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ドラゴンズクラウン  作者: niku9
第2章 騎士団寮
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素敵な住環境のために 1

ちょっと短めです。

寮の床の何かの汚れの正体が明らかになります。

ここでもあの人の影がちらつきます。

それとじめっとした足に発生するアレが出てきます。Athlete's footというヤツです。

直接的な描写ではありませんが、苦手な方は飛ばしてください。

 さて、騎士団の寮にお世話になってから十日経ちました。 日課のお掃除の時間です。


 まずは目に見えるところからのお掃除ですよ。何日やってもなかなか綺麗にならないので、少し心が折れそうですが、そこは根性で乗り切って見せます!


 ふふふ。埃や蜘蛛の巣や何だか分からない汚れども、今日も覚悟しなさい!


 埃は下に落ちるので、上から掃除していくのが鉄則です。廊下の窓を全部開け放ち、はたきで天井の蜘蛛の巣や埃を払い、箒で掃いて水拭きする。それを四階、三階、二階、一階と順にやっていく。そして、今度は共用の応接室等を掃除していく。暖炉の灰を掻きだし、汚れたソファの上掛けを替え、窓や照明を拭いていく。気付けばいつの間にか夕方になっていた。お昼を抜いてしまった形だが、今日はこのままキリのいい所まで終わらせたい。


 そろそろみんなが帰ってくる時間帯だ。わたしは頭に巻いていた埃避けの三角巾を取って、玄関を見張ることにした。

 あの謎の汚れの正体を今日こそ突き止めるためだ。


 少しして、第一陣が帰って来たようだった。扉が開くと、まず綺麗になった玄関に驚いている様子だった。どうやら遠征でしばらくここを空けていた人のようだ。


 そして一歩踏み出そうとした時に、わたしが大声で制止したのでびっくりしていた。

「ちょっと待ったぁー! 靴、何つけてきたんですか!」

「うぉ、びっくりした。何って、なんもないよな」

「つーか、君誰?」


 周りの人も頷くが、わたしの目は騙されない。先頭の人の足を掴むとグイッと持ち上げる。

 ギャーという悲鳴が聞こえたが無視して、その靴裏の溝に入った物体を指摘する。


「これ! これです! なにこれ!」

 わたしの剣幕にタジタジだったが、隣の人がわたしに足を掴まれてすっ転んだ人の靴底を見て気付いたようだった。

「え、ああ。これは、遠征時の防水用のスライム液だな」


 粘性生物(スライム)由来の液体。わたしはこれを知っている。シェリルの開発したやつだ。靴や雨具に吹きかけると、水をはじくので傷みやすい素材を水分から守るのに大変便利なものだ。

 だが、ちゃんとしたお手入れをしないと、逆効果にもなる。ちゃんと説明書きにあるはずなのに。


「もしかして専用洗剤使わないで落としました?」

「ああ、大体みんな水洗いで拭いて終わりだ」

「防水なのに水洗いで落ちる訳ないでしょ」

「……ああ、そういえば」

 ダメだ、ここの人たち。ズボラ過ぎる。


「これは、洗剤でなければぬるま湯で落とさないと、却って靴底や革製品なんかを傷めるんです。おまけに防水効果だけ微妙に残って蒸れて、酷い時は水虫になるんですからね」

「え!」

 みんな一斉に自分の足を見る。中には靴を脱ぐ人までいる。思い当たる節があるのか、みんなでザワザワしている。

 その後から帰って来た人達にも第一陣の人たちが説明をして、玄関先は一時大わらわになった。


「ノア、助けてくれ!」

「今はいいけど、夏に死にそうになるんだよ〜」

「ああ、お前らのせいか! 俺も移ったんだよ!」

「俺だって、誰かからもらったんだよ!」

 修羅場が出現した。


「皆さん、落ち着いて!今から対処方法教えますから!」

 とりあえず、今いる人に靴の手入れ方法だけを先に伝えて、帰って来た人達にそれぞれ説明するのは面倒なので、食事の後、掃除をした応接室に集まってもらうことにした。帰って来た人には隣室の人に声を掛けてもらう。食堂でやらないのは、食事をするところで水虫の話をしたくなかったからだ。


「おい。今度は一体何なんだ」

 背後から不機嫌な声が聞こえてきた。補佐官さんの登場だ。


「補佐官さん。この人たち、今までスライム液を間違って使っていて、大変なことになっていたことが判明しました。よって、本日午後八時より講習会を開きたいと思います」

「……何がどうなったらそうなった」

「廊下のこの訳の分からない汚れが発端です。水拭きでも落ちないと思ってたら、スライム液の取りこぼしだったんですよ」

「……ああ、そうか」

 わたしの勢いに、同じように補佐官さんもたじろいだ様子だ。わたしはふんすと鼻息荒く訴えて、集会の許可をいただきました。


「じゃあ、さっき言った手順で靴を洗ってください。解散!」

 わたしの号令で皆さん綺麗に行動を始めました。よしよし。

「お前、何でここの騎士たちを掌握しているんだ?」

「補佐官さんもちゃんと参加してくださいね」

「私は、水虫じゃないぞ!」

 補佐官さんが何か言っているが、わたしはこの後のことで頭がいっぱいだった。何か資料を用意した方がいいかな?


「あれ、イライアス、怒鳴ってどうしたの?」

「出た。女性の敵」

「ん?なんのこと?」

 現れたのはセドリックさんだ。

 セドリックさんもしばらく寮を空けていて久しぶりだったが、わたしは不信感を顔に一杯湛えて、ジロジロとセドリックさんを上から下から見回した。数日前の所業、忘れてないからね!


「何? 俺の魅力にやっと気付いた?」

「セドリックさんって、スライム液使ってます?」

「綺麗に無視するよね。使ってないよ」

「水虫ですか?」

「……君って結構直球で失礼だよね。美人は水虫なんてならないよ」

 自分で美人とか言ってる。まあ、確かに美人だけど。


「じゃあ、八時に応接室へ来てください」

「何で?」

「スライム液と水虫の講習会をします」

「何!? 今、サラッと俺のこと水虫認定したよね!?」

「という訳で、皆さん八時にお集まりください」

「ちょっと! 人の話聞いてる!?」

「無駄だ、諦めろセドリック」


 さあて、忙しくなるぞ!


 いざ、快適な生活空間のために!

ノアのコミュ力高いが故のコミュ障が発症していますね。

後2話くらいこんな話が続きます。


また明日!

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