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その目だれの目

…君…君!…起きてコート君!!!



「ん……なんだ…セス君か…どうしたの?そんな慌てて………って…もう夜…!?」


気が付けば辺りは真っ暗になっている。軽いお昼寝のはずが何時間も寝ていたようだった。


「僕がついていながらこんなことになるなんて…父上になんて言われるか…いや今はそれよりも夜の森は相当危険なんだ、早く戻らないと…」


セス君の慌てた様子から自分達が置かれている状況が相当まずい状況にあることを理解する。僕たちは急いで荷物をまとめ、来た道を駆け足で戻る。





走りながらセス君が説明してくれる。


「この森は人里が近いからか騒がしいのを嫌って夜行性の獣が多いんだ。今の僕たちがそいつらに出会ったら……っ!」


道の中央に2mはある熊が立っていた。目があったそいつがゆっくりこちらに向かってくる。


火だ。火の魔術がいる。僕は瞬時にそう判断した。


「セス君!火の魔術は使える?使えるならそれをあいつに撃ってほしい」


「分かった!ファイアーシュート!」


バスケットボールほどの大きさの火の玉が熊に向かって飛んでいく。獣は火を恐れるはず…そう僕は別世界の常識を当てはめてそう指示を出した。それが大きな間違いだった。

生態系も違う、魔術や魔法が存在するこの世界においてその熊が別世界の熊と同じものである保証はないのに。


火の玉は熊に当たるも特にダメージはなく、その代わり熊の目が鋭くなった。こちらを完全に敵として認識したようだった。

熊は火の玉を撃ったセス君に向かって突進した。セス君はかろうじで避けるも熊はさらに追撃しようとしている。

僕は注意を分散する必要があると判断し僕から注意が離れた熊に魔術を放った。


「ファイアーシュート!」


野球ボールほどの大きさの小さい火の玉が熊に当たる。

相変わらずダメージはないが完全に不意ををつかれたのが癪に障ったのか、熊は咆哮をあげ、狙いを変えこちらに突進してきた。

その速度はセス君に突進した速度より遥かに早い。

回避は間に合いそうにない。自分の死を予感し、頭が真っ白になる。その真っ白な頭の中にノイズが割り込んできた。

 

       「  俺の目を使え   」


頭に響いたその言葉の意味は分からなかったが、体が勝手に動いていた。目の使い方を変えると世界がゆっくりになる。

熊の動きを完全にとらえた僕は熊の突進を難なく避けることに成功する。熊は僕の動きを追えず困惑していたが、すぐに攻撃を仕掛けてくる。

今度は腕を振り回してきたが僕はゆっくりに見えるその攻撃を全て避けていた。


「すごい…!」


セス君は期待した目で見てくれているが、避けることは出来てもこいつに攻撃する手段がないと消耗戦になる。そう考え武器になりそうなものを探した。

僕は太い木の枝を見つけそれを手に熊に立ち向かう。熊が大振りの攻撃を仕掛け隙が出来たところを背後に回った。僕はそうして木の枝を頭に突き刺し熊を撃退したのだった。






ーーーー






「セス!!!お前がいながら何をしていた!!!」


村に着くやいなやセス君のお父さんの怒鳴り声が聞こえた。セス君は一通り事情を説明し、ずっとお父さんにごめんなさいと謝ってたが、お父さんもほんとは心配だったのかひとしきり叱った後、抱きしめていた。


「コー!怪我しなかった!?」


アリアさんとサリーも心配して僕を迎えに来てくれたようだ。


「うん…なんとか…」


僕もアリアさんに事情を説明すると散々叱られた。サリーは僕が熊を撃退した話をするととても興味津々な様子だった。僕たちは手をつないで一緒に家に帰り、僕は疲労が蓄積していたのか、夕飯も食べずぐっすり眠りについたのだった。




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