幕引き
気が付けば全てが終わっていた。思えばこの1年間、夢のような出来事ばかりで、体が勝手に動いたり自分の知ってる体ではないようだった。
もしかしたら、本当に全て夢だったんだろうか?死ねば自分の部屋のベッドで目を覚ますのだろうか?
その一方であの時の痛みがどうしようもなくこの世界が現実であるという事実を突きつけていた。
しかし、痛みへの恐怖とはこれでおさらばだ。これから充実したライフを過ごしてやろう。充実した‥‥
あれ‥おかしいな‥‥笑ってるのになんで涙が‥
(分かっていた)
魔物を滅ぼしたところでこの先に未来なんてなかったことは。
しかし、今はそれ以上にこの世界で生きる明確な目的すら消えてしまったのも感じていた。
そして、この先に待つ孤独を理解してしまった時、心が折れるのを感じた。
(これだけ強くなったのに人間はなんて弱い生き物なんだろう)
「ねぇ!甲君!これで私達二人っきりだね!」
1人を除いて生命が消えた世界で心が壊れた廃人の人間が一人、立ち尽くしていた。
ーーー
(1年後)
「ねえ甲君!この場所覚えてる?私達が始めてあった場所!あーもう原形ないから分からないかー」
ーーー
(5年後)
「甲君なんかかっこよくなった!?髭がなんだか男前!!」
ーーー
(10年後)
「‥でさー。ねえ甲君!私の話ちゃんと聞いてる!?」
ーー
(???年後)
「お願い甲君‥死なないで!私を1人にしないで!せっかく2人きりになれたのに‥」
なんだかあの耳障りな声が聞こえる気がする‥ここは現実なんだろうか‥夢の中なんだろうか‥
そういえば、あのクソ神‥
魔物とはいえ世界から生命を奪うことが本当に世界を救うことだったのだろうか‥
世界とは誰にとっての世界だったんだろうか‥
ああ、そっか‥世界って‥
「カッテニシヌナンテユルサナイカラ」