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赤兎  作者: 「千」
22/22

第22話 眠れない日々

「おおおおおおおお・・・・・!!!!!」

「まだまだだなぁ!!おい!!!」

ドゴーン・・・・

ガシャーン・・・・

修行開始から2週間。

試験まではもう1週間までに迫っていた。

当然ながら俺は迅に敵うわけもなく、2週間ずっとボコボコにされていた。


ビ―――――――ッ


本日の修行終了を告げるベルが鳴る。

「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・・!」

今日も見事にボコボコ也。

「お前・・・・。」

迅が寄ってきた。

顔色は全く変わってない。息も上がってない。

・・・・・差を思い知らされるな・・・・。

「俺のモノマネがうまくなってきたじゃねぇか。」

3日前のことだ。

迅との接近戦で、思いっきりの右ストレートを空振りしたら

拳からなんか(・・・)出たんだよ。

それが勢いが強いのなんの。凄まじいスピードで物体が飛び出したんだ。

まあ燃料の塊だったんだが、これは使えるかな、と修行に使ってるワケよ。

「ああ、迅の“爆風(ブラスト)”には敵わないさ。」

「いいや、あれは俺のよりもスピードがあるからな。

実戦でも使えるぞ。しっかりやっとけ。」

・・・・迅が俺を褒めたのは初めてだな。

迅の超術は“爆風”。

自分の燃料を空気に練りこんで、それをぶつける技なんだとか。

燃料ってのは個人個人で性質が違う。

華の燃料は“発電”と“放電”。

星南の燃料は“静止”。って感じでな。

性質が違うと、同じ超術でも効果が違ってくるらしい。

迅の燃料の性質は“暴発”。ある程度の刺激を与えると爆発する。

“爆風”はその性質を上手く活かして自分で開発した超術なんだってよ。

「じゃあ、俺はクルエルさんに報告の義務があるからな。」

ずん、ずん、ずん、ずん・・・・

行っちまった。

「だはー!!疲れたー・・・!」

「おう、華。」

入れ替わりで華が入ってきた。

今の華の修行は“燃料の回復”。動かないのがいいんだとよ。

「修業はどーよ?回復はまだなのか?」

「そーれがサッパリ。全然効果ないんだよー。」

泣きついてきた。

「おいおい。あと1週間だぜ?間に合わせろよ?」

「・・・頑張る。」

よしよし。いい子だ。

上級試験は必ずチームで受けることになってる。

誰か一人でも欠けたら参加すらできないからな。

「でもよ、上級受かったらチーム解散っておかしくねーか?」

そう。上級試験に受かったらチームは強制的に解散することになってる。

チームで受けるのに。

「そりゃ仕方ないさ。」

「仕方ないのよ。上級天使は本来、下級天使のチームをまとめる隊長なんだから。」

「お、星南。」

星南も修行を終えたようだ。

話によると俺と同じくらい目茶苦茶な特訓してるらしいが。

「スパーダなんて特別なのよ。

あの三人のチームでしかできない任務ってのもあるんだから。」

ああ、そうか。

超Sランク任務ってのもあるんだな。

「星南ぁぁ〜!なんか久しぶりぃ!!!」

「そうね、華。久し振り。」

俺らはあれから別の部屋で修業をやるようになってたんだ。

今まであの二人は離れたことがなかったみたいだな。

華は泣いて抱きついてる・・・・。

ほんとうに仲いい二人だよ。



カツ・・・カツ・・・カツ・・・

クルエルは廊下を歩いていた。

横には迅がいる。他は誰もいない。

「どうしたんですか、私は忙しいんですよ。

どうでもいい用なら今度にしてくれませんか?

今日中にこの書類を・・・・」

「待ってくれよ。これは言っとかなきゃいけねぇ。」

迅は深刻そうな顔でクルエルを睨む。

これは本当に何かあったのか。

迅のこんな顔は早々お目にかかれない。

「なあ、あのガキのことなんだけどよ。あいつって何者だよ?」

・・・・!

「・・・・どういう意味ですか。」

「そのまんまだよ。まさか“天使(・・)”じゃないよな。」

・・・・迅は勘が鋭い。

第六感は完全に人間を超越している。

「では・・・・なんだと思いますか?」

「俺が思うに・・・・“悪魔”・・・・。」

・・・・・フフ。悪魔とはまた大きく出たものですねぇ。

「フ・・・“悪魔”ですか。」

「あいつの使ってるのは超術なんかじゃねぇ。

あれは魔閃(バルス)魔弾(ボロス)魔術(・・)だろう?」

「・・・超術と対を為す力、魔術。

あれは・・・・魔術なんかじゃありませんよ。」

ニコっ

・・・・・・・。

「・・・・本当か?それは信じてもいいのか?

悪魔は滅さなきゃならねぇ。それはわかってるだろ?」

「それはわかってますよ。」

「・・・・今日の修行は終了した。」

「順調に進んでいますか?」

「悪魔化の兆候はない。三人とも順調だ。」

「それはなにより。」

カツ・・・カツ・・・カツ・・・

足音だけが虚しく響いていた。





いまだ華は星南に泣きついている。

仲がいいのはいいんだが・・・。

「ったく、華も星南もいいかげんn・・・」


―――――――ドクン――――


心臓が脈打つ。

なんだ、この感覚・・・・?


バゴン!!!!!


爆音とともに、地面が吹き飛んだ。

「な・・・なんだ!?」

「きゃあ!!」

「な・・・・なによっ!?」


「ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」


爆音に負けないくらいの勢いの叫び声が聞こえた。

悪魔(デビル)だっ!!!」

ここのセキュリティはどーなってんだっ。


バゴン!!!!!


爆音がもう一発。

「なっ・・・・・!!!もう一匹!?」

華と星南が驚きの声を上げる。

と思ったら


バゴン!!!!!


・・・・三匹!?

「どーなってんだ!?

ここって対悪魔組織なんだろ!?警備ってこんなに薄いものか!?」

「そんな筈は・・・・!!超術で結界を張ってるはずよ!!」

「でも実際侵入してきてるんだからぁ!!」

くそ!

よりにもよって修業後に入ってきやがって!!

もう燃料が残ってねぇよ!

だが、今やらなきゃ殺されちまう。

華は戦闘不可能だってのに・・・・・。

「・・・・ちっ。星南、()れるか?」

「私のほうはもう底ついちゃった・・・・。兎君は?」

星南も戦闘不能か。これはまずい。

「・・・正直キツいな。でもっ!やるしかないだろ!!変身(トラ)・・・!」


ガクン


あ・・・・あれ?燃料を使おうとしたら、力が抜けて・・・・。


―――――ドクン


「・・・・ぐっ。」

心臓がまた強く脈打った。

またか。何なんだよ。


――――ドクン――――ドクン――――


だんだん鼓動は早くなる。

それと同時に燃料の制御は利かなくなっていた。


―――ドクン―――ドクン―――ドクン―――


ボシュッ!ボシュッ・・・ボシュウ!


「きゃ・・・!」

「ちょ・・・っと!」

華と星南は状況を飲み込めないであたふたしている。

「な・・・・なんでもっ・・・なっい・・・。」

こんなことしてられねぇ。目の前に三匹も悪魔がいるんだ。


――ドクン――ドクン――ドクン――ドクン――


拍動の加速は止まらない。

残りが少ない燃料も流出してしまう。

くそっ。こんなんじゃ戦えねぇっ!

どうする!?どうする―――――!?



ブシュッ



辺り一面が真紅に染まった。


「危ない所だったねぇ♪」


「・・・・・・拓馬さん!!!!」

星南が歓喜の声を上げた。

た・・・・助かった!

「ちょっと惨いことするから目、つぶってるといいよ♪」

む・・・惨いこと!?

ホントに見ちゃダメな気がする・・・・・。

「おい貴様ら。あんまり調子こいてんじゃねぇぞ。」


ゴォッ!!!


うっ・・・・殺気・・・・・。

「細切れにしてやる♪」

俺が次に目を開けた時にはバラバラの悪魔が転がっていた・・・・。

「大丈夫だった?」

拓馬さんの超術“斬風(ソニック)”。

性質“切断”が生み出す全てを切り裂く刃(スラッシュ・バスター)は、

スパーダ内で最高の攻撃力を誇る。

戦場に解き放たれた風の刃は誰にも止めることができない、と聞いた。

「はい、私は全然平気です。」

「俺のほうももう大丈夫です。スイマセンッした。」

いつの間にか俺の心臓の拍動は落ち着きを取り戻し、燃料の流出も止まっていた。

一体あれはなんだったのだろう。

「それにしても、悪魔が一度に三匹も・・・・・。僕のほうに何の連絡も・・・・。」

前にも悪魔が侵入したことがあった。

――――――何かが変だ。



その日の夜

俺は自分の部屋で寝つけないでいた。

体はダルイ。精神的にも疲れ果てていたにも関わらず、だ。

悪魔が侵入してきたときの感覚はまだ残っている。

あの体の内側からゾワっとするような・・・・・・ん?んんんん?

窓に映った自分の顔に妙な違和感を感じた。

(右眼が赤ぇ・・・・)

右眼の黒い部分が赤く染まっている。

(あのときか・・・・・・)

原因はそれしか考えられない。

・・・・・・俺にも異変が起き始めてるのか。

って超術が使えるようになってから2か月なんだけど。

気づくと時刻はもうすでに2時を過ぎていた。

「ふうっ。・・・・俺、寝てもいいかな?」

「ダメぇぇぇぇぇ!!!!絶対ダメぇ!!」

「ダメよ!二人でいるとこの子寝ちゃうし、私も眠くなっちゃうんだもん。

それにしても、兎君って頭いいのね。」

俺は今、俺の部屋で星南と華の夏休み課題を手伝い中。

こいつら夏休みの宿題をすっかり忘れてやがったんだ。

「これくらい中学でやってんだから当然だろ。

ってなんで俺が付き合わなきゃならないんだよ・・・全く。」

「星南ぁー。ここわかんないー。」

「ええっと・・・ここは・・・」

「この直線と点の距離をもとめりゃいいだろ。

こっちの式代入すりゃ楽勝じゃねぇか。」


・・・・・・。


少しの間があった。

「なんだよ。早く解けよ。」

こっちは眠い目こすってやってんだ。

はやく終わらせてくれないか?

「・・・・ウサっち。これって高校でしか習わないよ?」

「あ?何言ってんだ。中4でやっただろうが。」


・・・・・・。


俺なんか変なこと言った?

「・・・・兎君。中学は何年間通ってた?」

「4年間。」

ズザザザザザザザザザッ!

二人がものすごい勢いで後ずさり。

人間ってこんなに早く後ろに動けるんだな。

「・・・・ウサっち。出身中学ってどこ?」

「もしかして、とってもおっきい学校?」

突然変なこと聞くな。

「俺は国立(・・)帝王都学園の中学部出身だが?」

「「ええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!マジで!?」」

「なんだよ、文句あっか?」

まあ、帝学っていったら国No.1の中学校だからな。

卒業生の8割が東京大学に登り詰めていく中高一貫教育の学校。

別に俺はなんとも思ってないわけだが。

「いやいや!文句とかじゃなくて!ちょっと・・・意外だった・・・。」

「ウサっち、すごいじゃん!天才中の天才が集まる学校だよ、それ!

・・・あれ?高校は落ちちゃったの?」

「ああ、ウチの学校の方針でな。

最後の学期末テストで20位以内に入ったやつは帝国大附受験させられるんだよ。」

国立帝国大学附属高等学校。

最近できた、東京大学を上回る頭脳の持ち主たちが入学する大学。

まさに「帝国」だよ。そんなとこに入っても幸せとは思えん。

まっさか俺が受験することになるとはな・・・はは。

「あちゃー。それはしょうがないわー。

でもさ、他の学校は受けなかったの?」

「親がいねーんだ。受験代が勿体ねぇわ。

もともと学問なんかに興味はねーが、ただ学校が受験代も出すって言うからそこだけ受けたんだよ。」

「「へーえ。」」

テキトーな返事だな、おい。

華は目を輝かせている。・・・何を考えているかはなんとなくわかる。

星南は放心状態。そんなに意外かよ。早く宿題やれっての。

「ああもう!!俺はねみーんだよ!!はやくやれ!!」

「ウサっちー教えてー♪」

「うるさい!自分でやらんか!!」

こうして夜は更けていく・・・・・・。








ジ――――ジジ・・ジ―――――

とある国のとある場所。

男が一人、馬鹿でかい椅子に座っていた。

『ククク・・・・。無事第二段階(・・・・)に進んだようだな。』

目の前にはモニター。

その画面には兎たちの様子が映っている。

音声は飛び飛びで、うまく聞き取れない。

『もう少し・・・・もう少しだ・・・。

もう少し頑張って成長しろよ・・・。俺の期待に応えてくれ・・・。

美しく成長するんだ・・・・。この私の為に最高個体になってくれ・・・。


私の


息子よ。』





裏切りの(ユダ)は、動き始めた。

どうもこんにちわ!星南です。

兎君があんなに頭よかったなんて・・・・。

あとで聞いたけど、IQは200近いって言うじゃない!!

大学は落ちるつもりで受けたとか言ってたけど勿体ないわ!!まったくもう・・・・。


そんなことよりも!もう試験が目の前なの!!

修業はなんだかんだいっても効果はあがってるみたい。

あとはぶっつけ本番なんだけど・・・・・。

・・・・・・・・ふ・・・あ・・・ん・・・!!!


次回、『上級天使昇格判定試験』!

できたら読んでくれたら嬉しいわ。

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