調査隊出陣 1
やっとのことでグリフォン捜索に出かけます。
でもちょっと、不安な出だしですね。
前話の投稿日間違ってアップしました。
基本おっちょこなので許してください。
もうこうなったら前倒しで行きます。
この日は朝から快晴だった。
わたしはあの時と同じ旅装で集合し、昨日作った食事の一部を第二分隊の人に預けた。
今日は、いよいよわたしの財産を掻っ攫って行ったグリフォンの調査に向かう。わたしが出会った場所までは徒歩でも半日も掛からない行程だけど、そのまま帰ってくるわけにはいかないので、野営の準備もしている。
遭遇情報の多い場所を重点的に捜索し、徐々に森の方へ捜索範囲を広げていく予定だ。
グリフォンは、他の動物の気配を嫌がるかもしれないので、馬は最低限の荷馬車だけにし、全員徒歩での出発となる。
「あ、オルグレン団長、おはようございます。今日はよろしくお願いします」
朝一でオルグレン団長を見かけたので挨拶をする。団長なのに早くから隊員と一緒に準備をしている。本当に人間として見習いたい人だ。
「ノア、協力感謝する」
「いえ、自分のことでもありますので。わたしの方こそ感謝しております」
「ねえ、俺のこと綺麗に無視するのやめようよ」
今日は探索日和だ。頑張るぞ!
「聞こえてるでしょ。もう実力行使しちゃうよ?」
「おはようございます。セドリックさん」
「……こんなに邪険にされるの初めてだよ」
腰を抱こうとするセドリックさんの魔の手を逃れ、挨拶をする。憎々し気にわたしを見るセドリックさんを尻目に、一歩オルグレン団長の方へ歩み寄った。
「一応君は、成人したばかりの民間人ということで、安全を配慮し、感知力が一番厚い私とグレンフィルと同室で休んでもらうことになっている。もちろん、中は衝立で区切らせてもらうが」
「ご配慮いただきまして、お礼申し上げます。安心して休むことができます」
「ん。君は旅慣れているようだが、兵団の遠征とは勝手が違うだろうから、疲れや不安がある時は遠慮なく言ってくれ」
「はい。皆さんのご迷惑にならないようそうさせていただきます」
旅慣れてると言っても、一応冒険者のおっちゃんとの旅は、体力の無いわたしに合わせてくれていたもので、確かに騎士の行軍に着いていけるとは思ってはいない。
だから、無理をして体調を崩す前に、きちんと自分の限界を伝えなくてはならない。女性の体よりは随分と体力が付いたが、玄人の体力系職業の人と同等とうぬぼれるつもりはなかった。
そのことを配慮してか、わたしは民間人ということもあり、夜間の見張りを免除してもらっている。まあ、このあたりはオルグレン団長がわたしの呪いが解ける時間があるのを隠すため、うまいこと隊の人に言い訳してくれたおかげのようだ。
実際、わたしが見張りをしても役に立たないけどね。
「ノア」
オルグレン団長との話を終えると、背後から聞き覚えのある声がした。
「あ、アレクさん。よろしくお願いします」
「ああ」
頭を下げると、アレクさんが手を伸ばした。頭を撫でられるのかと思ったが、何故かアレクさんは手を止めてそのまま下ろしてしまった。
え? もしかして何か髪に付いてる?
挨拶替わりのなでなでが無かったので、握手しようと手を出すと、一瞬躊躇われてしまった。だが、思い直したように軽く握手をして、サッと手を引かれてしまったので、わたしはもやもやでいっぱいになった。
「俺はお前の前方に配置になっている。何かあればすぐに言ってくれ」
少し事務的にそう言うと、例の眉間に谷間を作った表情でわたしを見る。ここ数日見なかったその表情に、胸の奥がツキンと痛む。わたしが余程ボケっとした顔をしていたのだろう。アレクさんは気まずげに視線を外すと、「ではまた」と言って隊列の方へ戻ってしまった。
釈然とせず掌を見るが、特に汚れているわけでない。何かアレクさんの気に障ったことをしたのだろうか。そういえば、このところ、あまりアレクさんと接触していない。
「ノア、どうしたの? 変な顔してる」
今度はセドリックさんが声を掛けてきたので、見ていた掌をセドリックさんの裾で拭った。
「何してるの?」
「セドリックさん。わたしの髪に何か付いてますか?」
「……別に、何も付いてないよ」
そう言ってくれたが、わたしは用心のために一度自分の髪を手で梳いて掌を見てみた。やはり何も付いている様子はない。その掌をセドリックさんの服のさっきとは違う場所で拭った。
「ねえ、何? 俺で何を拭ってるの?」
「何かです」
「恐怖しかないんだけど」
拭いてみても、セドリックさんの服には何の汚れも無かった。いっそ汚れていたのならそう言う理由で避けられていると思えたのだけれど、どうも違うようだ。
少ししゅんとしたわたしに気付いたのか、セドリックさんが珍しくニヤニヤしていない顔でわたしに言った。
「アレクと喧嘩した?」
何だろう、変に目敏いところは、今発揮しなくてもいいのに。
「してません。けど、ちょっと前から、アレクさんから少し距離を取られている気がします」
初対面から隣で眠った間柄だからか、アレクさんとの距離感は誰よりも近かった。セドリックさんは別として。
それが少し避けられているような気がして、それだけでわたしの気分は沈んでいた。
「うーん。アレクは、あんな強面だけど、一度面倒を看た人間を放り投げる男じゃないんだけどなぁ。何か理由があると思うけど」
セドリックさんは、自分はチャラチャラしているが、他人をちゃんと評価することができて、友達を大切にする人だ。最初にわたしにいきなり魔法を使ったのも、寮に怪しい人間を入れないためだったし、その後補佐官さんを案じてわたしに発破をかけたのも友達を思いやってのことだ。
そのセドリックさんが言うのなら、アレクさんの態度にも何かあるのだろう。
「もしかして、君の秘密に気付いた、とか?」
声を低めてわたしにだけ聞こえるように言った。
「そ、そんなはずありません。一度だって疑うような素振りは無かったし……」
「うーん。アレクは、野生動物に近いから、結構勘が鋭いんだよ。それに人の事を良く見ているから」
うん、それは知っています。わたしの怪我も一番最初に気付いたのはアレクさんだったし、わたしが困っていた時も一番最初に手を差し伸べてくれたのはアレクさんだった。
もしかして、本当にわたしが女の子だって気付いて、急に距離を置いたのだろうか。それとも、黙っていたことに腹を立てているんじゃ。
「大丈夫だよ。アレクは、事情のある隠し事を根に持つような男じゃないよ」
わたしの心配に気付いたのか、セドリックさんがアレクさんの代わりにポンポンと頭を撫でてくれた。
あれ、変だ。セドリックさんが優しい。
アレクさんには隠し事はしたくない。でも、今の親しい関係が、わたしを男の子だと思っているからこそ成り立っているものだったら、この距離は崩れてしまうだろう。今以上に距離を置かれる可能性の方が高い。
「ねえ、ノア。君が何を思っているかわからないけど、それはきっと、今考えても答えが出ることじゃないよ。だったら、今はグリフォンと君の財産のことを考えなよ。二つの事を同時にやろうとすると、どちらも失敗してしまうものだよ」
そう言うセドリックさんは、何故か今まで見たことが無いくらい寂しそうな顔をしていた。何だろう、セドリックさんの言葉は、そのまま自分に向けて言っているように聞こえた。
いつものようにあしらう事も流す事も出来なくて、わたしが神妙に頷くと、セドリックさんがいつもの陽気な笑顔を貼り付けた。
「さ、じゃあ前向きに頑張ろう。そろそろ出発だ!」
言って背中をポンと叩かれる。
どういう訳か、セドリックさんはわたしを元気づけようとしてくれているようだ。なんだか調子が狂う。
でも、それは嫌なことではなくて、わたしは少し困惑しながらセドリックさんの背中を追った。
チャラくないセドリックさんは、何か変ですね。
セドリックさんだって、チャラいだけの人生では無かったという……ごにょごにょ。
活動報告更新しました。
なんか弱った感じになってますが、作品と合わせてご覧いただけると、「こいつ、こんなやつなのか」とご理解いただけるかと思います。
あと他作ですが、「やさしい魔女の眠る国」というお話も更新中です。お暇があったらお立ち寄りください。
また明日!




