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ドラゴンズクラウン  作者: niku9
第3章 グリフォン
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新しい生活 2

新しい生活というより、新しい世界?

 今日から本業復帰だ。

 仕事中のルナをどうしようかと思っていたけど、昼行性とは言え幻獣はあまり活発に動き回るものではないことが分かった。


 まだ慣れない場所ということもあって、午前中はわたしについて回っていたが、場所に慣れると管理人室のソファで大人しく待つことが出来た。幼体だからか、昼寝をちょこちょこしているようだ。ついて回っていても、わたしの仕事の邪魔をすることはなくて、書類仕事の時に甘えるように膝に乗ってくるくらいだった。

 本当にうちの子賢い!


 わたしの食事の時間だけど、換毛期でなければ羽や獣毛も抜けにくいらしく、厨房に入りさえしなければ食堂まで同伴は大丈夫だろうという判断になった。誰が判断したって? それはもちろん、食堂の主たるおばちゃんたちだ。


「あらあらあらあら、可愛いわねぇ」

「本当に、小さいわねぇ」

「でも賢いわぁ、ほらちゃんと言うこと分かるのね」

「いい子ねぇ。おばちゃんたちと遊びましょ」

 やはりというか、この場の主が誰かということを敏感に察知しているのか、ルナはおばちゃんたちに可愛がられていた。その世渡り上手さを、少し分けて欲しいと思う。


 おばちゃんたちも剛毅で、巷では恐れられている幻獣だが怖くないのかと聞いたら、「あら、だって可愛いんですもの」と声を揃えてルナを迎え入れてくれた。

 さすが、この寮の騎士たちをして「魔窟」と言って近寄らない植物園を、「所詮植物」と言って踏み入っていく勇者なだけある。

 あれは、まだわたしも体験していないから知らないが、人伝の話だと生きた蔦とかが動物を捕らえたり、防御していないと毒で痺れたり眠らされたりするらしい。


 話はズレたが、ルナはおばちゃんたちの休憩時には、一緒に面倒を見てくれることになったのは大変ありがたいことだった。

 あ、もちろん、わたしのことはおばちゃんたちにちゃんと話したよ。


 おばちゃんたちは、わたしの話を最後まで聞いてくれて、わたしのために「一人でよく頑張ったわねぇ」と泣いてくれた。やだ、わたしまで泣いてしまったじゃないか。

 それは悲しい涙じゃなくて、おばちゃんたちの優しさに感動した涙で、ルナはそれが分かっているらしく、「良かったね」と鳴いてほっぺたを舐めてくれた。

 ああ、本当にこの寮で働けて良かったなぁ。


 でも、その話の流れで驚いたのが、何とおばちゃんたちもうすうすわたしが女の子なんじゃないかと思っていたということだ。魔術師みたいに魔力の流れが変だとかそういうのを感じた訳じゃなくて、「何となく勘?」と言っていた。最初は見た目が男の子だったからわたしから説明しなくても男の子だと思ったようだったけど、言動を見ていればどこか女の子のような気がしていたとのこと。


 そう言えばイヴリンさんもそんなことを言っていたような。

 あれ? わたしの男の子らしくする努力って……。

 いや、寮の騎士は気付いていなかったから、きっと勘の鋭い女性が多いんだ。……きっと。


 あと、一人称についても、「わたし」と言ってもあまり違和感は無いとお墨付きをもらった。そっか、もう自分を無理に男の子に寄せる必要は無くなったんだ。

 そう考えると気持ちがやけに軽く感じる。大丈夫とは思っていても、やはりどこかで無理をしていたんだと思う。


 その夜、アレクさんとセドリックさんが連れ立って帰って来た。玄関で出迎える形になったが、相変わらずルナがアレクさんを見つけると抱っこされに行く。

 何か、主の不在時にわたしが預かっているように見えるよ。


 ま、それはさておき、わたしは一人称を改めることを話した。

「これからは、『僕』ではなくてちゃんと『わたし』と言おうと思います」

 思えば寮には自分を「私」呼びする人結構いるし、言ってから、そんなに宣言するほどの事でもなかったかも、と少し後悔していると、アレクさんがポンポンと頭を撫でてくれた。これは変わらず続けてくれるらしい。


「お前が気を張らずに生活できるようになったのなら、俺達も喜ばしい事だ。今まで本当にすまなかったな」

 あうぅ。アクレさんの優しさが内臓の隅々まで行き渡るようだ。


「まあ、俺が黙っていたのも、君に圧力になったかもしれないしね。良かったね、ノア」

 あれ? またまたセドリックさんがまともなことを言っている。最近おかしい。もしや、目の前にいるのは、セドリックさんの皮を被った別人なのでは……。


「ほら、心に仕舞っておくべき言葉が口から出てるよ。俺がまともなこと言わないと思っている根拠って何なんだろうね」

「ご自分の胸に手を当てて聞いてみてください」

「もう、ここまで来ると、憎まれ口も愛情に感じるよね」

「いや、全然違うので。憎まれ口は憎まれ口です」

「……」

 セドリックさんの笑顔が、何故か殿下の笑顔に似ているものになった。そしてギュギュっとわたしの両方のほっぺを無言のまま指で摘まみ上げる。暴力反対。


 フッと、笑みが漏れる音がして、見てみるとアレクさんが吹き出していた。あまりにも珍しい光景に、わたしもセドリックさんもギョッとしてアレクさんを見た。


「いや、二人とも可愛いな、と思って」

 思わぬ言葉に、絶句した。

 そんな固まるわたしたちを見やると、そっとルナを下ろして、セドリックさんとわたしのほっぺをそれぞれ優しく摘まんだ。


「今度から俺も、いじめてみようか」

 言葉とは真逆の、慈愛に満ち溢れた微笑みを浮かべなさった。

 わたしとセドリックさんは、同時に膝から床に崩れ落ちる。


 天使か? いや、神か、この人。


「ノア、今俺は、新しい扉を開けそうになったよ」

「わたしもその扉を潜りそうです」

 セドリックさんの告白に、わたしも同調する。同士よ! 初めてセドリックさんと心が通じた気がする。


 そんなわたしたちを、アレクさんは心配そうに「大丈夫か?」と気遣ってくれる。マジで神?


 アレクさんのほっぺいじりを見たからか、ルナも「わたしのもやって」とばかりにアレクさんに主張し、両手で頬をこしょこしょしてもらった。

 ルナを見るアレクさんの微笑みが、既に聖母級に達している。

 嗚呼、うちの子とアレクさんが尊すぎる。


 もう、やめて。わたしたちをアレク沼に引きずり込まないでぇ。

 わたしとセドリックさんは、共に血涙を流して、目の前で繰り広げられる美しい光景から目を背けた。


 セドリックさんの扉が開いて、わたしと新しい世界に旅立って行く前に、わたしたちは何とか解散して心の平安を取り戻すのだった。


 わたし以外のほっぺにアレクさんがいじわるするのは、ちょっとモヤッとしちゃった、というのは誰にも内緒だけど。

危うくアレクを巡るノアとセドリックの三角関係が始まるとこでした。

人を愛することは相手の性別など関係ないと作者は思っています。

が、この小説はキーワードにBL付けてないから、ダメなんだ、セドリックよ。

小説掲載の看板に偽りアリになるとこだった。

ふぅ、危ない危ない。


それと、ノアの一人称が元に戻りました。

ちょこちょこ間違って投稿しそうになってましたから、ちょっと安心?

決して、作者都合で一人称を改めた訳じゃないですよ。面倒くさいとか思ってないですよ。

ノアの新しい生活への心情として必要だったんです。


次話からですが、恐ろしい事にお話しのストックが無くなりました。

よって、少し書き溜めのお時間をいただきたいと思います。

まだ、あの兄や元婚約者候補? とか、冒険者のおっちゃん、マッドサイエンティスト、後はパパとか出てきてないですもんね。

まとまれば少しずつ流して行きたいと思いますので、毎日更新ではなくなりますが、「見てやってもいいよ」という方は、また応援、閲覧よろしくお願いします。


感想もお待ちしてます。

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― 新着の感想 ―
アレク!!言いえて妙! ルナちゃんとライバルにならないといいね。
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