき使う気だな!」
「いけませんか?」
しれっと言い放ったロイドにトムは頭を抱える。確かに冒険者ギルドは年中人手不足。しかも今はモンスターパレードが多発する最盛期。ひとたびモンスターパレードが起これば、どれほどの被害が出るかわからない。
だが、せっかく三百年ぶりに目覚めた大聖女様を自分たちの都合でいいように利用するなど、ギルマスとしての矜持が邪魔をする。
しれっとした顔で澄まして紅茶を飲むロイドと頭を抱えたトムを見て、アニーシャは首をかしげる。
「あの、私のことで何かご迷惑を……」
「迷惑なんてとんでもない!アニーシャ様がお目覚めになられたのは我々にとってまさに天の助けです」
ロイドの言葉にアニーシャはほっと胸を撫で下す。
「良かった……またお役に立てるのですね。目覚めて真っ先にここに来たのは間違いではありませんでした」
「ええ!素晴らしいご判断でした!」
上機嫌のロイドを横目で見つつ、トムも口を開く。
「えーと、大聖女様はなんだってまた、冒険者ギルドにいらしたんですか?教会や王族に保護を求めることは考えなかったんですかい?」
余計なことを言うなとばかりに睨み付けるロイドを軽く無視する。今すぐにでも教会や城に行けば、いくらでも手厚い保護を受けられるだろう。何しろ伝説の大聖女の肩書きを持つ世にも稀な美少女だ。貴族はおろか、王族と結婚することすら夢ではない。
「教会に王様、ですか……」
だが、教会や王族と言う言葉に、アニーシャはみるみる肩を落として落ち込んだ。
「王族の方や教会にあまりいい思い出がなくて……」
聞けば、アニーシャは元々庶民の出で教会での立場も弱く、魔王討伐も身分の高い先輩聖女たちに押し付けられたものだったそう。お城で見た王族は冷たく高圧的で、とても恐ろしかったと話す。
「その上ようやく勤めを終えたと思ったら、300年後の世界だもんなぁ……グスッ」
アニーシャの苦労話を一通り聞いたトムは涙を流さずにはいられなかった。
「ええ。でも、勇者さまはとても優しくて、強くて、頼もしくて、かっこよくて……旅は過酷でしたが何度も助けられました。ですから、勇者さまと共に魔王を倒したこと、後悔はしていません」
ポッと頬を染めるアニーシャに、トムとロイドは生温かい視線を送る。
「ああ、そう言えば勇者さまは、ここ、王都出身の冒険者でしたね」
「は、はい!だから、ここに来たらせめて勇者さまのご子孫にお逢いできるかもと……」
「それは……無理ですね」
「え、な、なぜですか」
アニーシャの言葉にトムもロイドも気まずそうに顔を見合わせる。
「勇者ロイド・バルトは、一人で戻られた後王女との婚姻も叙勲も断り、再び旅立ったと言われています。噂では魔王城の近くに居を構え、聖女様の復活を待ちながら生涯独身を貫かれたとか」
「ロイド様……」
思わず泣き出したアニーシャの手を、ロイドは優しく握りしめた。
「きっとロイド様も、アニーシャ様のことを愛してたんでしょうね」
真っ赤な目でロイドを見つめるアニーシャ。ロイドもまた、勇者と同じ名前を持っていた。もっとも、勇者にあやかった名前を持つ男など、聖女の名前を持つ者以上に国中に溢れているが。しかし、
「ロイド様……どうして。ロイド様の、ロイド様の馬鹿っ!一人で死なせるために助けたんじゃないのに。ちゃんと幸せになって欲しかったのにっ」
ロイドの手をしっかりと握りしめたままうわーんと泣き出したアニーシャを見て、トムはゴミを見る目でロイドを睨み付ける。
「おいテメェ、同じ名前だからって勇者様騙って聖女様誑かしてんじゃねぇよ」
「俺がこの痛い名前嫌いなの知ってるでしょう。そんな馬鹿な真似しませんよ」
こそこそと小声で言い合う二人を涙で濡れた目で見つめるアニーシャ。アニーシャの特別な瞳には、ロイドの魂が持つ輝きをはっきりと捉えることができた。
(一目で分かったわ。このロイド様は勇者ロイド様の生まれ変わりだって。懐かしい、勇者様の魂の色……間違えるはずないわ)
アニーシャは勇者ロイドが好きだった。強かで、冷静で、ちょっぴり意地悪で。だけど誰よりも熱い正義の心を持っていた人。どんなに強大な敵でも、守るべき人達がいる限り絶対に背を向けなかった人。
ろくに回復魔法も使えなかったアニーシャに、根気強く魔法を教え、最後の最後まで守り続けてくれた。過酷な旅の間、どれほど助けられたかわからない。
だから、魔王との最終決戦。滅び行く魔王の最後の一撃でロイドがアニーシャを庇って倒れたとき、アニーシャは迷うことなく禁断の魔法に手を出した。禁忌と言われる蘇生魔法。膨大な魔王の力を自らの体に取り込んで、その力すら利用して。その代償は三百年もの眠りだったけど。
アニーシャは、それほどまでに、ロイドを愛していたのだ。最後の一滴まで魔力を奪われた魔王は呆気なく滅びたけれど、取り込んだ力は今もアニーシャの中に渦巻いている。
(今ならもっと、ロイド様のお役に立てるはず)
アニーシャは決意した。生まれ変わった勇者様を、今度こそ一人では死なせない。例え勇者様の魂がアニーシャのことなど微塵も覚えていなくても。そばで見守る位なら許されるだろう。
「ロイド様。今度こそ、私がお守りします。もう決して離れませんからっ」
「?ええ、期待してますよ!共に魔物の脅威から王都を守りましょう!」
満面の笑みを浮かべるロイドをうっとりと見つめるアニーシャ。その様子を見たトムは溜め息を付いた。
「はぁ。じゃあロイド、なんかお前に懐いてるみてーだし、お前が最後まで責任持って聖女様の面倒見ろよ?任せたからな」
「は?聞いてませんが」
「嫌なら教会と城に報告する」
「きょ、教会もお城も嫌です!お願いします!ロイド様に決してご迷惑はお掛けしませんから。絶対にお役に立ちますから。ロイド様のお側に置いて下さい!」
白けた顔で見つめるトムと涙目になりながら懇願してくるアニーシャ。ロイドは今日何度目かの溜め息を付いた。
「あーもう、分かりましたよ!面倒みりゃいいんでしょ!まったく……いつもいつも面倒ごと押し付けやがって」
ぶつぶつ言いながらロイドはアニーシャの手を取る。
「住むところもないんだろ?取り敢えず、家にくるか?」
「おいロイド!面倒見ろとは言ったが、いくらなんでもそりゃ不味いだろ!」
トムの言葉をロイドは軽く無視する。
「俺のそばにいたいなら、今から敬語はなしだ。俺の命令には、はいかイエスでのみ答えろ。いいな?」
「お前はどこの鬼畜だっ!」
いたいけな少女にこのセリフ。ロイドはこういう奴だったと怒り狂うトム。だが、アニーシャは歓喜に震えていた。
(勇者様!!!)
前世のロイドに初めてあった時、言われたセリフと全く同じだったからだ。
「その代わり、俺の全てでお前を守ると誓う」
その言葉通りに、ロイドはアニーシャを守ってくれた。戦いの中、ロイドが出す命令はいつもひとつだけ。「俺から離れるな」でも、最後の命令を、アニーシャは聞くことができなかった。
「はい。はい!必ず、必ず従います……」
またぼろぼろと泣き出したアニーシャを見て「ほら見ろっ」とかんかんに怒るトム。さすがのロイドも焦った。
「聖女様?あー、ごめん。やっぱ言い過ぎた。いや、別に酷いことするつもりはないから。嫌だったら断ってくれていいし。面倒見るなら腕が立つ女の冒険者がいいのか。いや、ガサツな奴しかいねぇな。なんなら、王都に慣れるまでお勧めの宿屋を紹介しても……」
「アニーシャって、呼んでください」
「は?」
「アニーシャって、呼んでください」
「ああ。アニーシャ?」
「はい。私はロイド様のおそばがいいです。他の人は嫌。それに……ロイド様がこのギルドで一番腕が立つのではないですか?」
アニーシャの言葉にロイドは少し面食らい、ぶはっと吹き出した。
「ははは。さすが歴戦を生き抜いた聖女様。俺たちの実力なんてお見通しか。んじゃ、今日からよろしく、アニーシャ」
「よろしくお願いします。ロイド様」
微笑み合う二人をますます冷めた目で見るトム。ロイドはこう見えて冒険者ギルド一の腕利き冒険者だ。荒くれ脳筋揃いの冒険者ギルドの中で目立って賢いから事務仕事もやらせているが、一度剣を握らせると、右に出るものはいない。
冒険者ギルドの誇る最後の砦。人類の希望。なんてのは少し大袈裟かもしれないが、少なくとも、王都の民はロイドを英雄視している。そのうち本当に勇者の称号を得るかもしれない程には。
「勇者ロイドと大聖女アニーシャ様か。お似合いじゃねぇか」
トムの言葉にロイドは心底嫌そうな顔をしたが、アニーシャは顔を真っ赤にしてうずくまった。その顔を見ていると、なんとなく胸が疼くロイド。
懐かしいような。切ないような。
「はは。らしくねぇな。よし!そうと決まれば早速働いて貰うからなっ!働かざる者食うべからずだっ」
「は、はいっ!頑張りますっ!」
「おい!ちったぁ休ませてやれっ!鬼かっ!」
◇◇◇
その後王都では、「伝説の聖女の再来」と言われるほど頼もしい新人冒険者の噂が駆け巡った。だが、伝説の聖女もかくや!と言わんばかりのその美貌に数多の冒険者や貴族、王族まで求婚に訪れたが、ことごとく撃沈したと言う。
何しろ彼女は、魔王の異名を持つ勇者様に首ったけだったので。
「おいアニーシャ、こいつ手当てしてやってくれ」
「はい!ロイド様」
「あ、こいつ呪われてるから解呪してやって」
「はい!ロイド様!」
今日もロイドにこき使われながら、文句も言わず嬉しそうに働くアニーシャを、トムは可哀想な子を見る目で見つめている。
「おいロイド、ちったぁアニーシャちゃんを労ってやれよ。アニーシャちゃん、ロイドがいやんなったらいつでも俺の所にきていいんだぜ?」
「ほう。奥さまに殺されたいようですね。ロリコンが。しっかり報告しておきますから」
「馬鹿野郎!俺たちの娘として引き取るって言ってんだよっ!」
「却下です。あんたんところむさ苦しい面した息子が五人もいるでしょうが」
「娘は一人もいねぇからいいんだよっ!可愛い娘が欲しいんだよっ!」
ロイドとトムの言い合いをにこにこ見守るアニーシャ。
(ロイド様のおそばでお役に立てて幸せ)
「それに、こいつは俺のものなんで。他の奴に渡す気ありませんから」
しれっと放ったロイドの言葉に呆気に取られるトム。
「は?お前まさか、アニーシャちゃんに良からぬことを……」
「あんたと一緒にしないで下さい」
「人聞きの悪いこと言うなっ!俺はかみさん一筋なんだよっ!」
「はいはい、愛妻家愛妻家。と言う名の恐妻家」
「よし、わかった。今日こそ決着をつけよう。表に出ろやこらぁっ!」
「ほう?この俺に勝てるとでも?」
なぜか喧嘩に発展しそうな二人を慌てて止める。
「だ、ダメです!喧嘩しないで下さいっ!」
「止めるなアニーシャちゃん!」
「いいぞアニーシャ、そのまま押さえてろ」
新しい生活は毎日がとても賑やかだ。でも、アニーシャの恋はちっとも進展していない。
「も、もう。ロイド様も、ギルマスをからかうのやめて下さい」
一緒に暮らしていても、手すら握られたことないのだ。まるっきり相手にされていないことは分かっている。それなのに、
「俺は嘘は付かない。結婚しよう。お前、なんかほっとけねぇから。嫌か?」
「え?」
「返事ははいかイエスだろ?」
「い、い、イエス!」
「そっちかよ」
ふっと笑ってキスするロイドに思わず目を回して倒れるアニーシャ。
「お前、めっちゃ嫌がられてない?」
「失礼な。嬉しすぎて目を回しただけです」
ヒョイっと抱えられてアニーシャはますますパニックになる。
「と言うわけで今日は休みを貰います。朝までこいつを口説き落とす予定なので」
「え、え、ええー……」
「覚悟しろよ?」
生き生きとドアを蹴破って出ていく二人を呆然と見送るトム。
「なんだ。あいつもガッツリ惚れてんじゃん」
幸い数ヵ月に渡った今年のモンスターパレードは心強い助っ人のお陰で事なきを得た。例年にない被害の少なさだ。アニーシャの回復魔法はもちろん、ロイドの強さも鬼気迫るものがあった。勇者の名を持ちながら、魔王の異名を付けられるほどに。
「あいつもようやく、守りたいもんが見付かったのか」
圧倒的な強さを持ちながら、いつもどこかやる気がなくて、物足りなさを感じていたロイド。満たされない気持ちは果たしてなんだったのか。迷いの無くなった剣はただただ強かった。
「勇者と聖女のハッピーエンドなら、悪くねぇよな」
◇◇◇
モンスターパレードを無事乗り越えた王都の小さな教会で、獅子奮迅の活躍を見せた二人の冒険者が式を挙げた。
新婦の名前はアニーシャ。新郎の名前はロイド。奇しくも伝説の聖女と勇者の名を持つ二人の結婚を、王都中の人が祝福した。
「ロイド様、本当に私でいいんですか?」
不安そうなアニーシャの言葉にロイドは笑う。
「愛してる。きっと、前世も来世も。出逢うたび、俺はお前に恋するんだろうな」
「もしかして、前世の記憶が!?」
ハッと顔色を変えるアニーシャの頬をロイドは優しく撫でる。
「なんだ、やっぱそうなのか。いや、記憶は無い。でも、お前の態度で分かった」
「ご、ごめんなさい。で、でも、今のロイド様のことも大好きです」
「どっちでもいいよ。俺は、お前のことが好きだから。お前が俺の側にいてくれるなら、お前が好きなのが前世の俺でも今の俺でもどっちでもいい」
「ロイド様……」
「これからはずっと一緒だからな」
「はい」
王都に鳴り響く祝福の鐘の音。300年の時を経て結ばれた二人。ちょっぴり俺様な勇者様と、ちょっぴりドジで泣き虫な聖女様の恋は、ここから始まるハッピーエンド。
おしまい
四月咲香月様からとっても素敵なFAをいただきました!
アニーシャ・ダダン嬢
アニーシャ・ダダン嬢バストアップ
アニーシャ・ダダン嬢「お仕事ください!」
みこと。様から可愛すぎるアニーシャちゃんを頂きました!
四月咲 香月様、みこと。様ありがとうございます(*^^*)
読んでいただきありがとうございます
(*^▽^)/★*☆♪
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