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ドラゴンズクラウン  作者: niku9
第3章 グリフォン
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グリフォン一家とのご対面 2

グリフォン一家と一夜を明かしました。

さて、あの人たちもそろそろ追ってくる頃だと思われますが。

 夢心地の中、後頭部をもしゃもしゃされる感触でわたしは目覚めた。

 寝ぼけまなこをこすりながら起きると、お母さんがわたしを起こしてくれたようだ。


「おはよう」

 挨拶すると、お母さんも鳴いて挨拶を返してくれた。翼をどけられると朝の冷え込みがどっと襲ってきて目が覚めた。ああ、お母さんのお布団に戻りたい。


 いつものベッドとは違うのに、グリフォン母さんのおなかは魅惑のふかふかさだったので、わたしはどうやら寝過ごしたらしい。辺りは結構明るくなっている。

 水筒の水で布を濡らして顔を拭って口を漱ぐと、少し目が冴えてくる。


 昨日の残りの携帯食を仔グリフォンと分けながら食べて朝食を済ますと、周りの様子を少し伺う。

 やはり周りは深い森で、グリフォンの着陸のためなのか、巣の周りが少し開けた場所になっている。


 朝から元気に仔グリフォンがわたしの周りを跳ねまわっているのが微笑ましい。

 わたしの手でじゃれる仔グリフォンを構いながら、ふと卵を見ると、卵がグラッと動いた。


「ねえ、今動いたよ」

 お母さんにわたしが注意を促すと、知っているよとばかりに目を細めた。

「もしかして、生まれるの?」

 尋ねると、「くえ」という肯定が返ってくる。お母さんは卵が孵る気配を感じてわたしを起こしてくれたようだった。


 孵化の瞬間を逃すまいと注意深く卵を見つめていると、中から「コンコン」と音がした。

 その後からは早かったと思う。殻の一部にヒビが入ると、そこからちょこんと黄色い嘴が覗いた。その穴がどんどん広がっていって、中から仔グリフォンよりも一回り小さい雛が現れたのだ。まだ体は濡れていて羽も体毛もまばらに見えるが、仔グリフォンと同じく、白い毛並みに背中の模様が少し黒っぽい感じだ。仔グリフォンよりも少し黒い毛が多いかも。


 まだ脚がしっかりしていないのか、すぐに巣にペタンと転んでしまう。お母さんがそれを嘴で助け、身体に付いていた殻を避けてあげていた。雛はすぐにお母さんを認識したのか、大きな嘴によちよち歩きで縋りつく。

 仔グリフォンも、自分の弟妹であることが分かるらしく、近寄ると、濡れた羽毛を溶かすように、あむあむと嘴で梳いていた。


「わたし、萌え死にしそう」

 巣の中でのたうち回りそうな自分を必死に抑える。生まれてこの方一番の忍耐力を使ったかもしれない。


 そんなわたしに気付いたのか、お母さんがわたしに同じくあむあむと毛づくろいをしてくれた。それを真似するように仔グリフォンがわたしの手をあむあむしてくれる。続いて雛もトコトコとやってきて、わたしの膝にペタンと寄り添った。

 我が人生に一片の悔い無し!


 このままでは興奮して鼻血が出かねないので、わたしは一旦心を落ち着けることにした。

「ちょ、ちょっと待ってて」

 わたしは三匹(羽?)に声を掛けると、急いで巣から降りて近くの木に駆け寄った。気持ちを鎮めるために、わたしはその木に抱き付き、ひんやりとした樹皮で熱を下げる。


 そこでわたしはふと視線を上に向けた。

 ん? 誰かと目が合ったよ。


「え、ええええ!?」

 木の上には、変な仮面をつけて外套を目深に被った人がいた。その人はわたしの悲鳴を聞いて、「チッ」と舌打ちしたようだった。もしかして隠れてたのかな?


「あ、あれ? ヴィクター君?」

 何とは無しに思ったままを口に出して、自分でもびっくりした。それには相手もびっくりしたようで、思わず木から落ちそうになっていた。見つかった時よりも動揺している。

「あ、危ないよ!」

 わたしが咄嗟に木の下で受け止めようとしたが、ヴィクター君は何事も無かったかのように、ストンと地面に着地した。ずいぶん身軽でいらっしゃること。


 突然現れた人間に警戒したのか、巣からお母さんの「グルル」という威嚇の声が聞こえる。

「待って、大丈夫。知ってる人だから心配しないで」

 バタバタと手を振ってわたしが訴えると、お母さんは唸るのを止めてくれた。


「ごめんごめん。どうやらお母さんが僕を心配してくれたみたい」

 ヴィクター君に向き直って謝る。朝になっていて良かった。ヴィクター君はわたしが女の子であることを知らないから、一人称も気をつけなくちゃ。

「……ほんとに、何なの、あんた」

「ん?」

 ヴィクター君は俯いてプルプルと握った拳を震わせていた。


「捜索隊は、あんたが勝手に攫われたせいで、一触即発状態だったんだよ! エインズワース隊長はあんたを探すのに隊を抜けようとするし、それを止めるのにグレンフィル副団長はエインズワース隊長を殴るし、みんなあんたのせいで隊が崩壊するところだったのに、本人はこんな所でのんびり朝寝坊するぐらい馴染んで!」

「ええ!?」


 責任感の強いアレクさんの行動もだけど、セドリックさんがアレクさんを殴った? 俄かには信じられないけど、ヴィクター君が嘘をつく理由も無い。


「どうしよう。みんな大丈夫なの?」

 オロオロするとヴィクター君が鼻で笑った。

「何とかグレンフィル副団長が説得して押しとどまったよ。僕の魔力を伝ってもうじきここに辿り着くはずだ」

 安堵に思わず大きなため息をつく。


「でもあんたは覚悟しておくんだな」

「へ?」

「隊が分裂寸前になるまであんたのことを心配したんだ。みんなタダであんたを許すとも思えないけど?」

 筆頭にあの人の顔が浮かびました。プラチナブロンドの悪魔です。

「……はい」

 不可抗力だったんだよ。ここに来たことは結果良かったと思うけど、わたしだってできれば穏便な方法で来たかった。でも、わたしが迂闊に攫われたのは事実だ。


「で、……」

「ん?」

「なんであんたは僕だって分かったの?」

 少し怒ったような声でヴィクター君が問いかけてきた。

 そういえば、変な面を付けてるし、髪も見えないくらい深くフードを被ってる。声もなんだか前の記憶よりも変な感じだ。でも、ヴィクター君はヴィクター君だよね。


「普通分かるよ」

 何気なく言ったのに、ヴィクター君は殺気のような怖い雰囲気を醸し出した。

「……ホント、なんなの、あんた」

 さっきも聞いたような言葉だったが、響きが何となく諦めに似た雰囲気がった。


「あれ? そういえば、なんでここにいるの? ヴィクター君」

 ふと疑問に思ってポツリと言うと、ヴィクター君がピクッと動いた。


「お……」

「お?」

「おつかいの途中で、見かけた……」

「そっか。ごめんね、大切な用事の途中だったのに、僕の為に寄り道させちゃって」

 言った途端、ヴィクター君は何かに絶望したようにしゃがみこんだ。


「どうしたの!? 疲れたの!?」

 慌てて助けようとすると、サッと手を出されて止められた。

「放っておいて。単なる自己嫌悪だから」

 俯いたまま、ヴィクター君はブツブツと何かを呟いているが、背後からお母さんが「グルル」と低く唸る声が聞こえた。ヴィクター君に対して発した唸りと似ている。何か近付いてきているのかもしれない。


「ヴィクター君、ごめん。僕と一緒にこっちにきて」

「ちょ、ちょっと!」

 そう言ってしゃがみ込んだヴィクター君の手を引っ張って、お母さんの所まで連れて行った。ヴィクター君は慌ててたけど、お母さんの傍が一番安全だ。

 もし、カトブレパスのような魔物が出たら、わたしでは無理だ。ヴィクター君は殿下のお付きだから、ある程度戦いの心得はあるだろうけど、魔物に対してどれだけ有効か判断がつかない。


 お母さんの元へ連れて行くと、少し緊張した声で仔グリフォンが鳴く。それに釣られて雛もピーピーと鳴くが、わたしが撫でると大人しくなった。そして、ヴィクター君の匂いを嗅ぎ始めた。ヴィクター君は非常に居心地が悪そうだったけど、追い払うようなことはしなかったので一安心だ。動物が嫌いな人って結構多いからね。


 雛たちがヴィクター君の匂いを嗅ぎ終わった頃、お母さんの唸り声が大きくなった。わたしの耳にも何かが近づく音が聞こえてきた。

「あ、もしかして……」

 その音は、アレクさんに拾われてから、少し聞き慣れてきた音のように聞こえた。人の歩きに合わせた軽鎧の擦れる音だ。


「お母さん、大丈夫。知っている人たちだよ」

 お母さんの首筋を撫でると、唸るのを止めてくれた。でもまだ警戒は解いてないみたい。

「そっか、ヴィクター君の後を追ってきてくれたんだ」

 わたしがヴィクター君の方を向くと、お母さんに劣らず警戒する雰囲気を出している。


「僕はもうここを離れる」

「どうして?」

「あんたさ。あの人たちに、僕の名前を絶対に出すなよ」

「? ……何で?」

「お……」

「お?」

「お使いの途中で、寄り道したと知られたら、怒られるから」

「ああ、そっか!」

 分かるよ! 偉い人のお使いで寄り道なんて、すっごい怒られるもんね。


 わたしはすぐに理解を示したのに、何故かヴィクター君は再びめちゃくちゃ脱力していた。その格好が気に入ったのかな?


「僕は本来出来る子。僕は本来出来る子。僕は本来出来る子」

 何か呪文のようなものを唱えていたけど、急に立ち上がるとわたしを睨みつけた。

「僕の事を漏らしたら、相応の覚悟をしてもらうよ」

 相応の覚悟って何だろ。良く分からないが、真剣な様子から聞き返すことも出来ずにわたしは頷いた。


 どのようにしろ、わたしはヴィクター君のことを話さないよ。お使いの寄り道は、絶対に人に知られてはいけないものだ。


 それを見ると、ヴィクター君は何も言わずに巣から離れた。ずっと見ていたつもりだったのに、ヴィクター君の姿はいつの間にか煙のように消えていた。


 凄い、殿下の従僕。

ヴィクター君再び。

何だか、どんどんヴィクター君が可哀想なことになっています。

彼は本当は、どこの国でも欲しがられる程、とても優秀な諜報員です。

おかしいですね。

頑張れ~。

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