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羨望の果て
憧れの人を、ただ見上げるだけの人生になってしまった。
かつては、一緒に頑張ろう。と言い合っていたものだが、俺は当時から薄々気が付いていた。
こいつは俺なんかと違って、才能もあるし努力もしている。将来は絶対に有名人になると分かっていた。
俺は誰よりもあいつを称賛していて、誰よりもあいつを羨んでいた。
俺に無いものを持っていて、俺が望むものを手に入れた。
それが悔しくて、憎たらしくて、けれどやっぱり納得出来て。
何もかも劣っている俺は、あいつと同じ高みに登るなど不可能だと分かっていた。
だからせめて、あいつから一言貰いたい。
頑張れと言われれば頑張れる気がするし、諦めなと言われれば諦めてしまえる気もする。
けれどそんなことを考えている時点で、俺はあいつの隣に立つ資格なんてないのかもしれない……。