スタート地点
ふふふ‥今度は成功したみたいだね‥
ーーー
「‥!コー!起きて!朝だよ!」
ん‥誰かの声がする‥聞き覚えはないがどこか安心する声だった‥ あれ‥見知らぬ天井だ‥
って‥人の声!?確か人間が絶滅した異世界に飛ばされて‥魔物を全滅させて‥その後‥その後‥
あれ‥?記憶が曖昧だ
あの後どうなったんだ‥?
「コー!ねえ!あれ‥?どうして泣いてるの?怖い夢でも見た‥?」
ふとそう言われ見知らぬ綺麗なエメラルドグリーンの髪の少女の存在と自分の涙に気付いたのは同時のことだった。
「よしよし‥怖くないからね」
そう言い、見知らぬ少女は優しく抱きしめて頭を撫でてくれる。
訳の分からない状況ではあるが、久しぶりの人の温もりに涙は溢れて止まらず、しばらくそのままの状態が続いたのであった。
ーーー
「それでコー!なんで泣いてたの?今まで泣いたことなんてなかったのに‥」
さっきから僕を誰かと勘違いしてるのか親しげに話しかけてくれる少女であったがこのまま騙し続ける訳にもいかず思い切って聞くことにする。
「えっと‥初対面のはずだけど、君の名前は‥?」
その言葉を言うやいなや少女は口をぽかーんとしばらく固まった後
「お母さんー!コーが変ー!!」
と悲鳴を上げながらダッシュで下の階へと駆けていったのだった。
お母さん‥? あれ?そういえば視点がおかしい、こんな低かったか‥?そう思い自分の身体をあらためて眺めて見ると小学生くらいの身体がそこにはあった。
「なんだこれー!!!!」
その日、2人の悲鳴が家の屋根裏から地下室に至るまで響いていた。
ーーー
「それでコートどうしちゃったの?」
家の居間に呼び出されテーブルに座った僕達は少女のお母さんと思わしき同じエメラルドグリーンの髪の綺麗な女性に問い詰められていた。
「コート‥?どうと言われても‥ところであなたのお名前は?‥」
そういうや否や女性はしばらく固まった後、気を失ってしまったのだった。
「お母さんー!」
ーーー
詳しい話を聞くとどうやら僕はこの家の子供であるのは間違いないらしい。
母親の名前はアリア、不在だが父親の名前はラサール、少女(姉)の名前はサリアといい、ちなみに僕の名前はコート(弟)らしい。
コーは僕の愛称だった。
異世界から来た別の人間が意識を乗っ取ったとはとても言えず記憶喪失ということにした
記憶喪失と分かった途端2人は僕に抱きついて泣き始めてしまった。その頭を撫でて上げるとさらに泣いてしまい、その光景になんだか既視感を覚えながらも、しばらくの間そうしていたのだった。
しかし、まさか子供になるなんて‥この子供の本来の意識はどこに行ってしまったんだろう‥