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ドラゴンズクラウン  作者: niku9
第2章 騎士団寮
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素敵な住環境のために 2

Athlete's foot まだ続きます。

今回はおとなしめです。

 スライム液講義のちょっとした準備を終えて時間が余ったので、このまま応接室へ行くか食事を取るか悩んでいると、仕事帰りのアレクさんと会った。どうやら食堂に行くようだ。


「あ、アレクさん。お帰りなさい」

「ああ、ただいま。そういえば、何か集まりがあると聞いたが」

「はい。いろいろとこの寮の問題点が分かって、この後八時からその講義をしたいと思ってます。アレクさんもぜひ来てください」

「張り切っているようだな」

「ええ。初めての大仕事ですから」

 ちょっと胸を張って言ってみる。アレクさんが笑いながら「そうか」と言ってくれたので、嬉しくてニコニコする。


「ちょっと待った、アレク! その笑顔に騙されるな! その会に参加すると、水虫認定されるぞ!」

 そこにセドリックさんが大声で割り込んできた。その後ろには補佐官さんもいる。


「言いがかりですよ、セドリックさん。今なっていない人だって、保菌者の可能性があるので、ここにいる人全員『保菌者(クロ)』です」

「くそっ、証拠もなしに決めつけるなんて、なんて横暴なんだ!」

 口調が乱れていますよ。それに、セドリックさんはわたしに証拠なしのうえに拷問しましたからね。


 セドリックさんの意見なんて無視してもいいですが、言われてみれば講習受けたら水虫みたいな風潮になったら人が来ないと困るので、仕方なくですが補足しておきましょう。


「大切なのは今とこれからです。過去になっていなくても今後いつなるか分からないんですから」

「分かった」

「そ、そういうことなら……」

「……」

 素直なのがアレクさん、不満そうなのがセドリックさん、悟りを開いたかのように無言なのが補佐官さん。とりあえず三人の参加は決定だ。


 この三人は、団の中でもかなり上の方の地位なので、この人たちが来てくれれば、縦社会の下の人たちも自ずと来てくれると思われる。


「そういえば、補佐官さん。あの携帯食はいかがでした?」

 尋ねると、数舜固まった補佐官さんだったが、そっと吐息のような返事をしてくれた。あれから数回差し入れたけど、一度も返品はなかった。


「……美味かった」

「良かったです。おっしゃってくだされば、もっと作ります」

 どうやら気に入ってくれたようだった。「ああ、頼む」とぶっきらぼうながら次回の約束もいただきました。それにセドリックさんがびっくりしてわたしを見た。なんでそんなに驚いているのか疑問だ。


 携帯食が食べれるなら、ちゃんとした食事もいけるのでは、とわたしは声を掛ける。

「そうだ。せっかくここにいらっしゃるんだから、夕食はいかがですか?」

 わたしが切り出すと、セドリックさんがわたしを疑るような顔で見てきた。何か言いたそうにしているけど、わたしは今補佐官さんと話しているので無視します。


「夕食は、鶏肉のトマト煮込みと具がたっぷりのクリームスープですよ」

 一瞬目を眇めるようにして補佐官さんがわたしを見る。だが、すぐに視線を外すと、本当に微かにポツリと言った。

「……ああ、食べてもいい」

 その言葉に、今度は首がもげそうな勢いでセドリックさんが補佐官さんを振り返った。忙しい人だなぁ。


「そのかわり、お前は茶を淹れろ。あの酸っぱくない方のだ」

「はい、分かりました」

 カモミールの方ですね。了解です!


「じゃあ、夕飯ご一緒していいですか? 僕もこれから食べるところだったので」

「構わん」

 補佐官さん、ずっとわたしと目を合わせないで喋っています。あれだけつっぱねたのに、折れたことを恥ずかしく思っているのかな?

 でも、ゆっくりと食べるご飯の良さを再認識してくれたようで良かった。


「俺も一緒に食べていいか?」

 おっと、アレクさんもそこに参戦してきました。確かにたった今帰って来たような様子なので、夕食はまだだったのだろう。いいですとも。


「じゃあ、皆さん一緒に食べましょう。セドリックさんを除いて」

「言うと思った。本当、扱いが邪険になったよね」

「自業自得です」

 何気にわたしの肩に腕を回そうと寄って来たセドリックさんを躱し、スススッとアレクさんの後ろに隠れる。そんなわたしたちの様子を、アレクさんも補佐官さんも怪訝そうに見ていたが、わたしが食堂に促したのでうやむやになった。わたしはっと、部屋から茶葉を持ってこなくちゃ。


 部屋にお茶を取りに行くと言うと、皆待っててくれるらしい。

 素早くお茶を手に取ると、皆で一緒に食堂へ向かった。

 食堂へ繋がる大きな扉を開けると、中にはまだちらほら食事をしている人がいる。中にはお茶をしながら雑談している人もいるが、わたしたちが入っていくとちょっと静かになってしまった。こんなお偉方が揃うことは滅多にないことなのだろう。特に補佐官さんが。


 わたしはササッと鍋から鶏肉とスープをよそうと、アレクさんと補佐官さんに手渡した。

 真ん中辺りの六人掛けのテーブルに陣取ると、お茶の準備をして遅れたわたしを手招きしてセドリックさんが呼び寄せた。この人、ご飯食べ終わってるくせにここにいるんだな。


 それに何故か、わたしの隣がセドリックさんだ。わたしの向かいに補佐官さんがいて、セドリックさんの向かいにアレクさんがいる。何、この配置。


 皆でお祈りをした後、煮だしの頃合いも良かったので皆のカップにお茶を注いだ。ニコニコして無言の圧力を掛けてきたので、セドリックさんにも仕方なく淹れてあげた。夜だから、あまり濃く入れずに爽やかな風味にしたよ。


 皆お茶を無言で飲む。うん、美味しい。

 補佐官さんは最初ややおっかなびっくりと言った様子で口をつけていた。猫舌なのかな? 一口目で大丈夫だったのか、二口目からは手を止めずに飲み切っていた


 それからご飯にありつくが、空腹だったのでしばらく無言で食べた。皆も黙々食べている。それをセドリックさんが、行儀悪くテーブルに肘を突きながら眺めていた。どことなく嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。


 食べ終わると、補佐官さんがもう一度お茶を所望したので、今度ははちみつを入れたものを皆に配った。

「美味いな」

「茶の腕は認めざるを得ないな」

「本当だね。疲れが取れるようだ。でもなんだろうなぁ……」


 三者三様に感想を言ってくれるが、取りあえずは褒めてくれているようで安心する。何だか最後にセドリックさんから不穏な声を聞いた気がするが。


「ノア。これって何か入ってる?」

「は? ただのハーブティーですが」

「さっきのもだけど、何か、魔力の臭いがするんだけど」

「気のせいじゃないですか?」

「うーん、変だな。そうだ、アレク淹れてみてよ。そうしたら違いが分かるから」

「気は確かか? アレクに入れさせたら普通の茶も毒になるぞ」

 補佐官さんが冷静に酷いことを言う。でも当のアレクさんも頷いてるし。一体どんな淹れ方をしているのか、逆に興味が湧く。っていうか、もっと怒っていいんだよ、アレクさん!


「じゃあ、イライアスが淹れてよ。俺では魔力が強すぎて、何が影響しているか分からなくなるから。気になるんだよ、これ」

「でも、皆で実験していたら講習の時間になっちゃいますから」

 わたしがやんわりと偉い人の雑用を断ると、それでもセドリックさんは食い下がった。


「じゃあ、次のノアの休みの朝食の時」

「どの時間にしても、そんな人の目のある所でやる実験ではないだろう」

 良識派の補佐官さんがもっともな意見を出した。朝の忙しい時に、優雅にお茶の実験などおかしいとセドリックさんも気付いたようだった。


「それに、その日は私とアレクがダメだ」

 補佐官さんがため息をついて言う。補佐官さんとアレクさんも参加決定なのね。


「じゃあ、その次の休みの夜、管理人室に集合で」

「ちょっと、勝手に決めないでください。それに管理人室は書き物机が一つしかないので、お茶なんかできませんから」

 何が何でもというセドリックさんに苦情を申し立てる。仕事外でもセドリックさんと顔を突き合わせるのは疲れる。


「今、俺と顔を合わせたくないって思ったでしょ」

「分かっているなら察してください」

「ほんと、この減らず口、どうしてくれよう」

 そう言って、わたしのほっぺを片手でギュッと摘まんだ。わたしの口が数字の3の形になる。

「やめへくらはい」

 ジト目でセドリックさんを睨むと、向かい側から咳払いが聞こえた。ほら見ろ、変な空気になったじゃないか。


「とりあえず、茶の件は私も気になるところだ。そのうち場を設けて実験してみよう」

 なんと、補佐官さんからも実験の提案があった。


「あの、何かまずいことでもありましたか?」

 さすがのわたしも不安になり、恐る恐る補佐官さんに尋ねた。


「いや、私も体調が回復するような気がしてな。これが茶葉の力なら流通体系を整えたいし、お前の力なら、相当な魔力の持ち主ということになる」

「え、僕は魔力測定器でも中の下程度と判定されました。お茶の可能性が高いですよね」

「それも含めての確認だ。それに茶葉ならば、それを発見したお前に考案料を払って流通させたいからな」

 それはもしや、収入になるのでは!


「やります! ぜひ!」

「あ、ああ」

 わたしの勢いに補佐官さんが若干引き気味に答える。それを見てセドリックさんがニヤニヤしている。

 ハッ、もしやセドリックさんの思うつぼか!


「ふふふん。また、楽しみができちゃったね、ノア」

 わたしは、経済力と精神安定とを天秤に掛け、そしてお金の力に負けた。


「……よろしくお願いします」

だんだんと補佐官さんの態度が軟化してきました。

というより、ほぼ諦念と言った方がいいでしょうか。

ここでも少しツンデレ臭が漂ってきますね。

アレクさんは保護者目線になってきている。不思議だ。


Athlete‘s footをかなりディスった表現をしてますが、それになっている人を敬遠しているわけではありません。

ノアも言ってましたが、誰でもなる可能性があるんですよ。

誰でも、ね。

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