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海に来ました!2

 船はぐんぐんと進み、町が見えない程遠くまでやって来ている。

「はー……!」

「……♪」

 それにしても綺麗な海だ。こういう透き通った海は、肉眼では初めて見たかもしれないな。ティアも心なしか嬉しそうにしている。

「っだあ~~! おーい譲ちゃん達! そろそろ一度変わってもらえるかい?」

「わかりました!」

 揺れる船の上を、転ばないように歩いていく。氷みたいに滑る訳じゃないのに、なんだか変な歩き方になってしまう。

「練習した通り、こいつが動く程度に魔力込めてくれりゃいいからな」

「はい!」

 ボクとティアの仕事の一つがこれ。魔術道具に魔力を込める事だ。魔力と言われた時は、マナと違うのか、大丈夫なのかと心配になったんだけど、とりあえずこれは平気だった。それで、これが何なのかと言えば……多分エンジンみたいなものだ。魔力を込めると船が進む。

 電気やら機械やらの文明が無い代わりに、こういうのがあるんだなぁ。村にあった射撃場のあれこれも、こういう魔術道具だったんだろうか。どこか機械に似てるんだよな。

「ジュンさん、そろそろわたしも……」

「いやいや大丈夫。まだ疲れてないよ」

「でも……」

 この仕事、こうして立って居るだけだから、傍目には余裕そうに見えるかもしれない。でも実際には、完全な肉体労働だ。なんたって魔力……マナを使い続けてる。神経も使うし、筋肉とは違うけど、確かに身体が疲れていく。エンジン音も無くスマートなようで、その実は人力船って言う……。おじさんも大変だな。

 そしてそうなると、ティアにはあまり負担を掛けられない。

 そりゃ実力からすれば、ティアの方が多く受け持つ方が自然だ。多分7、8割くらいティアがやっても、ボクより疲れないんじゃないだろうか。でもほら、もしもの時にボクが元気でもね? やれる事は少ないし。

 このままボクらが担当する時間の、半分以上はボクがやってしまおう。訓練にもなるし、保険にもなる。一石二鳥だ。

「あ、ティア見て! なんか海の色が変じゃない?」

「……本当です。海は初めて見ましたが、不思議なところですね」

 不満そうなティアの気をそらす為、少し大げさに話を振ってみた。どうやら成功したらしい。

 ……でも本当になんだろう。茶色とかじゃなくて、翠がかった色なんだけど、確かに濁っている。あれかな、酸性アルカリ性が云々で、こういう色に見える……的な? さすがにわかんないな。あ、ちょっとティアの髪に似てるかも。そう考えると、これはこれで綺麗な海だね。

「ありがとうな。おかげで漁場まではもうすぐだ。正直俺程度の実力じゃ、一人で往復は厳しくてなあ」

「い、いえそんな……。お役に立ててよかったです」

 おじさんとティアがポツポツと話をしている。ティアの様子を気遣ってか、おじさんも距離を遠めに保ってくれてるし、問題なかったかなこりゃ。

「でも、俺が言うのもなんだが、気をつけるんだぜ? しばらくこの町に居るなら、ちゃんとギルドで仕事を受けるようにな」

 ああ、むしろボクが警戒してたのと、同じような事を注意してくれてる。本当に大丈夫そうだ。

「なんせ――!」

「わぅあ!?」

「ひゃあっ」

 おじさんが続けて何か言おうとしていた時、船が大きく揺れた。

「っとと……。さて、話はここまでだな。ジュンちゃん止まっていいぞー」

「! はーい!」

 ジュンちゃんかー……。ちゃん付けで呼んで貰えると、やっぱりちょっとこしょばゆい。でも女の子になった実感が沸いて、結構嬉しい。

 さて……いよいよ漁の開始になりそうだ。

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