始まり
「あれ?なんだこれ‥」
いつものように大学の講義を受けているとふと自分の鞄の中に見知らぬ手紙が入ってることに気付いた。
手紙の宛名には「柊 甲 様へ」と書かれている。
柊 甲は僕の名前だ。どうやら間違って入ってしまった訳ではなさそうだ。
早速手紙を開けてみると、可愛らしいマスコットがデザインされた紙の真ん中に一文だけこう書かれていた。
「あなたを愛しています」と
人生で初めてのラブレターに戸惑いと喜色を隠せなかったが、どうやらこの手紙には差出人の名前は載っていないようだった。
「書き忘れたのかなぁ。はぁ‥」
そう思い落胆しているところで大学の講義は終わりを迎えた。その後も他の講義を受けていたが特に何ごともなく大学を出た。
アパートに帰宅し、ベッドの上で仰向けになるとラブレターのことについて考えを巡らせた。
冷静に考えればそもそも人が人を好きになるのには出会いがあり理由が存在しなければありえない。
思えば、僕の大学生活は数人のオタク男友達のみで形成されており大学に入ってから現在に至るまでの2年間、女の子との接点など皆無であった。そんな僕が女の子に好かれるなど一目惚れ以外に存在しない。ルックスが特別いいとは言えない僕は、十中八九ラブレターはいたずらであるだろうという結論に至った。
浮かれていたのが馬鹿みたいだ。ラブレターのことは忘れよう。そう思いベッドで寛いでいると急激な眠気に襲われた。
ぼんやりとした意識の中、インターホンが一定のリズムで鳴り響いていたが、僕の意識はそのまま暗闇に呑まれていった。