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ドラゴンズクラウン  作者: niku9
第2章 騎士団寮
32/109

個人の尊厳と公共施設について 1

ちょっと短めの投稿です。

 王都へ来てから二週間が経ちました。


 仕事は順調で、補佐官さんからは最初の休みの日の前に一週間分のお給料が支給され、当面の生活に必要な小物は買いそろえることができた。と言っても、冬市の最中、迷子にならずに王都を歩ける気がしなかったので、王宮に来る出入りの業者さんに必要なものを頼んだだけだけど。


 なので、最初の休みは、わたしでも行ける図書館に行ってみた。アシュベリーの蔵書は国一番だと思っていたけど、あそこには魔法の関連の書籍ばっかりで、非常に偏った図書の宝庫だった。だから、伝記や一般大衆用の冒険ものやロマンスもの、天文から経済、何でも揃った王都の図書館はわたしにとっては宝の山だったのだ。


 その夜には、セドリックさんが酒飲みに誘おうとしたので、丁重にお断りをし、昼間に趣味で作った簡単な食事で済ませて、読書に明け暮れた。


 次の休みの日も似たような過ごし方をしていた。結局、第二分隊の出動があって、わたしの休みの日でお茶の実験ができなかったからだ。急な出動だったから、それに合わせて補佐官さんの仕事も増えたらしい。

 休み自体は有意義だったのだけれど、急な出動と聞いて少し気にはなっていた。


 そんな中、夜になって補佐官さんとセドリックさんが連れ立って部屋にやって来た。

 食事を終えた後なのだろう。仕事着ではなく、私服で寛いだ格好だった。


「夜分にすまないな」

「いいえ、特にすることも無かったですし」

 女神の月が出るまでまだまだたっぷりと時間があるので、わたしは心配することもなく管理人室へ二人を招いた。いろいろと不便で簡易椅子だけ増やしたので、二人にはそこへ座ってもらう。


「例の茶の実験を、急だが明日の夜にやってもいいだろうか」

 補佐官さんが言うには、ちょうど明日の夜にこの全員の予定が空いたらしい。アレクさんは近場の仕事でここ二、三日見かけなかったが、明日の朝くらいに帰ってくるとのこと。わたしは無事にアレクさんが帰って来ると聞いて安堵の息をついた。


 補佐官さんもその出動の処理が終われば身体が空くらしい。セドリックさんはと言えば、明日は非番なので問題ないようだ。

 わたしは問題ないと頷いた。


「それで、明日中に用意しておいた方がいいものはあるか?」

 わたしの予定と準備についての確認で来てくれたようだったが、もしかすると、少しソワソワしていたわたしを気遣って、アレクさんの帰還を知らせに来てくれたのかも。

 嬉しそうな顔をしてセドリックさんにいじられる前に、わたしは必要なものを検討してみた。


「えっと、どういう効能を試したいかによります。疲労回復、鎮静効果、視力回復なんかの状態異常回復。内服ですぐに効果が分かるのはこのくらいでしょうか」

「そうだな、取りあえずはその三つの効能で試してみよう」

「であれば、手持ちの在庫で大丈夫そうです。外傷の回復はさすがに試すことはやりたくないので」

 実験のためにわざわざ傷をこさえるようなことはしたくない。それをみなさんもわかってくれているのか、うんと頷いてくれた。


「いずれ、実験の必要があるかもしれないが、それはついでがある時でいい」

 補佐官さんは穏やかに言ってくれた。そういえば、補佐官さんの顔色は随分と良くなっている。


 いくつか話をした後で、今日は切り上げることにしたらしい補佐官さんが、立ち上がりながら挨拶してくれる。

「すぐ帰る予定だったが、随分時間が経ってしまったな。もう休むだろう?」

「ええ。お言葉に甘えさせていただきます。では皆さんもおやすみなさい」

 気付けば簡単な打ち合わせのはずが、一時間くらい経っていた。

 意外と雑談に花が咲いてしまった。


「じゃあ、俺も早めに休もうっと」

 誰も聞いてないけれど、セドリックさんも早々に休むようだ。それを見て補佐官さんが訝しそうな顔をする。

「セドリック。お前明日非番じゃなかったか?」

「そうだよ」

「珍しいな。休み前に街に繰り出さないなんて」

「そりゃあね。明日、朝早くから用事が出来たんだ」

 なんか、セドリックさんがウキウキしている。怪しい。


 それにしても、セドリックさんって、休み前は街で飲み明かしているんだ。想像通りの華やかな私生活のようで何よりだ。わたしを誘わなければ。


「気になる子に、ちょっとした贈りものをしたいと思ってね」

「……ほどほどにな」

 呆れたように補佐官さんが言うが、驚かないところを見ると、女の子に贈りものをするのは珍しいことではないようだ。まあ、セドリックさんの交友関係に興味は無いけど。


「……興味なさそうだね。何となく、君が思っていることが分かるようになってきた」

 少し不機嫌そうに言うが、急にニコッと笑顔になった。やだな、この笑顔。


「まあ、いいよ。じゃあ、おやすみ。ふふふ、明日が楽しみだなぁ」

 結構な上機嫌ぶりでセドリックさんは去っていった。最後にわたしの方を意味深に見ていったが、何だろう、不安しか起きない。


「……セドリックさん、上機嫌でしたね」

「うむ。よほど気に入った相手でも見つかったのか」

 補佐官さんもセドリックさんの不気味さに感じるものがあったようだ。


 少どころではない悪寒を感じながら、その日はそれぞれ部屋へ引き上げることにした。

不穏な空気です。

まあ、何も無いわけ無いですね。

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