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するとそこには

連投です

 

「おい!優奈(ゆうな)!?」


 確かに俺はこの腕に優奈(ゆうな)を抱いていたはず!

 (あせ)った俺は急いで当たりを見渡した。するとそこには―


「…は?」


 ―誰も、居なかった。


「ちょっ…とまて。なんだこれ…」


 どういうことだ?意味がわからん。地震が起きておさまったと思ったら一緒に教室に居たはずの人間が全て消えてました。って、どうやったらこんな状況―


「…あ」


 もしかして、揺れの勢いでどこかに頭をぶつけて気絶してたのか!?

 いや、それだったら教師か誰かしらが俺を(かか)えて一緒に運んでくれるはず。いくらパニックだとはいえ俺の知ってるクラスメイト達はそんなに薄情(はくじょう)なヤツらじゃない。別に崩落(ほうらく)してるとかいう訳でもないし。

 テレポート系の能力者は確かうちの学校にはいなかったはず…たまたま俺だけ持っていかれなかったって可能性はかなり低い。

 それに、優奈(ゆうな)が俺を置いていくなんてまずありえない。


「いや、だけど…これは一体…」


 状況が飲み込めないが、とりあえず周りがどうなってるか見てみるか。隣のクラスに行ってみよう。

 机の下を抜け出し、隣の様子を(うかが)いに行く。だが、


「誰も居ない…か。まぁ何となく予想はしてたが…」


 しかし、一体何があったんだ…?いや、地震があったんだが、問題はその後だ。


「学校中誰も居やしねぇ…」


 結局、それから学校中をくまなく探してみたものの人っ子一人見つからず、ただ忽然(こつぜん)と皆が行方をくらました学校には、俺だけしか居ない事がわかった。オマケに、


「ケータイの電波もインターネットすら繋がりやしねぇ…どーなってんだこりゃ」


 携帯で優奈(ゆうな)義武(よしたけ)達にコンタクトを取ろうと思ったがネット回線すら繋がっておらず、家族とも連絡が取れない状況になってしまった。


「何がどうしてこうなったんだ…」


 俺は誰も居なくなった学校で(ひと)り呟いた。


「……とりあえず、帰るか…」


 そう言ってロクに荷物もまとめず、夕方の4時なのにも関わらず子供の1人も見当たらない道を歩いて帰る。


「あ、姉貴…」


 呟いてからだんだんと心配になってきた。それに、入院してる親父(おやじ)の事も気になる。


「…急ぐか」


 俺は()け足で姉貴の住むアパートまで向かった。


 #####


「嘘……だろ……」


 姉貴の()()()()()アパートは、さっきの地震の揺れのせいか、全壊していた。


「おい!大丈夫か!誰か居ないのか!?姉貴ィ!」


 俺は必死になって叫んでいた。危ないとは分かっていたが、気がついたら体が勝手に崩落(ほうらく)したアパートの所に走っていた。

 (さいわ)い、血痕(けっこん)などは見つからなかったので、もしかしたらここの人達も姉貴も姿をくらましたのかもしれない。それが(こう)不幸(ふこう)かは分からないが。


「…そうだ、親父(おやじ)のとこにも行かなきゃ」


 俺は(なか)ば放心状態になりながらも親父(おやじ)の入院してる病院に向かった。なんとか脚は動いてくれた。


 #####


「まぁ、いるかいないかなんてもう大体(だいたい)は予想ついてるけどな…」


 なんて自嘲(じちょう)気味に呟きながら、病院の階段を登る。

 どうやら電気も止まっているみたいで、エレベーターが動かなかったのだ。


「はァ…はァ…こんなことなら、46階になんて、するんじゃ、なかったなっ…と」


 次は下の方の階にしてもらおう、次なんてあるのかわからないけどな。なんて事を考えながら階段を登っているうちに、お目当ての46階まで登りきったようだ。


「はぁ…はぁ……親父(おやじ)の居る病室は確か…」


 親父(おやじ)の居た病室は確か4600号室だったはず。なんでも、特殊(とくしゅ)な薬を投与(とうよ)するからとかなんとか言って、すごいデカイ個室に入れられてたよな。さて、親父(おやじ)は無事なのだろうか?

 汗だくになりながらドアを開ける。するとそこには―


「ッ!?親父(おやじ)ッ!」


 ()()。今までどこを探しても赤子の1人見つからなかったのに、親父(おやじ)だけはいつもと変わらず、そのベッドに横になって目を(つぶ)っていた。


 なんで親父(おやじ)だけ―なんて色々な考えが浮かんできたがひとつ、嫌な事を思い出してしまった。


 ()()()()()()()()()()()()()。エレベーターが動かなかったから。

 そう、()()()()()()()()()()()。つまり、親父(おやじ)を生かす為に普段稼働(かどう)している(はず)の機械類も、その動作を始める為に必要なエネルギーが送られてきていないという事になる。つまり、


親父(おやじ)ィッ!!」


 急いで()け寄る。(みゃく)は!?…ない!?呼吸もしてない!まずいまずいまずいまずいまずい!確か外にAEDがあったはずだ!バタバタと取ってきて箱を開ける。(あせ)っているせいかなかなか電極のシートが()がせない。


「クソッ!早く…とれた!」


 電極を胸に付け、スイッチを押す。バシュゥゥン!という音と共に、親父(おやじ)の身体が()ねる。(みゃく)は!?…まだ戻ってない!まだだ!


 バシュゥゥン!…バシュゥゥン!…バシュゥゥン!…


「クソッ!…クソッ!クソッ!クソッ!!なんで!!」


 バシュゥゥン!…ピーッ、ピーッ、ピーッ、


 何だこの音…まさかバッテリー切れか!?


「なんだよこんな時に!畜生(ちくしょう)!」


 急いで別の階に移動しAEDを持ってくる。まだ…コイツで!


 ピーッ、ピーッ、ピーッ、


「……なんなんだよ、クソが…」


 本当は分かってた。いくらやっても無駄だってな。

 人間、心臓が止まってから1分ごとにおよそ10%救命率が下がる。あの地震が起こってから俺がここに来るまでの時間はゆうに1時間を超えている。つまり、()()なんてもんでも起こらない限り、もう親父(おやじ)は助からない。


「どうして…なんで、親父(おやじ)だけ…クソ、クソォッ!」


 もう、俺には、(こら)えきれなかった。


親父(おやじ)イイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイイイ!!!」


 そうやってずっと、1時間ほど泣いた。


 #####


 しばらく泣き()らしたあと、親父(おやじ)に白い布を被せ(とむら)って、いつも親父(おやじ)が肌身離さず持っていた布切れを形見(かたみ)として貰ってから、俺は夕日が沈む中家路(いえじ)についていた。


 正直、色々ありすぎてもう1人では抱え込めない。なんだよこれ、急に皆居なくなって、急に親父(おやじ)が死んで!俺はこれからどうすればいいんだよ!!


 気がついたら自分の部屋に居た。ぼーっとしながらも身体はきちんと家に帰れたようだ。


「…なんなんだよ、…もう」


 もう何も考えたくなかった。俺は、ベッドの上で体操座りをして時間が流れるのを待っていた。


 しばらくして、うつらうつらと睡魔が襲ってきた頃。おそらく、深夜12時を回った辺りだろうか。


 ヤツが、来たのは。

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