ヤツ
お久しぶりですねェ!?
「…?なんだ…?」
自室のベッドの上でぼーっとしていると、何やら物音が聞こえた気がした。最初は鳥か猫か何がだろうかと思っていたが、どうやら違うようだ。なぜなら、
「これは…声か!?」
そう、ヒトの声の様な物が聞こみえた(気がする)のだ!
「俺の他にもまだ誰か居たのか!」
そう思って窓から外を確認する。俺の部屋は一軒家の2階だから見渡しはいい。
しかし、探せど探せど近場には相変わらず誰もいなかった。
「確かに聞こえたと思ったのに…」
色々ありすぎて俺も頭がおかしくなったのか、とまたベッドの上に戻ろうとした時、今度は先程とは違いハッキリとした声で聞こえてきた。―頭の中から。
『これで下準備は完璧だね。特異点は超えた。向こうの住人もこちら側への移動は完了している。後はシステムを起動するだけだ』
『そう…じゃ、早速やってちょうだい』
『ハイハイ。まったく、せっかちだなぁ』
なんだこれ…頭の中に直接…!?テレパシーの能力か!?この声は…女と…子供?性別は分からないが…
『世界を救うためなの!早くして!』
『りょーかい』
「?」
何を言ってのかは分からないが、俺以外にも人が居たのか!
その事にとりあえず安堵し、コンタクトを試みる。これが思念系…テレパシーの能力ならおそらく双方向でのやり取りが出来るはず。
「おーい!誰か居るのか!?応答してくれ!」
だが、俺の声は向こうにはつたわらなかったらしい。2人で話を進めてしまっている。
『システムはもうこの世界になじんでいる。最後に確認はするかい?』
『…いいえ、その時間ももったいないわ。…お願い』
俺の声が届いてないのか!?それに一体何の話をしてるんだ。システムってなんだ。
すると、また別の機械的な声が聞こえてきた。
『システム、ダウンロードを開始します。完了までおよそ7秒。5秒前…2、1、0。ダウンロード完了。続けて、システムのインストールを開始します。完了までおよそ11秒』
「おい!聞こえないのか!?返事をしてくれ!」
そうこうしてる間にも向こうで勝手にやり取りが進められていく。そして―
『インストール完了。オールグリーン。システムを起動します』
その言葉と同時に、俺は激しい頭痛と目眩、吐き気に襲われた。
「うぷっ…なんっ…こ…」
慌ててトイレに駆け込もうと一階に降りようとしたが、目眩のせいで階段を踏み外してしまった。
(あ、やば、これ、死…)
それがその日、おれが最後に見た景色だった。
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「……!?ッここは!?」
なんてことは無い、ただの家だ。しかし、たしか階段を転げ落ちたはずだったがよく無事だっな俺…。いや、ちょっと頭は痛いけど。
痛む頭を擦りながら冷蔵庫へ向かう。なんだか妙に暑いな、むわっとする。こういう暑さ苦手なんだよなぁ。それのせいか喉の渇きが酷い。いちごミルクあったかな。
「…ないじゃん」
仕方がないのでコーヒー牛乳で我慢しよう。
パックを開けて、ストローを探すのもめんどくさいので直飲みする。どうせすぐ飲んでしまうしな。
しかしさっきのは一体なんだったんだ?せっかく人が居るのかと思ったのに。テレパシーなのかとも思ったがこちら側からのアクセスは出来てなかったみたいだし、何やら訳の分からん事をずっと言い合ってたしなぁ…
それに向こうの住人を移動させた、とか言ってたけどこれってまだ生き残りが居るって事か?だったらまだ人に会える望みはあるんだけどなぁ。
まさか大規模なテレポート能力で地球の人間全員を異世界転生させちゃいました、とかじゃないよな。だったら辻褄が合うのがウケるよな。
「ステータス、なんつって…」
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【名前】神宮司
【職業】無し
【Lv】1
【スキル】運命逆行・ブレイドオン
【体力】15/15
【持久力】11/11
【霊力】124/124
【魔力】6/6
【筋力】6
【敏捷】4
【器用】4
【知力】9
【運命力】100
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「…え?」
なんか出たが、ちょちょちょちょ、チョマテヨ。どーいうことだこれ!ほんとに異世界転生しちまったのか!?いや!俺が居るの異世界じゃなくて地球だが!
うーん、わからん。わからんがとりあえずこれを調べてみるか。
名前はわかる。俺だ。神宮司だ。
次が職業か、無しってオイ。ニートじゃねぇか、俺は学生だ。
その次がLvか、これはまぁ意味はわかるんだが意味がわからん。そもそもなんのLvだこれ。1ってことは今までの人生で培って来た経験値って意味では無さそうだな。
そして体力と持久力か。持久力はわかる、これは高いのか低いのかはわからんがまぁ持久力は持久力だろう。
体力…これは構成を見る感じ要するにHPって事か?15ってなんか心許無いな。
んで霊力魔力。2つもあるのか。魔力は何となくイメージできる、魔法を使う為に必要なアレだろ?魔法が使えるって思うとなんかココロオドルな。エンジョイ。
で、霊力ってなんだ?これだけ異様に数値が高いな、うーん…あ、これもしかして能力の事か?
「ブレイド・オン」
ブン!と俺の手から剣の形をしたオーラが出てくる。これが俺の能力、手の中に剣を創る力。まぁ、他のヤツらに比べたらオーソドックスでしょぼいかもしれんが使い勝手は悪くない。
…っと、そういえば霊力の実験
してたんだったな、数値は…
「お、100から98に減ってる。つまり霊力ってのは能力の数値だったのか」
今までは何となく感覚で限界かどうかってのを見定めてたが、可視化されると管理がやりやすくて便利だな。
なんてことを考えていると、ゴンゴンと家の扉を叩く音が聞こえた。
「人か!?」
俺は急いで玄関に向かった。そして扉を開けるとそこには―
―ヤツが、立っていた。
誰だよ