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Cafe Shelly

Cafe Shelly 三重苦を超えていけ

作者: 日向ひなた

 まただ。

 突然めまいがして、オレは倒れ込んでしまった。意識はある、けれど身体のほうがついていかない。

「おい、大丈夫か?」

 何人かのバイト仲間がかけよってくる。が、一部の人間は「またか」という顔でオレを冷ややかな目で見る。

「大丈夫、大丈夫」

 言いながらもうまく立ち上がれない。まぁ、しばらく横になっていればすぐに回復するのはわかっている。なにしろ、この症状とは子どもの頃からつきあっているのだから。

 この貧血の症状、何かの瞬間に突然襲ってくる。よく学校の朝礼などで突然倒れる子どもがいるが、オレがそれなのだ。突然フラフラとなって、急にバタリと倒れ込む。

 原因は不明。小学生の頃、さんざん検査は行った。まぁ、一言で言えば生まれつき、ということなのだそうだ。確かにオレはガリガリに痩せて、いかにもひ弱という感じがする。

 一生懸命食べようと思うのだが、食べるのが遅いのとアレルギー体質で食べ物を制限されてしまうという問題がある。だから満足に食べることができない。おかげで小学生の頃は「もやし」とあだ名をつけられたものだ。

「門田は休んでていいぞ。よし、みんなチラシ配りに戻ってくれ」

 バイトリーダーの生島さんがそう言う。

「生島さん、いつも迷惑をかけてすいません」

「いや、いいんだよ。門田は無理をするな。まぁ、お前が必死になって働かないといけないのはわかってるから」

 そうなんだ。オレは今お金が必要なんだ。というのも、ウチは父がつくった借金のおかげで大変な目に遭っている。父は事業に失敗して、サラ金でお金を借りて生活をつないでいた。が、父は突然行方不明に。残された家族が借金を背負うことになり、必死になって働いている。

 そのおかげで、オレは中学を卒業してすぐに働き始めた。オレの姉貴も高校を中退して働いている。けれど、中卒や高校中退の人間が稼ぎ出すなんてほんのわずかなお金にしかならない。

 母もパートに出ているが、それでも生活していくのと、借金の金利を支払うのにやっとのお金しか稼ぐことができていない。生島さんはそんな我家の事情を知っている、数少ない理解者の一人だ。

 病弱で貧乏で中卒。オレはこの三重苦の中で生きている。この先、本当にオレの人生に幸せを感じる日はやってくるのだろうか。そんな不安を抱えつつも、なんとかしなければという気持ちで頑張っている。

 頑張っているが身体がついていかない。そうなると気力も弱ってくるものだ。

 結局この日は、自分に課せられたノルマの半分しか仕事をこなすことができなかった。まだ明日もある。チラシ配りのバイトは、自分のノルマを達成しないとお金をもらえない。さらに、明日までという期限付きなのでなんとかしなければならない。

「生島さん、明日はがんばりますのでよろしくお願いします。みんなよりも早く出て仕事をさせていただきます」

「そうか、まぁ無理はしてほしくないけど。ところでお姉さんは今はどんな仕事をしているんだい?」

「姉ですか。姉は事務器屋で事務のパートをしながら、夜は掃除のアルバイトをしています」

「お姉さんもよく働くよなぁ。まぁ事情が事情だから、仕方ないんだろうけど。オレが金持ちだったら、なんとか援助してあげたいところだけど」

 生島さんがオレに優しくしてくれる理由。それはわかっている。姉狙いなんだ。

 姉は弟との自分から見ても、悪くはない女性だと思う。ただし貧乏なのが響いて、おしゃれでもないし、化粧もまったくしていないし。磨けば光る、というところなんだが。もったいないと思いつつも、目の前のお金のことで必死だから。これは仕方がない。

 ともかく、明日は早めに仕事を始めないといけないなぁ。

「ただいま」

 家に帰る。が、誰もいない。それはわかっている。母は昼間のパートの後、一度夕飯を作りに帰り今度は夜の仕事に出かける。夜の仕事、といってもいかがわしいものではない。夜勤のある工場の食事を作る仕事をしているのだ。

 姉は今日も清掃のアルバイトに出かけている。帰ってから食事をするので、夜ご飯はかなり遅い時間になる。

 オレは病弱なこともあり、夜のアルバイトは控えている。本当なら、時給の高い深夜のコンビニのアルバイトに行きたいところなのだが。

 働こうという気力はあるものの、身体のせいで気持ちがなかなか上がらない。なんとかしなきゃ、という気持ちばかりで焦る一方だ。

 せめて身体が丈夫だったら、母や姉にこんなに苦労はさせないのに。身体が丈夫だったら、もっと勉強しようという気持ちも湧いてきて、何か資格でも取って就職にも有利になるのに。身体が丈夫だったら、もっと割のいい仕事にも就けるのに。

 病弱で貧乏で中卒、この三重苦の根本はやはり病気にある。ここさえなんとかなれば、そう思うだけで何もできない自分がとてもはがゆい。

 明日は早起きして、誰よりもチラシ配りを頑張らなくちゃ。その思いで今日は早めに眠りについた。

 翌朝、起きようとしたときに予想外のことが起きた。

「いたっ、いたたたたっ」

 目が覚めたときに、身体のあちらこちらに痛みが走った。筋肉痛のたぐいではない。関節、いや神経に痛みが走る、そんな感じだ。

「勇雄、どうしたの?」

 母がオレの声を聞きつけてあわてて駆け寄る。

「か、からだが、からだじゅうがいたい」

 振り絞るようにしてなんとか自分の状態を伝える。

「美鈴、救急車、救急車を呼んで!」

 朝ごはんの支度をしていた姉に叫ぶ母。そこからの記憶があまりない。気がついたら病院に運ばれていた。そしてベッドの上で横たわるオレ。

 どのくらい時間が経っただろうか。なんとか異常な状態を脱出し、意識も普通になった。どうやら点滴を打っているらしい。身体にはまだ痛みが残るが、ガマンできないほどではない。

「あ、起きたのね」

 そこには姉の姿があった。

「母さんは?」

「仕事が休めないからって。私はなんとか休みをもらったから。勇雄、あなたもアルバイトがあったんじゃないの?」

「うん、昨日から調子が悪かったからノルマが達成できなくて。だから今日は早く出ようと思ったんだけど。また生島さんに迷惑をかけるなぁ」

「生島さんに連絡をすればいいのね」

 姉は生島さんに早速連絡をつけてくれた。

「無理するなって。勇雄のノルマはこっちでなんとかするからって。それよりも早く身体を治せよって言ってくれたわ。生島さん、優しい人ね」

 まったく、姉の前では点数稼ぎをするんだから。まぁいいや、そのおかげで今の状態でもなんとかなっているんだし。

「それにしても、今回はどうしてこんなことになったんだろうなぁ」

「その件だけど、勇雄はもともと免疫力が弱いでしょ。今回は何かの菌が体中に回って引き起こされたんじゃないかって、先生言ってた。詳しいことは検査しないとわからないけどって」

 結局はもともとの自分の体が弱いことが原因か。身体をなんとかしないと、オレはずっとこんな感じで一生を過ごしていかないといけないのか。そんな人生に、何の意味があるんだろう。

 昼過ぎになって状態も良くなったので、姉は一度家に戻ることになった。そもそも、借金返済のために仕事をしなければいけないという状況、これも早く何とかしないと。オレだけでなく、姉も母も、自分の人生を楽しむなんてできっこない。

 どうしてこんな人生を歩むことになってしまったんだろうなぁ。オレの一生って、ずっとこんな感じなのかな?

「こんにちはー」

 そんなことを思っていると、突然病室にきれいなおねえさんがやってきた。といってもオレの見舞客ではない。ここは六人部屋。オレの隣には中年の男性が足を骨折して入院している。

「あーマイちゃん、来てくれたんだー」

「もうびっくりしましたよ。加藤さん、事故にあったって聞いたから」

「心配してくれてありがとー。いやぁ、あれはホントまいった。完全なもらい事故だったけど、まさかこんな目に遭うとはなぁ」

 隣の人、加藤さんっていうんだ。なんだかにぎやかな人だな。

「はいっ、これマスターから」

 そう言うと、おねえさんは水筒を取り出して渡していた。

「これこれ、やっぱこれを飲まないと元気が出ないよ」

「じゃぁ、早速飲みますか?」

 おねえさんは紙コップを用意し始めた。その様子をじっと見ていたオレ。このとき、おねえさんと目が合った。

「あ、よかったらお隣さんもお飲みになりますか? これ、うちの自慢のコーヒーなんです」

「そうだね、それはいい。ぜひここのコーヒー飲んでみてよ。間違いなく元気が出るから」

 加藤さんもそう言ってくれる。じゃぁお言葉に甘えるとするか。

「はい、じゃぁいただきます」

 おねえさんがコーヒーを渡してくれる。

「ありがとうございます」

 まだ点滴をうっている身ではあるが、コーヒーくらいなら問題ないだろう。オレは体を起こしてコーヒーを手にする。

 熱々のコーヒーからは、とても心地よい香りがする。こんなに香りの強いコーヒーは初めてだ。早速口にしてみる。

「おいしいっ」

 コーヒーがこんなにおいしいものとは思わなかった。同時に体中に力があふれて、元気になっていく。そんな感じがした。まるでスーパーマンにでもなった感じだ。この元気があれば、病気なんてむこうから逃げていくだろう。

「どんな味がしましたか?」

 おねえさんがそう尋ねてくる。

「あ、はい、すごくおいしいです。なんだか体中に力があふれて、とても元気になりました」

「なるほどぉ、君は今、元気が欲しいんだな」

「はい。小さい頃から病弱で、いつも母と姉に迷惑をかけてしまっているんです。バイトもきちんとできないし。今回も体に菌が入ってしまって、その痛みで救急車で運ばれてしまったんです」

 加藤さんが質問してきたので、つい自分のことを話してしまった。

「そうだったんだね。確かに何をするにも身体が資本だからね。オレも骨折して健康のありがたさが身にしみてるよ」

 加藤さんも同じなんだな。

「退院したら、一度マイちゃんのお店に行くといいよ。きっと君にとって大切なものがなんなのかがわかるから。マイちゃん、彼に名刺を渡したら?」

「はい、これ。ここが私のいる喫茶店です。カフェ・シェリーっていうの。いつでも遊びに来てね」

「ありがとうございます」

 おねえさんからいただいたかわいらしい名刺。なんだか心がホッと温かくなるな。ちょっとだけ元気になれた、そんな気がする。

「じゃぁ、私はそろそろお店に戻るね。加藤さんもお大事に」

「マイちゃん、ありがとう。オレも退院したらすぐにお店に行くからね」

 短い時間だったが、今までにないさわやかさを感じることができた。病弱で貧乏で学歴がない。そんな三重苦のオレでも、あんなふうに人に元気を与えられる存在になれればなぁ。けれど、こんなオレではとてもあのおねえさんのようにはなれないな。

 午後になって姉がもう一度やってきた。隣の加藤さんにも姉を紹介した流れで、我が家の今の状態を話すことになってしまった。

「そうか、勇雄くんもお姉さんも苦労しているんだなぁ」

 加藤さん、涙もろいところがあるみたい。オレの話を聞いて、急に泣き出してしまった。加藤さんってホントいい人だな。

「勇雄くん、君はこれからどんな人生を送りたいんだい?」

 加藤さんの質問に、オレは考え込んでしまった。この先、どんな人生を送っていきたいんだろう。そんなこと考えたことがない。今はとにかく父のつくった借金を返済する、それしか頭になかった。

「この先の人生なんて考えたことなかったです」

「じゃぁ、お姉さんはどうなんだい?」

「私、ですか?私も勇雄と同じで、今は父のつくった借金を返済することしか頭になくて。とにかく一日も早くこの地獄から逃れたい。それしか考えられなくて」

「そうかぁ、そうだよなぁ。よし、じゃぁなおさらカフェ・シェリーに行かなきゃ」

「どうしてですか?」

 オレの問いに、加藤さんは予想外の答えを返してくれた。

「あそこに行けば、魔法をかけてもらえるからさ」

「魔法!?」

 魔法ってどういうことだろう?加藤さんはオレたちをからかっているわけではなさそうだ。けれど、その意味は教えてくれなかった。行くまでのお楽しみだって。

「とにかく一日も早く退院して、二人でカフェ・シェリーに行くといいよ」

 あのきれいなおねえさんのお店、カフェ・シェリーには何があるのだろう?期待感が高まってくる。早く退院したくなってきたぞ。

 その気持ちがあったせいか、体の調子は思った以上に早く回復した。入院した翌日には「もう大丈夫でしょう」という医者からの言葉をいただくことができた。けれど、またいつこのようなことが起こるかわからないので、一度きちんとした精密検査を受けることを勧められた。

 まずはバイト先に迷惑をかけたので、お詫びに行くことにした。が、そこでショックな言葉を受けることになった。

「門田くん、君のところの事情は理解している。けれど、こう何度も病気で突然休まれると、こちらも困るんだよねぇ」

「はい、すいません」

「でね、申し訳ないけど、今の状態で君をシフトに入れるわけにはいかないんだよ。まぁ突発的に人手が足りなくなったら入ってもらうという形なら、ウチもありがたいけど。でも、そのときにまた病気だったりしても困るしねぇ」

 結局、遠回しにオレはクビの宣告を受けているわけだ。おそらく雇い主は、オレの口から「辞めます」というのを待っているのだろう。オレも、このバイトならなんとか続けられると思ったけど。もう潮時かな。

「でもね、生島くんが君をフォローしてくれると言ってくれているんだ。この二日間も生島くんが君の分まで頑張ってくれたからね」

 生島さんにはかなり迷惑をかけているなぁ。でも、いくら姉に気があるとはいえ、オレに対してそこまでやってくれるのはどうしてなのだろう?

「とりあえず生島くんの顔を立てて、もうしばらく今のままにしておくが。でもこれ以上病気で休むようなら、次は考えさせてもらうからな」

「はい、わかりました」

 もうこれ以上周りに迷惑をかけるわけにはいかない。この身体、なんとかしないと。でも、どうすればいいんだろう?

 モヤモヤした気持ちを抱きながら、次に足を運んだのはカフェ・シェリーだ。本当は姉と一緒に行きたかったのだが、姉は仕事があるし。この前のお礼もしないといけない。

「ここだな」

 名刺に描かれている地図を頼りにやってきた通り。パステル色のタイルで敷き詰められて、とても明るくてワクワクする。この街にもこんな通りがあったんだ。今まで知らなかったな。

 その通りの中ほどにそのお店はあった。黒板の看板が通りにおいてあり、そこにはこんな言葉が書いてあった。

「あなたの身体はあなたの気持ちに正直です」

 身体は気持ちに正直、どういう意味だろう?疑問を持ちながらもビルの二階へと上がる。そこに目指すお店、カフェ・シェリーがある。

カラン・コロン・カラン

 扉を開けると、心地よいカウベルの音が鳴る。と同時に「いらっしゃいませ」の声。あのおねえさんの声だ。少し遅れて、別方向から渋い男性の声で「いらっしゃいませ」と聞こえる。

「あ、この前の!」

「はい、門田勇雄といいます」

「勇雄くんっていうんだ。もう体調は大丈夫なの?」

「えぇ、おかげさまでここに早く来たいと思ったおかげで、治りも早かったです」

「それはよかった。マスター、こちらがこの前加藤さんの御見舞に行ったときに会った方」

「君かぁ。思ったより早く来たので驚いたよ。よかったらこちらへどうぞ」

 案内されたのは、マスターのいる真ん前のカウンター席。あらためて店内を見渡すと、とても落ち着いた雰囲気のところだ。どちらかというと小さな喫茶店だなって感じだけど。でも、ちょうどいいくらいの大きさ。

「早速だけど、ぜひ勇雄くんにはシェリー・ブレンドを飲んでほしいの。この前飲んだ、あのコーヒーだよ」

 おねえさんがそう勧めてくる。ボクもそのつもりで来ているので、言うとおりに注文をした。

「あの…加藤さんがここに来たら魔法をかけてもらえると言っていたんですけど。それってどういう意味ですか?」

「その魔法を今からかけてあげるよ。もう少し待っててね」

 マスターはにこやかな顔でオレにそう言う。しばらくはマスターがコーヒーを淹れる手つきを眺めている。手際がよく、テキパキしているな。オレにはそんな器用なことができない。

 となると、オレは三重苦ではなく四重苦か。病弱で、貧乏で、学歴がなく、そして不器用。いや、出せばもっとある。オレってどれだけダメな男なんだろう。

「はい、魔法のコーヒー、シェリー・ブレンドです。飲んだらどんな味だったのかを教えて下さいね」

 ちょっと落ち込みそうになった時、マスターがコーヒーを差し出してくれた。

「ありがとうございます。魔法のコーヒーってどういう意味ですか?」

「それは飲めばわかるよ」

 早速コーヒーを口にする。前回はポットに入れたものをいただいたが、今回は淹れたて。前のときよりもさらに香りが強い。これが本格的なコーヒーなんだ。なんだか力強さを感じるな。

 そして味の方は…す、すごい、なんだかパンチが効いていて、これぞコーヒーって感じを受ける。別に味が濃いわけではない。が、みなぎる力というか、湧き出るパワーというか、心の奥から何かが溢れ出る感じがする。これは一体何なんだ?

「なんだかすごい味ですね。力強さというか、パワーを感じます。オレにもこんなにみなぎる力があればなぁ」

「なるほど、勇雄くんは力強さを感じたんだね。ということは、勇雄くんはその力強さを欲しがっているんだね」

「はい、オレは病弱で周りに迷惑をかけていますから。そのせいでアルバイトが思うようにできなくて。なんとかお金を稼がないと、家族が大変なんです」

「何か事情がありそうだね」

「実は、父が借金をしたまま行方知れずになってしまって。連帯保証人になっていた母は、その借金をかぶることになってしまいました。おかげでオレは中学を卒業したらすぐに働くことになって。病弱で貧乏で学歴もない、そんな三重苦のオレにもっと力があれば…」

「病弱で貧乏で学歴がない、か。そんな三重苦を負っても偉業を成し遂げることは可能なんだよ」

「まさか、そんなこと。誰がそんな状況で偉業を成し遂げたんですか?」

 マスターはニコニコしてあるものを指差した。

「あれをつくった人だよ。というか、あれをつくっている会社をつくった人のことだ」

「あれって、オーディオ機器ですか?」

「正確に言えば、DVDプレイヤーだね。あれ、どこの製品かわかるかな?」

「えっと、あれはパナソニックですね」

「そう、昔の松下電器だ。誰が創設者か知っているよね」

「はい、松下幸之助さんです」

「その松下幸之助さんは、勇雄くんよりも三重苦だったのは知っているかな?」

「えっ、そうなんですか?てっきり財閥かなにかの系列だとばかり思っていました」

「松下幸之助さんは、生まれながらの病弱でね。身体も痩せていたそうだ。しかも父親が事業に失敗をしたせいで、家は貧乏。そのため、尋常小学校四年生のときに丁稚奉公に出されたんだよ。だから最終学歴は小学校中退なんだよ」

「えぇっ、そんな人だったんですか!」

 この話には驚いた。そんな人がたった一代であんなに大きな会社をつくってしまうなんて。

「でも、どうやってあんな会社をつくることができたんですか?」

「詳しくは色んな本が出ているから、それを読んでみるといいよ。何より志、これが松下幸之助さんを動かした原動力であり、さまざまなハンデを乗り越える力になったんだ」

 志、オレにはそんなものはない。とにかく今を乗り切る、そのことしか頭になかった。

「勇雄くん、君は確かこの前まで入院していたよね」

「はい、でも思ったより早く退院できました。これには驚いています」

「思ったより早く退院できた。素晴らしいじゃないか。それってどうして早く退院できたと思うかな?」

「どうして早く退院できたか、ですか?」

 マスターにそう言われて考えてしまった。そういえばどうしてこんなに早く回復することができたんだろう?

「うぅん、精神力のなせる技、かな?」

 半分冗談で言ってみたつもりだった。が、マスターはにこりと笑ってこう言った。

「正解だよ。まさにその通りだ。これは勇雄くんに早く退院したいという志があったからこそ、身体がそのように反応したんだよ」

 まさか、そんなことが。一瞬そう思ったが、言われて納得もした。あの天下の松下幸之助さんもこんな気持ちでいたからこそ、病弱な身体を克服できたのではないだろうか。

「私たちはね、病気になったから気持ちが沈んでしまうと思いがちだけれど。実はそうじゃないんだ。気持ちが沈んでしまっているから病気になるんだよ」

「でも、オレなんかは生まれつき身体が弱い方ですから。まさか、元気な人は赤ちゃんの時から志を持っていたってわけではないですよね」

 マスターの言葉でふと湧いた疑問を素直に口にしてみた。するとマスターはまたにこやかに笑いながら、こんなふうに答えてくれた。

「確かに、生まれつき病弱だという人はたくさんいる。勇雄くんもその一人だよね。勇雄くんはこれをハンデだと思うかい?」

「まぁ、もっと健康に生まれていればなぁって思うことはあります」

「けれど、こんなふうにも考えられないかな。病弱だからこそ、どうやってそれを乗り越えればよいのか。これを考えることができたら、同じような境遇の人を救うことができる。そのためのチャンスを生まれながらにして与えられている、と。事実、松下幸之助さんが家電を日本中、いや世界中に広げることができたのは、そんな志があったからできたことなんだよ」

 生まれつき病弱なのはハンデではなく、チャンスを与えられた。こんな発想はいままでなかった。けれど、オレに松下幸之助さんのようになれというのはちょっと荷が重いな。

「じゃぁ、オレは今から何をすればいいんですか?」

「その答えは、シェリー・ブレンドが教えてくれるよ?」

「えっ、このコーヒーが?そういえば、このコーヒーには魔法がかかっているって言っていましたけど。どういう意味なんですか?」

 そうだ、オレはまだコーヒーの魔法の意味を知らない。単なる味の強いコーヒーだとばかり思っていたのだが。

「このコーヒー、シェリー・ブレンドは飲んだ人が今望んでいる味がするんだよ。だから人によって味が変わるし、同じ人が飲んでも今の気持ちや願望によって味が変わるんだ。勇雄くんはさっき飲んだときに力強さを感じただろう。それは勇雄くん自身がもっと力強くなりたいという願望が出ていたんだよ」

 確かに、オレは常にもっと身体が強くなりたいと思っていた。それがそのままコーヒーの味に出ていたということか。じゃぁ、今はそうなるために何をすればいいのか、その味が出てくるということになる。でも、どんな味になるのだろう?

 期待を込めながら、オレはシェリー・ブレンドを口に運んだ。

 最初は普通のコーヒーの味がした。いや、普通ではない、とても美味しい。この美味しさをまずは姉に、そして母にも味わってもらいたい。この二人だけではない。アルバイトでお世話になっている生島さん、さらにはアルバイトの仲間、そしてもっと多くの人にこの味を知ってもらいたい。そういう願望が心の奥から湧いてきた。

 頭のなかでは人と人とのネットワークがどんどん広がっていく。そうか、情報をどんどん人に伝えていくこと、これが大切なんじゃないかな、ということに気づいた。

「どんな味がしたかな?」

 マスターの言葉で、ふと我に返った。頭の中の世界から現実に戻ってきた感じだ。

「あ、えっとですね、コーヒーそのものは普通の美味しい味だったんです。でも、頭のなかでこの味を姉や母、そしてお世話になった人たちにどんどん広げていく、そのネットワークを大きくしていくっていうイメージが湧いてきたんです」

「なるほど、ネットワークを広げていくこと、これが求めていた答えなんじゃないかな」

「はい、オレもそう感じました。でも具体的にどんなことをやればいいんでしょうか」

「じゃぁ、それもシェリー・ブレンドに聞いてみるといいよ」

 なるほど、何かを求めようと思ったときにはシェリー・ブレンドを頼ってみる。加藤さんが言っていた魔法とはこのことだったんだ。早速残ったシェリー・ブレンドを一気に口の中に流し込む。今度はどんな味がするんだろう。

 すると、パッと頭に浮かんだのは生島さんだった。これは生島さんを頼れ、ということなのか?残念ながらそれ以上のことは出てこなかった。

「どうだったかな?」

「はい、アルバイトでお世話になっている先輩の顔が浮かびました。これはその人を頼れってっていう意味なんでしょうか?」

「おそらくそうだろうね。そのアルバイトの先輩に、今の自分の思いを伝えてみるのはどうかな?」

 今の自分の思い。シェリー・ブレンドを飲んだ味を知ってもらいたい。早速そのことを伝えてみよう。そして、自分は今の身体の弱さ、お金がない事、学歴がないことを乗り越えたいということも伝えてみよう。何かが動き出すかもしれない。そんな期待感が高まった。

「はい、早速そうしてみます。ありがとうございます」

 思い立ったが吉日。オレは携帯電話を持っていない。今時珍しいのだが、なにしろお金がないから。だからいつも直接確認をとることにしている。確か今日の夕方、生島さんはアルバイトのシフトに入っていたはずだ。またバイト先に行くのはどうかとも思うが、生島さんに会わないと始まらないのだから。

 恥を忍んで、もう一度バイト先の事務所に顔を出す。

「こんにちはー」

 恐る恐る事務所の扉を開く。すると、オレが望んでいた顔がそこにあった。

「おぉ、門田じゃないか。もう体調はいいのか?」

 生島さんがにこやかにオレを迎えてくれた。

「はい、おかげさまで。よかったぁ、生島さんにどうしても会いたくて」

「ははは、そう言ってくれるとオレもうれしいよ」

 生島さんはこれからティッシュ配りの現場に向かうとのこと。

「一緒に行動してもいいですか?話したいことがありまして」

「まぁかまわないけど」

 現場までは車で移動する。その間、オレはカフェ・シェリーで飲んだシェリー・ブレンドのことを話してみた。

「へぇ、そんなおもしろい喫茶店があるんだ。一度行ってみるかな」

「ぜひ一緒に行きましょう。今度はいつが空いてますか?」

「そうだな、日曜日なら今のところ空いてるけど」

「わかりました。もう一つお願いがあるのですが」

「なんだい?」

「実はオレがシェリー・ブレンドを飲んだときに、ネットワークを広げていくという答えが出たんです。そのためには生島さんを頼れってことも。でも、具体的にどうすればいいのかわからなくて」

「ネットワークを広げる、か。門田はインターネットはやっていなかったんだっけ?」

「えぇ、御存知の通り我が家の状態はそれどころじゃないですから。携帯電話もスマホも持っていません」

「そうか。インターネットを使えばネットワークを広げるのはそれほど難しくはないんだが。でも今の門田の状態で、どうすれば…」

 このとき、オレは今から配るティッシュに目線がいった。何かひらめきそうだ。

「インターネットが無かった時代って、どうやって人のネットワークを広げていったんでしょうね?」

 ふと湧いた疑問。それを口にしてみた。

「そうだなぁ、やはり口コミだろうね。人伝えでこういうのがいいとか、こういうのが流行るとか。あとはマスコミかな。雑誌や新聞に掲載されると、それを頼りに人が寄ってくるだろうし」

「口コミとマスコミ、あ、どっちもコミってついてますね。これってなんなんですかね?」

「コミ、これはコミュニケーションのことかな。そういう意味ではネットワークを広げるためには、コミュニケーションは必要不可欠だね」

 生島さんの言葉で、あと一歩で何かがひらめきそうなところまできている。それが何なのか、もうちょっとなのだが。オレはさらに会話を続けた。

「コミュニケーションって、人と人とのつながりのことですよね。最近ではインターネットが発展したせいで、コミュニケーションが希薄になっているなんて言われていますけど。どう思います?」

 この問いかけに、生島さんはこう答えた。

「オレはそうは思わないね。むしろ、今までにないコミュニケーションのとり方が発展したんじゃないかなって思うんだよ。現代風ってやつかな」

 現代風のコミュニケーションのとり方。そこにもう一歩なにかがあれば、さらに満足できる人が増えるような気がする。じゃぁ、それはなんなのか?

 このとき、ふとマスターの顔が浮かんだ。そういえばあのお店を知ったのも、加藤さんからの口コミになる。あのお店はひょっとしたらそうやってお客がお客を呼んでいるんじゃないか。あのマスターのコミュニケーション術を活用すれば、もっと多くのお店が繁盛するんじゃないかな。

「どうした、何か考え事か?」

 オレがしばらく黙っていたから、生島さんが声をかけてきた。ここで口の方からこんな言葉が飛び出した。

「生島さん、オレ、やってみたいことができました」

「へぇ、どんなことだい?」

 やってみたいこと、今までそんなものまったくなかったのに。どうしてそんな言葉が出たのか不思議だった。けれど、その言葉をきっかけに、口の方から勝手にアイデアが飛び出し始めた。

「カフェ・シェリーって口コミでどんどんお客さんが増えている気がするんです。それはコーヒーの味に特徴があるっていうのもあるんですけど、それ以上にあのお店のマスターのコミュニケーションのとりかた、これがいいからこそだと思うんです。だから…」

「だから?」

 このとき、ちょうど目的地に到着した。けれど生島さんは車を降りずにオレの答えを待った。

「だから、オレはマスターのコミュニケーション術を学んで、これを広げていき、多くのお店を口コミで繁盛させていく。そんな仕事をしたいと思っています」

「門田、いいじゃないか、それ。そんなお前に一つだけアドバイスだ。『思います』ではなく『やります』と言い切ることが大事だぞ。思うだけなら誰でもできる。きちんと宣言をするのなら、やりますと言い切ることだ。それを繰り返せば、それは間違いなく現実になる」

「はい、わかりました。ありがとうございます」

 オレの中で何かが変わった。そのことがなぜだか実感できた。その途端、体の奥から熱いものがこみ上げてきた。あ、この感覚、この前カフェ・シェリーでシェリー・ブレンドを飲んだ時のあの感じだ。そうだ、オレはこれを欲しがっていたんだ。

「門田、期待してるぞ。あ、期待ついでに一つお願いしていいかな?」

「はい、なんでしょうか?」

「あのさ…日曜日にその喫茶店に行く時に、お姉さんも一緒にってのは…」

 今までの男らしい生島さんから、急にもじもじした態度に変わった。生島さん、かわいいな。

「もちろん、姉も誘いますよ」

 オレの言葉に、生島さんに笑顔が出た。そうか、こうやって人と人をつなぐことで、人って笑顔になれるんだな。俄然やる気が湧いてきた。

 この日は生島さんの仕事を少し手伝って家路についた。家に帰ったら母が待っていたのだが、第一声がこれだった。

「勇雄、なにかいいことあったの?」

「えっ、どうして?」

「だって、あんた今まで見たことないくらい、明るい表情してるじゃない」

 そうなのか?自分では気づかなかったけど。

「なんだか勇雄から、すごくエネルギーを感じるわよ。あ、そうか、あんた背筋がビシっと伸びてるからだわ」

 それも気づかなかった。というか、今まで背筋が曲がっていたのか。

「ただいまー」

 ちょうど姉も帰ってきた。そしてオレを見ての第一声がこれだった。

「勇雄、なんかすごく元気になったじゃない。なんかあったの?」

 やはり姉にもそう見えるらしい。オレの中で何かが変わったんだ。だからこうやって態度にも現れたんだ。

 何が変わったのか、それは目標ができたから。そうだ、オレにもできるんだ。あの松下幸之助さんのように、三重苦であってもできることはあるんだ。その自信がオレを変えてくれたんだ。よし、やるぞ。

 その自信がオレの生活を、そして身体を変えてくれた。前はすぐに疲れてしまい、思うように仕事ができなかったのだが。まずはそういうことがなくなった。

 さらに変わったのが、こういった言葉を周りからかけられることが多くなった。

「門田くん、なんだかイキイキしてるね」

「いい表情してるじゃない」

 どうやらオレは笑顔でいることが多くなったようだ。これには自分でも驚いている。そのせいか、オレに話しかけてくる人が多くなった。

 そしていよいよ迎えた日曜日。この日は姉と一緒にカフェ・シェリーへと足を運んだ。時間をあわせて、現地で生島さんとも合流する。

「こ、こんにちは」

 生島さん、姉の前では今までの勢いが突然なくなってしまう。これがまたおもしろい。だから、姉はいつもの生島さんというのを目にしたことがない。けれど、オレの話から生島さんがどんな人なのかはわかっているようだ。

「生島さん、いつも勇雄がお世話になって。本当にありがとうございます」

「い、いえ、とんでもないです」

 生島さんも、シェリー・ブレンドを飲んでもっと姉に積極的になるといいんだけどな。姉もまんざらじゃない感じだし。オレも、生島さんだったら安心できるし。

 三人で向かったカフェ・シェリー。マスターやマイさんはもちろん大歓迎。そこでオレは何を目指そうとし始めたのか、その話を始めた。

「そうか、勇雄くんにも大きな目標ができたね。人と人をつないでいく、ネットワークを広げていく、そのお手伝いか。で、私のコミュニケーション術ねぇ。それなら私よりもさらに上手を行く人を紹介しよう」

「えっ、そんな人がいるんですか?」

「ここの常連さんでね。羽賀さんというコーチングの先生をやっている人だよ。私もこの人からコミュニケーション術を学んだものだ。私の方から羽賀さんに話しておくから。彼もこういったことには協力的だから、きっと力になってくれるよ」

「あ、ありがとうございます」

「門田、よかったなぁ。これですでに門田のネットワークも広がったじゃないか」

 そう言われるとそうだ。そうなんだよ、こうやって人が人を紹介していく、そのやり方をどんどん多くの人に伝えていきたいんだ。このお店、カフェ・シェリーに来てからオレの人生はさらに広がりを見せ始めた。そんな気がする。

「ところで、お姉さんはこのシェリー・ブレンドを飲んでどんな味がしましたか?」

 話は急に変わって、姉に話題が振られた。

「えっ、味ですか?」

 姉にはシェリー・ブレンドの魔法のことは伝えてある。さて、どんなことを願望として持っているのだろうか?

「なんだか力強さを感じました。それと同時に優しい味だなって。いつまでも飽きのこない、ずっと飲んでいられる。そんな感じです」

 これはそのまま直訳できる。つまり、姉は力強さと優しさを兼ね備えた、そんな人を求めているのだ。オレの目から見れば、まさに生島さんはその条件にぴったりだ。

 そう言い終わった姉は、ちょっとはにかんでいる。この時、姉は生島さんの方をチラッと見ていたのは見逃さなかった。なんだ、相思相愛じゃないか。

「生島さんはどんな味がしましたか?」

 生島さんも当然、シェリー・ブレンドの魔法のことは知っている。こちらの答えも楽しみだ。が、生島さんは予想を超えた行動に出た。

「このコーヒー、例えるならばあなたそのものです」

 生島さんがそう言って見つめたのは姉である。これがどういう意味なのか、もちろん姉も気づいたようだ。

「門田さん、私はずっとあなたのことを見ていました」

 生島さん、自分のことを「私は」なんて言って、急にかしこまったな。こりゃ突然の告白だ。さて、どうなるのか楽しみだ。

 姉も、生島さんの突然の言葉にはにかみ始めた。姉の気持ちは直接は聞いたことはないが、生島さんのことを気に入っているのは間違いない。

「あ、ありがとうございます。でも、私は生島さんの気持ちを受け止めるほど余裕がないんです」

「ご家庭の事情は十分わかっています。だから、私にも手伝わせてください。私は門田くんのやろうとしていることを一緒にやっていこうと思っています。な、門田、いいだろう?」

 いいもなにも、これほど力強い味方はいない。もちろんオーケーだ。

「私もまだまだ未熟者です。門田さんを一日も早く経済的に支えていける立場になります。だから、私を頼ってください」

 生島さんの目は本気だ。その目を見て姉はこう返事をした。

「生島さんに全て頼るわけにはいきませんが、私自身の心の支えになっていただけるのならうれしいです。よろしくお願いします」

 よしっ、これでカップル成立だ!

「よかったですね。勇雄くん、これもネットワークを広げた結果だよ。こういうことをどんどん事業として広げてみるといいよ」

「はい、ありがとうございます」

 マスターの言葉に励まされた。これで三重苦も怖くなくなってきた。この先の人生が楽しみになってきたぞ。


<三重苦を超えていけ 完>

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