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海に来ました!6

 あの後、ボクは気を失っていたらしい。魔法を使いすぎると、スーっと意識が遠のく感じがする。気をつけないといけないな。

 まあでも、あれからはトラブルもなく、無事に町へ帰港。ボクはすぐ近くの、ちょっとした簡易屋根の下で目を覚ました。それも……ティアの膝枕付きだ。えへへ……これはこれで、何度して貰っても気持ちいいんだよね。さっきは羨ましいなんて思ったけど、ボクこれでいいや。

 そうして落ち着いたところで、今ボクとティアは、デプルフッシュをご馳走になっている。

「どうでえ。美味えだろう?」

 おじさんの言う通り、デプルフッシュは非常に美味だ。コリコリと弾力があって、味も濃い。獲れたてなのもあって、それはもう一番美味しい食べ方をさせてもらっているだろう。これは生のままだけど、料理にしても美味しそうだ。

「っ……はい!」

「とても……おいしいですっ」

「そうだろそうだろ! んじゃあ俺は今回の大物の事で、身内と話があるからな。適当にゆっくりしていってくれ。今日はありがとうな、譲ちゃん達!」

「はい!」

「ありがとうございました」

 おじさんが気にしてないみたいで良かった。

 美味しいのは本当だ。激ウマっ……なんて調子に乗りたいくらいには。それなのに微妙な返事になってしまったのは、その……。

 これ……イカ!

 いや正確にはイカとも違うんだけど、蛸よりはイカに近い。それだけは間違いなかった。

 デプルフッシュがどんな獲物かと思ったらデビルフィッシュで、蛸で、でもイカだった。寝起きなのもあって、少々困惑気味だ。

 それから、もう一つ理由があって……。そういえば、ティアまで戸惑ってる感じなのはなんでだろう。ボクみたいな先入観は無いはずだから、もっと純粋に味わっていてもいいはずで――

「なんだか……とても癖になりそうな臭いです」

「ぶぅっは!!?」

「ひゃあ!? ジュンさん大丈夫ですか? お、お水をっ」

「だ、だいじょ……えふ」

 しまった。女の子にあるまじき噴出し方をしてしまった自重しないと。

 いや、だってティアがまたしても、小悪魔的な事を無自覚に言うから……。

 もう一つの理由、それこそがこの臭い。ボクの知ってるイカよりも、かなり強めだ。

 知っている人、わかる人はわかるだろう表現……イカくさい臭い。それが、強烈だ。

 いやいやわかってるんだよ? 変わった臭いだし、表現として癖のある臭いってのは間違ってない。普通だようん。

 でもでもでも、ティアのか細い声音で、すぐ隣で、この臭いを癖になりそうなんて言われた日には……。

 ティア……もしかしてボクよりも変態さんの素質があるんじゃ……。だ、だめだよ! ティアはボクと触手を目指すんだからね! どこぞの男にはあげないよ!!

 ……触手も、結構異様な臭いしてたよな。痛みもそうだし、やっぱり無垢な心だからこそ多大な影響が……。

「ジュンさん」

「う、うん?」

「また一つ……。幸せ、見つけましたね」

「……だね」

 まあ兎にも角にも……。

 この町でも、楽しい事がたくさんあれば良いなって思うのです。

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